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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
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ゾンビ5

 読書をすることでゾンビライフを満喫しようとしていた夢を早速砕かれました。文字を学ぶにしても教師や教本がなければスタート地点に立てないんだから早々に諦めました。なんせ俺はゾンビであって古代文字解読者ではないのだ。まあ、古代文字ってわけではないかもしれないけど俺はインディージOーンズではない。

「あーうー」

 ということで今は図書館の外。というか大公園まできました。図書館から閑静な街並みを眺めて城壁付近まで一時間歩きました。本来なら家族連れで賑わい暖かい光景が広がる芝生の大地も、手入れがされていないため芝生や草が伸び始めて、その上を徘徊するゾンビどもの家族達が群れていました。

 うん、視界フィルターをかければ楽しそうな親子連れがボールを投げて遊んだり色々してるんだろうね。だけど、フィルターをはずせばボールを持っては落とすお父さんや、足がなくなった子供ゾンビが這いずっている刺激的な光景だ。

 ・・・俺の精神良く砕けないな。

 200メートル四方のグラウンドをイメージしてほしい。そこに歩き回る死体の群れ。何百人いるのかもわからないけど、それらがぎこちない動きで生きていた頃の行動を再現する狂気。まあ、彼らはそんなことすら思えないんだからある意味幸せだよな。

 と思いつつ、俺はここになにをしにきたのだろうか?

 簡単なことです。


 走りにきました!


 文字が読めないなら図書館にいたって意味がないし、なにより、横顔司書さんの横顔が腐敗し始めて・・・うん、思い出すのは止めよう。

 だから、司書さん(横顔がね・・・)に別れを告げてここにきました。それに、新しい試みをしたくなっていたしね。

 まず、俺の現状だ。

 体を動かすという行為は非常にスムーズになってきた。

 まだまだ、緩慢なイメージはあるけど、ある程度の動作は再現できるようになってきていた。精度と速度はまだまだだけどそれはこれから進めていけばいい。時間はいくらでもあるからな。

 その上で大公園に来たのは体を動かすためでなく、前述の走るためだ。

 歩くことは可能。だけど、走ることは今までしてこなかった。あまりにも動きがのろすぎて走るという概念がなかったのだ。だけど、こうやって動けるようになってきたのだから、走ることは不可能ではないはず! そう思ってここに来たのである。

 幸い、ランニング用の石畳のコースがあったので、今はそこを歩いているのだが思ったよりゾンビの数が多かった。まあ、コース通りに蠢いているので注意していればぶつかるようなことはないとは思うけど、見た目的にね?


 さて、つま先を地面で叩き靴のずれを直す。

 とスムーズに体を動かしているように思わせているけど、その動きはゾンビよりもスムーズで人間より緩慢だ。だけど、こういう動作もポーズとして必要なのだ。俺、これから運動するよ? そんな意味で。まあ、まったく意味のない自己満足でしかないけど。

 ともあれ、走ることを始めよう。

 でも、ゾンビが走るのか。生きてる人間からしたら恐怖しか抱かないよな。だって、ただでさえ、噛まれただけで感染するような病原菌の塊が走って遅いかかって来るんだぞ? 俺なら即座に車の扉を閉めてノーサンキューだ。

 おっと、思考がそれた。

 まずは俺が走ることからスタートだ。

 いちいちクラウチングスタートなんてしないが新しい試みだから心は高揚している。だからこそ、踏み出す一歩に力を込めよう。

 右足の親指から中骨を伝って踵に信号が走る。脛とふくらはぎに力がこもり、腿に渾身が込められた瞬間、


 俺は空を飛んでいた。


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