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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
45/75

ゾンビ45

 私、マリス・アンドロビッチは夢でも見ているのでしょうか?

 いやだって、逃げるべく逃げて追い詰められて、ソンビエンドで死ぬのかと思っていたら、そのゾンビが私を守るようにして戦ってくれた上に、周囲のゾンビを蹴散らしているのです。

 いえ、これは蹴散らすなんてレベルじゃない。

「蹂躙です」

 腕を振るっただけでゾンビの上半身が消し飛びます。時折飛ぶ蹴りが下半身を消し去った上で振り下ろされた踵が頭部を粉砕しました。

 こんなことを出来る存在を私は知りません。

 いえ、正確に言うなら近いことができる存在を見たことはあります。だけど、彼はその人物は方向性が違いすぎます。むしろ、逆でしょう。向かい合ったら最後、お互いに殺しあうまで発展するでしょう。

 ああ、思考がそれました。だけど、彼………私の視界で動くゾンビは、私の思考なんて関係なく一方的な闘争を続けます。

 殴り、蹴り、走ってぶちかます。

 己の身体の損傷なんて気にしていません。

 振り切った拳の先がグチャグチャに潰れています。

 だけど、その拳は白い蒸気を上げたかと思えば、すぐにもとの形を取り戻します。その時点で、ゾンビかすら疑問ですが、彼と、今私の傍らにいる彼女もどこまでも顔色の悪い死体そのものでした。

 身体に欠損はありません。だけど、顔色が悪い。そういうレベルを超えた青白さの肌は明らかにゾンビでした。

 けれど、彼も、彼女も私を襲おうとはしないのです。むしろ、本来ならうつろうはずなのに直立歩行の姿勢のまま周りに視線を飛ばしています。これは今まで見たゾンビに当てはまらない仕草でした。

 そして、思いました。綺麗な女の人だと。

 旅人のような服装はともかくとして、つややかな黒髪に白い肌。この地域で黒い髪は珍しいと思う以上に病的に白い肌はゾンビゆえかもしれないけど、すっと通る鼻梁は芸術家の作ったような彫像のよう。身体の線は細いけど、それがまた芸術作品のような印象を抱かせる。


「うーあー」


 そんな時を止めた芸術作品が私に視線を向けて言葉を放ちます。だけど、私はそれが何の言葉なのか理解できません。そして、その顔色と言葉を聞く限り、彼女の私を害するような意思はないようです。

 なぜかって? そう聞かれたら困ってしまいます。だけど、このときの私は彼女に明確な意思と思考を感じました。まあ、この後にその理由を知ってびっくりするんですけど………




 アールがゾンビ相手に夢想しているとき、あたしが考えるのはこの後と現状。

 この後は簡単、場所を移すだけで済む。けれど、このとなりにいる少女をどうするべきなのか?

 アールのことだから連れて行こうとか言いそうだけれど、その場合はどうするべきなのか? なんというか、アールは良い人すぎる。本来ならあたしのことを捨てて一人で行動しててもいいのに、あたしを救った上で行動を共にしている。

 そして、その上で、このとんがり帽子をどうするか?

 間違いなく救おうとするでしょうね。

 あたしの中では優先順位として限りなく低い。けれど、アールのように今後を考えるなら限りなく高い。矛盾しているけれどそういうこと。

 多分あたしは焦っているのだ。アールがあたしに対して思ってくれている存在比率が変ってしまうと思っている。でも、実際はそんなことは無いのだろうけれど、あたしは思ってしまう。

 この気持ちはなんてしょうね? 少なくとも恋や愛ではないけれど、うまく言葉に表せない。

 まあ、なんにせよ、ここを突破しないことには話が進まない。

 あら? 森の奥から増援ね。増援という言い方をしたけどただ音に集まってきただけでしょうけれど。だから、


『ウォーターバレット』


 生まれた水球が森から姿を現した数体を吹っ飛ばす。致命傷ではないとはいえ距離をとるという意味では良い手段だ。

 でも、距離をとるだけじゃなくって、もっと攻撃的な魔法を覚えるべきなのかしら?

 ………あ、目の前にとんがり帽子がいるわ。明らかに魔法使いか何かよね?

 盲点ですらなかったけれど、


 お話し


 しないとね?


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