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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
14/75

ゾンビ14

 って諦めきれることではない。

 というか諦めたらそこで終了だ。・・・とどこかの監督が言っていた気がする。

 なので俺は腐っているのかいないのかわからない頭で考える。

 腐り物しかない乾物屋の店は、木材とかやぶきの屋根で成り立つ簡易的な屋台のようなテナントだ。雨避けくらいはあったけど在庫をしまっておくようなコンテナや収納はなかった。

 そして、店先に並ぶ商品はそれこそ乾物。長期的に保管できない干物は毎日もしくは一定期間で仕入れていたはずだけど、干し肉や干し野菜、そして、塩などの調味料は保存がきくはずだった。ちなみに干し肉は肉を外に干しとくだけじゃなく塩漬けにしたりして作るらしい。塩で水分を出すというのと塩自体に存在する殺菌作用を利用して作るそうだ。それを知ったとき、だから、生ハムって塩っ気があるんだなーとなんとなく納得してしまった。


 閑話休題。


 つまり、ここの乾物屋はどこかに在庫を確保しているはずなのだ。それがどこかの倉庫なのか、自宅なのかはわからないが必ずどこかにあるはず。

 でも、そんな場所をどうやって探すのか?

 その疑問を抱いたあなたはゾンビ初心者です。

 俺はゆったりとした動きで乾物屋の屋台から離れると、誰もいなくなった屋台に視線を向けます。それだけでいいのです。

 え? それだけだよ?


 だから、待つこと一時間。

 今、乾物屋さんには一人のゾンビが立っています。

 特になにをするわけでもないけど、生前の行動原理に従って店先に立っている。そして、時間が経てば移動するだろう。その先が自宅なのか倉庫なのかはわからないが、付いて行けば結果的に全てがわかる。という理由で、また、しばらく待機です。


「あーうー」


 俺は図書館に帰ってきた。

 館長室の扉を二度叩いてしばらく待てば、開錠の音が聞こえ、恐る恐るといった様子で扉が開かれる。その開かれる扉の先に見えたのは変らぬ室内の様子と、続いて見えたアサガオの不安げな表情だった。


「あーうー」


 俺はこれしか言えない。

 だけど、俺と視線をあわせた時、アサガオは少しだけ緊張を薄めてくれた。

「あ、あなた、無事だったのね・・・」

 無事って言うか死んでいるけど、教われるようなことはなかった。だって、ゾンビだしね。

 とりあえず室内に入れてもらえて良かった。直後に施錠音。これは当然だね。

「なにを持ってきたの?」

 扉の前に立つ朝顔に返事は返せない。だから、ソファー前の応接テーブルにゲットしてきた品物を並べた。

 大体は何かしらの塊のように見えたけど基本的には食料でしかない。向かい側のソファーまで移動したアサガオがそれを見るなり、元々大きな瞳を見開いて目を丸くする。


「あーうー」


 あのまま立ち尽くしていた俺は生前行動にしたがって移動するゾンビについていっただけだ。そして、見事、乾物を保管する倉庫まで辿り着いたわけだ。そこはレンガを積み重ねて何らかの接着剤的なもので隙間を補強した三メートルくらいの高さの建築物だ。そして、その周囲には似た様な物がずらりと並んでいて、倉庫郡を成していた。

 石畳の広さは五メートルくらい。多分、運搬用の馬車が行きかうから道を広く取っているのだろう。だけど、道に反して倉庫は小さい。恐らく建築技術というよりコスト的に大きな建物が建てられないのだろう。

 なんにせよ、乾物屋のゾンビが目の前の倉庫に体をぶつけている。恐らくはそこが彼の所有していた倉庫だったのだろう。

 しばらく、彼の行動を見ていれば諦めたのか、来た道を戻っていったので俺は木製の扉の前に立つ。でも、それは施錠されている。扉の錠前に取り付けられていたのは簡易な南京錠のようなものだ。


「あーうー」


 俺はあらかじめ乾物やゾンビの体を探って鍵をゲットしていた。

 まあ、気持ち悪かったけど必要悪って奴だね。ん? 悪ではないけど、なんにせよ鍵は手に入った。

 手の中に在るのは限っていうか少し凹凸がある鉄の板だ。何というかいくらでも偽造できそう。でも、この時代では最新のセキュリティーかもしれない。

 なので、俺はそれを使って錠前をあけました。

 そして、開いた扉の先にあったのは一切明かりの差し込まない石造りの倉庫の室内であり、アサガオの生命線が眠っているかもしれない室内でした。


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