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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
49/75

ゾンビ49

『アール、彼女歩き疲れたようよ』

 脳裏を叩くのはアサガオの声。そして、言われて気付いたことは俺がゾンビであるがゆえにノー睡眠ノー休憩で済む体であり、本来人間は眠り休まないと立ち行かない体質であることを思い出した。

 人間やめて結構経っていたから、なおかつ一緒にいたのがアサガオだから、そんな当たり前のことも忘れてたな。

 まあ、なんにせよ休憩が必要か。


 ええと、マリスだったっけ?


『そうね』

 アサガオのほうから休憩促してくれ。俺、彼女と喋れないし。

『けれど、どこで休むの? 城壁沿いとはいっても、周りにゾンビはいるのよ?』

 彼女の言うとおり左手側には高い城壁、右手側には先の見えない木々の羅列とその先に蠢く死体の蠢きだ。座って身体を休めるにしろ気が休まらない状況だろうな。そして、なおかつ俺達はノープランで歩いている。休める場所の見当なんてつかない。

 んー、やっぱり助けたのは間違いだったのか? いやでも、生きていれば何らかの報われるようなことだってあるかもしれないし………

『アール、思考が逸れているわ』

 それは失礼。とはいえ、このままじゃ良くないよな。

 無理やりでいいから休んでもらおう。

『具体的には?』

 俺が索敵兼遊撃してるよ。俺が逃した相手をアサガオが迎撃ってことで。

『それで休めるかしら?』

 今はいいんだけど、雨が降ったり風が吹けば休むどころじゃないでしょ。

 というかそれで休めないようなら今後の人生一生休めないと思うんだ。


『というわけで寝て』

「そんなこと言われてもいきなり寝れるわけないじゃないですか?!」

 じゃあ死ねば。

 とはさすがのあたしも言えない。とはいえ、彼女の急速が必要なのは確か。どんな雑音が聞こえようと身体を休めるべきなのは変らない。

『死にたいならそのまま死んで頂戴。ちょうどきっかけはどこにでもあるようでしょうしね』

 あたしたちがいるのはありふれた城壁の間際。言うまでもなく視界は悪いし、木々の向こうはゾンビだらけでしょうね。国民や往来する人間の数なんて知ったことではないけれど、少なくとも少数ではないだろうし、王国ない全土が壊滅しているのだから少ない数ではないでしょうね。

 それを踏まえた上で言える言葉は、

『寝なさい』

「無理ですよー!」

 じゃあ死ねと言わないあたしの忍耐を誰かに褒めてほしい。

 でも、こんな状況で寝ろと言われても寝れない気持ちも少しはわかる。だから、言葉の補足はしておく。

『休みたいと言ったあなたはこのまま起き続けられるの? そして、休息無しであたし達に同行できるのかしら? ついでに言うとあたし達にあなたの護衛義務は無いわ』

 言葉の通り、あたし達には彼女達を助ける義務が無い。アールは迷っているようだけれど、あたしの中では彼女足手まといでしかなく、見捨ててオッケー認識である。

『とりあえず壁に背を預けて目を閉じなさい。近寄ってきたゾンビはあたしとアールで排除するわ』

「信じていいのですか?」

 思わず殴ってやろうかと思った。命を救われてなにを言っているのかと。

 でも、

『信じられないなら自分で死になさい』

「ご、ごめんなさい」

 見捨てられないのはあたしも同じだった。同じ人間、いえ、あたしは死人だけど、意思のある人間を問答無用で見捨てられるほど人間性は捨てていなかった。

 だからこそ、彼女の持つ、あたし達に対しての化け物意識に苛立つのだ。

『あたし達だって人間だったのよ』

 それは過去形。後悔もしていないし、苦にもしていない。だけど、それを同じ人間だったものに言われることは腹が立つ。

 アールがそれに対してどう思っているかはわからない。だけど、あたし個人の意見は変らないし変えられない。つまりはそういうことなのだ。ここであたしが納得できなければ、このマリスと言う人物に対してしこりが残る。

『あのね、あなたは善意で助けられているの。あたし達は特別なゾンビのようね。けれど、あなたは助けを求められるような町や村に着いたらどうするのかしら?』

 アールはここまで考えていない。けれど、そこまで考えていないなら考えるのはあたしの仕事だ。

「え?」

『まさか、私はゾンビに助けられてここに来ました。このゾンビたちは味方なんですとか言うつもりかしら?』

 無理に決まっているわ。間違いなくあたし達は排除される。追放程度ならありがたいけど、間違いなく原型がなくなるまで叩き潰されるか、反抗したアールによる殲滅劇しか思い浮かばないわ。むしろ後者が有力でしょうね。

 でもまあ、話が逸れたのは間違いない。あたしはともかくアールが望んでいるのは彼女の休養。

『まずは寝なさい。必ずあなたを守ってあげるから』

「は、はい」

 地べたに直接寝るのは嫌でしょうね。だから、あたしは纏っていたマントを抜いて壁際前の地面に引く。

「あ、あの・・・」

『寝なさい、これがあれば幾分かましでしょ』

 姿を隠すためと寝床を楽にするための皮のマントだ。硬い地面よりましでしょうけれど寝袋より不快かもしれない。でも、あたしが施せるのはここまでだ。

「アサガオさん、ありがとう」

『礼はいらないわ』

 その直後彼女は城壁に背を預けて蹲る。

 寝息は聞こえないけど目を閉じるだけで安息効果は生まれるらしいわね。なら、あたしのノルマは達成だ。後は近寄ってくるゾンビを排除するだけなんだけれど、アールの姿が見えないわね。


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