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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
21/75

ゾンビ21

 最悪だ。

 そう思った。

 物資を手にして戻る帰り道に血の跡が続いていた。

 最初はそんなこともあるだろう。ゾンビたちの行きかう町だと思っていた。

 そうじゃなかった。

 図書館に帰るために足を動かした。その道を沿って血の跡が続いていた。


 ふざけんな。


 俺は皮膚が泡立つのを感じる。なぜ、血の跡が俺の帰るルートを追っていやがる?

 その時点で俺は走っていた。

 ゾンビウォーク? 知るか、見られたところで躊躇いはない。

 加速。加速だ。ただ、走る。

 踏み下ろした踵が石を砕く。

 それだけの威力で加速する。

 そして、図書館に飛び込む直前で知覚する。

 血の跡は図書館に続いていた。


「っ!」

 おい、がーぐー、俺の予想通りのことが怒っていたら、俺はテメェを殺すぞ?!

 同じ異世界人かもしれない。

 同じゾンビかも知れない。

 だがな、世界には許されることと許されないことの二種類があるんだよ。

 だから、俺は図書館に飛び込んだ瞬間に腐りかけた脳髄が沸騰しかけたことを自覚する。

 まずは横顔司書さんだ。

 彼女はそこにいた。

 だけど、横顔どころか、頭自体がなくなっていた。

 力を無くした身体が机に倒れ付していた。それ以外にも破壊のあとが残る室内に、奥に続く血の跡。


「あーうー」


 同じゾンビ同士であっても交流なんてないに等しい。だけど、愛着くらいはあった。だって、毎日顔を合わせていたからな。

 それに、それ以外のゾンビたちだっていた。言葉も意思も交わせないけど、毎日見ていた連中だっていた。なのに、それが丸ごと轢殺されている様を見せられた。

 そして、その、血の跡に続く先にいるのは、アサガオだ。

 この世界で唯一、俺と意識を交わしてくれる少女。

 そこに向かって、なぜか、がーぐーが向かっているのだ。


 ふざけるな。


 なんであいつが向かっているなんかなんてわからないけど、

 少なくとも生きて帰れるなんて思うなよ? それだけのことをお前はしたんだからな?

 俺のゾンビ仲間を殺した上に、ゾンビライフを台無しにしようとしてるんだ。

 だから、俺は足を踏み出して、


「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!」


 室内に響き渡った悲鳴に俺は拳を握り締めた。


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