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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
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ゾンビ41

「なんでこんなことになったの?!」

 こんにちは。通りすがりの魔法使い、マリス・アンドロビッチです。略してビッチと呼ばれると魔法が炸裂します。とりあえず、色々説明したいことは山ほどあるのですけど、とりあえずピンチです。わかりやすく言うと生命の危機です。

 私は走っています。

 とある王国に続く街道を走りながら背後を見れば、数え切れないほどのゾンビが私を追って向かっていました。

 馬車がすれ違えるほどの広い街道。その左右には背の高い木々が続いているのですが、その木々に隠れた潜在的なゾンビもいるのでしょう。だけど、その総数なんてわかりません。わかっていることは、私を追う存在たちに追いつかれた時、私の生は終わってしまうということだけです。そして、終わった瞬間に、ゾンビという名の新しい生が始まってしまうのです。それだけは願い下げでした。

「炎よ!」

 進行方向上に魔法による炎を放ちます。

 放たれた炎は私の前方、街道を塞ぐため集まっていた集団を吹き飛ばします。飛び散る血肉や手足の欠片が頬を叩きますが構いません。生まれた包囲網の穴を私は駆け抜けます。

 といっても、常に全力で走っていれば人間の身体は持ちません。適度に力を抜きながら、全力から駆け足に変えながら走り抜けます。

「このままじゃいけないです」

 いつか力尽きてします。そして、それは遠いことではないでしょう。

 長くも無い手足では距離も速度も稼げません。そして、逃げるべき安住の先も見つかっていません。つまり、終わりの無い逃亡の連続です。

 今、ここで逃げ延びても私に安らぎなんて無いのでしょう。

 なんでこんなことになったんでしょうか?

 いえ、わかりきっていますね。

 人と魔物の戦い。それが全ての原因です。

 お互いの存在をかけた生存競争。それだけだったら良かったのかもしれません。

 だけど、その生存競争で勝ち残るために、お互いの種族は禁忌を犯しました。


「勇者召喚」


 人間は己よりも強い種族を駆逐するために、異世界から勇者と呼ばれる存在を召喚しました。

 勇者とはこの世界とは異なる世界から召喚した異世界の人間の事を指します。そして、その勇者はこの世界にいる人間よりも優れた力と知識を持ち、歴史の節目・・・ようは世界の危機を救う存在といわれていました。

 実際、凄まじい結果と戦果を出したと聞きます。

 でも、弊害も生みました。

 逸脱した戦力は魔物や魔族だけでなく、並びあうはずの人間にも向けられました。要は魔族、魔物がいなくなった後に連合軍ではなく統一帝国を築きたいという浅はかな願望により、一つの国に取り込まれた勇者が同じ人間に剣を振るったのです。

 そして、大戦末期、追い詰められていた魔族や魔物はそれを好機と見て禁忌を犯しました。それは、魔族達にとっても禁忌でした。


「死者蘇生」


 言葉だけなら死んだ者を生き帰す奇跡。

 だけど、そんなのは言葉の上面だけです。

 実際に起こったのは奇跡の劣化版。死んだ肉体を動けるようにした上で、その死んだ肉体に殺されれば、その肉体の主は同じように生きる屍になるという呪法。


 元々、数に劣る魔族たちが最終的な手段としていたようですが、これは魔族にとっても予想外だったようです。

 なぜなら、


「ゾンビは魔族にも襲い掛かる!」


 そう、本来ならゾンビは魔物枠になるはずなのです。

 だけど、起き上がった死体は私達人間だけでなく、魔族や魔物たちにも襲い掛かりました。そして、ゾンビの特殊能力「感染」によって、噛みつかれた存在は種族関係なく、一定時間の経過で死亡します。そして、死亡した存在は更なる一定時間でゾンビとして蘇ります。そこに理性はありません。

 慌てたのは魔族、魔物でしょうね。頑強な肉体と戦闘能力を持っているのに噛み付かれただけでゾンビ化される未来が待っています。

 その上で、魔族の数が少ない魔物は希少。

 人間は数が多い。だからこそ、感染はあっという間に広がっていく。

 お互いに戦争なんて止めましたよ。

 だって、それどころじゃないですから。

 現に私も死に掛けています。

 仲間とははぐれましたが、仲間の命はもう無いものでしょうね。


「でも、私は………」


 死にたくない。この先に待っている未来が閉ざされてしまっていても、この先一秒の未来も諦めたくない。

 なぜなら、この先………街道の先には王国があるのです。

 勇者召喚の王国、アブシュノワールが!


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