ゾンビ26
物凄く短いですが序章終わりな感じです
「あーうー」
戻りますよ。
アサガオがいたところにね。
アサガオが死んだところにね。
でも、ひとつだけ可能性があるんだ。
俺の望みが秘められた可能性。
アサガオは死んでいた。
図書館の奥で死んでいた。
苦痛に歪んだ顔をまた見た。
間に合わなくてごめん。
俺は彼女を抱きしめる。
冷たかったって思う。
死体の温度だった。
だから言うよ、
『ごめん』
て。
俺は口腔を開ける。
抱きしめた彼女の身体を包みながら唯一の可能性を探る。
わかりやすく言うなら、
噛み付いた。
俺自身が死体だからアサガオの体温はあまり感じない。
元々、温感や痛覚が鈍くなっていたこともある。なんにせよ、抱きしめた身体は暖かいという感想よりも、死後硬直で硬いなという見も蓋もない感想を抱いた。
この感想を聞かれたら死体でも殴りかかってきそうだけど、今はそんな感想を置いておく。
だから、俺は血に汚れた彼女の首筋についた、俺の噛み跡を見下ろしている。
がーぐーという生ごみ以下のように肉を食い千切ったりはしていない。ただ、噛み付いただけだ。
もちろん、そんな行為に何の意味はないかもしれない。
だけど、とある可能性だけあったのだ。
そして、
「あーうー」
奇跡・・・ではないが、ありえた可能性が起こった。
なぜなら、アサガオの首筋に合った俺の噛み跡が薄れたかと思えば、裂けていた動脈や皮膚が塞がり始めたのだ。
普通だったら世界か神に感謝して祈りを捧げるところだろう。
だけど、これはそんなわかりやすい話じゃない。
もっとシンプルを超えた迂遠な話だ。でも、シンプルに伝えないと相手はショックを受けること請け合い。
だから、本来閉じられたままだったはずのまぶたが開かれて、その瞳が焦点を結んだとき俺は言った。
『ゾンビの世界にようこそ(あーうー)』




