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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
17/75

ゾンビ17

 なんだこいつ?

 思ったのはそんな疑問。

 商店街を歩きながらそれと出会う。


「あーうー」

「がーぐー」


 ゾンビの行きかう楽しい街並み、その中でそれは異質だった。

 なぜなら、ゾンビという存在は生前の行動をリピートするだけで、自己的な行動をするものは少ない。時折のイレギュラーはあるとしても、基本的には能動的ではない。

 なのに、


「がーぐー」


 それは近寄るゾンビを振り払った。

 しかも、押しのけるとかそういうレベルじゃない。ゾンビ同士がぶつかり合って結果的に誰かが倒れるじゃなくって、あいつは腕をふるって薙ぎ倒したのだ。現に、吹っ飛んだゾンビは複数のゾンビを巻き込んで倒れていたし・・・なにより、がーぐーの腕が弾け飛んでいた。

 ゾンビは生者を喰らう時はともかく、そこまで激しい行動をしない。

 なのに、奴はそれをした。

 そして、


 腕が再生してやがる。


 それだけの威力を生めば当然肉体は砕ける。俺もそうだ。

 でも、がーぐーも同じだった。

 弾けとんだ腕がビデオの巻き戻しのように治っていくのだ。

 これは不味いね。

 俺は普通のゾンビのように動きながら視線を向ける。

 

 ゾンビだ。顔色も悪いし男性だ。

 でも、明らかに視線の飛ばし方が違う。

 何かを物色している、もしくは何かを探しているような見かただ。

 そして、服装は汚れているもののワイシャツにスラックス。完全に異世界人だね。

 身長は180センチくらいだろうか?

 見た目の年齢は二十代。つまりは社会人だ。体格も俺より上だし争っても負けてしまうだろう。もちろん、生前はね? でも、今はわからないけど、進んで争いたくはない。

 だから、学生服を纏っている俺は視線から外れるように裏道に入っていく。

 普通だったら情報収集に接触するべきなんだろうだけど、俺にそんな能力はありません。

 だって、言葉すら話せない上に闘争なんてなりたくないしね。

 そもそも、友好的な存在とは思えない。だって、ゾンビとはいえ、理由なく殴るような奴なんだから。

 顔や容姿の表現は省く。だって、俺よりイケメンっぽいひとの表現なんてしたら比較対象で俺が嘆くことになるではないか・・・


 回避は成功した。

 でも、見逃せないのも事実だ。

 場合によっては排除の必要もある。

 あいつに意識があるかないかもあるし、アサガオが出会った場合もある。

 なんにせよ、様子を見ないといけない。

 でも、あえて言わせてもらおう。


 あれは排除対象だ。


 ゾンビは死んでいる。もはや、戻ることはないだろう。

 でも、あいつは面白がるように何かを壊していた。何かを殺していた。

 死んでいるゾンビは殺しているという表現はおかしいかもしれない。でも、あいつは蹂躙していた。

 身体能力を試したいのだろうか? 街を行きかうゾンビを殴り飛ばし、這いずる何かの手足を引き千切っていた。

 この時点で俺は後ろから襲い掛かることを考えたが、色々なゾンビライフがあるんだなと思うことにした。なんせ、ゾンビが減っただけ世界は平和になるからね。

 ただし、俺やアサガオに被害がきたら戦うだけだ。

 でも、本気で言うよ?

 俺の世界に踏み込んだら殺すよ?

 言えないけどね。

 でも、俺は少しだけ後悔することになる。


「お帰り!」


 正直、収穫無しで帰ってきた俺に向けられたのはアサガオの笑顔だった。

 なんか、申し訳なく思ってしまう。


「あーうー」


「これなに?」

 紙とペンはゲットできなかった。でも、下着や服はゲットしてきた。

 いや、それくらいはね?

「ごめん、ありがと。ちょうど困ってたのよ。助かるわ」

 怖がらないでと思いつつ、手の平をとる。


『ごめん、かみなかった』


「良いわよ」

 アサガオは苦笑。だけど、それだけで嬉しいかもしれない。

 だけど、とも思う。

 あれは危険だ。

 昼間の散歩に発見した俺に近い存在。

 あの存在がなんにしてもどうにかしないとな。特にアサガオとはあわせてはいけない。もし、あれが善良な存在としても、俺にはそれが判断でない。だから、俺は見極めるとしよう。


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