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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
22/75

ゾンビ22

タイトル変えます

 最初になったのはノック音。

 あたしは素直にアールが帰って来たかと思った。

 だから、鍵を開けるべく扉の前に近寄ったところで、


 ガンガン!!


 と激しい音でノックが繰り返される。

 この時点であたしの足は止まっていた。

 音から感じた本能的な恐怖と、圧倒的な違和感だ。

 アールはゾンビだ。人間と分かり合えない魔物なのかもしれない。

 だけど、彼はどんな時でもあたしを怖がらせるようなことはしなかった。

 例えば意思を伝えるために手を掴もうとしても、必ずその手前で断りを入れてくる。


 だけど、このノック音は違う。

 相手の意思を確かめる行為ではなく、明らかな威嚇の意思を感じた。

 でも、この時のあたしは愚かだった。

 ひょっとしたらアールかもしれない? そんな風に思ってしまった。

 だから、

「アールなの?」


 同時に扉を叩く音が高鳴った。

 というか、この扉を砕かんばかりの音になった。

 あたしはその瞬間に後悔する。

 選択を間違えた。

 この扉の向こうにいるのはアールじゃない。別の何かだ。そして、別の何かはあたしという存在を知覚した。だからこそ、扉を叩く音は大きくなり、同時に破ろうとしているのだろう。

 改めてあたしは恐怖を感じる。

 これまでは生きるために恐怖を殺して、武器を持ってゾンビたちと戦っていた。

 でも、今は違う。

 アールって言う守護を得てあたしは甘えていたんだ。

 本来ならあたしは死んでいる。噛みつかれて感染してゾンビになっていたはずだ。

 なのに、それが今まで引き伸ばされていた。

 怖いよ。

 本当に怖いよ、アール。


 叩く音が破壊音に変った。

 光差す向こうから見えるのは知らない死体の顔だった。

 そして、思う

 あたし死ぬんだなって。

 でも、抵抗はするよ?

 だって死にたくないし、あたしは勇者未満だから多少の力はあるんだ。

 最低限の抵抗くらいはしないとあたしは後悔してしまうと思うしね。

 せめて、武器くらいは・・・何もないか。あえて言うならイスくらいはあったけど、武器としては不適当だ。ただのゾンビ相手ならそれでいいかもしれない。だけど、いま、扉を破ろうとしているのはそういう存在じゃないっぽい。

 わかりやすく言うなら、アールが敵になった場合かな? 動きが遅いただのゾンビならともかくとして、明確な行動をとるような相手に威嚇は通用しない。

 だって、あいつ、今見える時点で笑ってるもの。

 あたしの恐怖を楽しんでる。

 なら、あたしのできることはあいつの楽しみを奪うこと。

 イスは武器としては使わない。障害物として使おう。

 そして、あたしは拳を握り締める。

 近寄ってきたら殴ってやることぐらいできるんだから!

 

 続く破壊音。

 扉は壊された。

 あたしは歯の奥がガチガチ鳴るのを自覚しながら拳を握り締める。

 そして、見えるのは汚いワイシャツとスラックスを纏ったゾンビの姿だ。


 顔色は悪い。顔立ちなんてわからない。でも、アールよりは身長が高いようだ。

 それだけの印象で、それ以上も以下もない。

 というかそれ以外知りたくもない。

 だって、こいつはあたしに対して害意しか感じさせない。なら、向ける感情は一つだ。害意を向けるならあたしの向ける感情は同等、もしくはそれ以上のものでしかないのだから。

 そして、あたしに害意を向ける存在はあたしを殺そうとしている。

「なら、あたしも同じことをするまでよ」

 武器はない。魔法もろくなものが使えない。

 だけど、あたしには仲間がいる。

 アールって言うゾンビがいる。

 だから、

「あたしは死んでなんかやらないわよ!」

 直後、扉は破られた。だけど、あたしは諦めない。

 だって、あいつは帰ってくるんだから!



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