ゾンビ30
なので、次は生きた人間を襲ってみるとにした。
現在、この王国はゾンビで満ち溢れているが、それでも、生きている人間も存在している。
大体は地下道や、廃墟に身を隠しているような連中がほとんどだが、その数は少なくとも皆無ではない。
ならば、接触の機会はあった。
その上で俺は実験しようと思う。
「なんなんだお前は?!」
「がーぐー」
ただのゾンビだよ。思って殴り飛ばせば、それだけでこの国の住人らしい男の頭が弾け飛んだ。なるほど、わかってはいたけど俺の身体能力は人間以上だ。だけど、やはりとは思う。
「がーぐー」
男を殴り飛ばした俺の腕は肘から先が無くなっていた。人間の頭部を消し飛ばすような威力を生んだ結果だろう。つまり、俺の身体は人間を超えるような力を振り絞れるが、その強度は元の肉体のままということだ。
とはいえ、僥倖が一つ。本来なら砕けたままの肉体が再生し始めたのだ。
傷口が泡立ったかと思えば、上記のような白い煙を上げて数秒後には元通り。これはすごいと思ったものだ。
つまり、俺は人間以上の力を手に入れながら、それが砕けても再生するおまけまでついているということ。これは感謝しなくてはならない。なぜなら、無双の力を得ても壊れたままなら先が見えているからな。
だが、実験はそれだけではすまない。なんせ、殴り飛ばした男には仲間がいるのだ。現に、怯えた表情を浮かべながらも、武器を持った連中が俺を囲んでいるのだ。
「がーぐー」
怯えるくらいならさっさと逃げればいいものを。まあ、逃がす気もさらさらないから今更だが。
結果、蹂躙した。
最初に高速移動をしたうえで全員の手足を追ってやった。
やつらは自分に何が起こったのかもわかっていないようだったが、続いた結果に泣き叫んで倒れた。その叫びが多数のゾンビを引き寄せるのだが俺は知ったことじゃない。自己責任で食い殺されてくれ。
ほとんどは男であり、助ける理由を感じなかったので、無数のゾンビの群がられて悲鳴を上げる姿は基本的にしかとだ。
だが、
「た、助けて・・・」
一人だけ少女がいた。
目元にそばかすが浮いた美しくもなければ醜くもない少女。彼女も足が折れていたようで這い蹲っている。その目には涙が浮かび、自身に寄って来る使者の姿に顔を歪めていた。
当然救う理由はない。
だが、
「た、助けて・・・」
彼女は俺に助けを求めた。俺に傷つけられたのに俺に助けを求めたのだ。その好意が俺に愉悦を抱かせた。そして、教えたくなったのだ。
お前はどこまでも間違えた選択をしたのだと。
そして、俺は実験しようと思った。
生きた人間はどこまでの行為で絶望してくれるのかと。




