相合傘 2
「やっぱりさ、騎士ってのは、暇なんだろ」
「そうだぜー、でも、まぁ、賞金稼ぎ程じゃねーべさ」
「昼間っから彼女とデートしといてなー」
出会ったのは、ウォルレンと、ケインの二人組。
白いワイシャツに、茶色のパンツと、二人して似たような服装だったが。
金髪の美男子ウォルレンは、何処ぞの貴族の子弟だろうと、誰が見ても思う程に、上品に着こなしていたのに対し、ケインの方は袖を捲り、胸元を開けて、やや粗雑な印象を受けた。
「というか、猫のセンセは、すげーよな、俺だったら絶対無理」
「わかるわ「串刺し王女」のリリィアドーネとか、浮気どころか、他の女見ただけで殺されそうだもんよ」
「なに、その物騒な渾名」
「いまじゃ近衛騎士団の二枚看板だからな「剣姫」と「串刺し王女」は、高嶺の花どころか、人喰い植物扱いだし、男が出来たとか、四大騎士団全てが震撼するわ」
「んで? 夜は串刺しにしてんの?されてんの? 」
「まだ処女らしいよ」
次の瞬間、ウォルレンの鳩尾に、体重を乗せた猿臂が打ち込まれ。
ケインのこめかみには、後ろ回しに踵がめり込み。
即座に、距離を取ろうとした御用猫は、膝頭に足刀を受けて、脚を止められ。
にっこりと可憐な笑みを浮かべたリリィアドーネから、鉄拳制裁を頂いたのだった。
いつの間にか、無手組打ちの技術が向上している。
実戦を重ねて、自らに足りぬ物、必要な技を、貪欲に取り入れるその姿勢には、感服するに他は無い。
次からは、彼女を背後に置いて会話するのはよそう。
鼻を押さえながら、御用猫は昏倒したケインを揺すり起こす。
ウォルレンは、腹を抱えて呻いていた。
「若先生! 」
少し高めの、弾むような声が聞こえた。
たったっ、と、リリィアドーネの見事な手際に、感嘆の拍手を送り続けていた野次馬の隙間を潜り抜け、金髪の美少年が現れた。
「どうしたんですか、こんな所で」
リチャード少年は、目の前の蹂躙跡を見て、首を傾げる。
「…んなんとなく、分かりませんか、どうせこの軟派な三人組が、リリアドネ様に失礼な発言でもしたのでしょう、まったく、三人共、見た目は悪く無いんですから、もう少し内面を磨く様に心がけてみてはどうですか、私は、もっと真面目で誠実な人が好きですが、世の女性は、見た目の良い殿方を好むものですし、そろそろお三方も妻を娶って、落ち着いてみるとか、あ、でもゴヨウさんは、リリアドネ様以外の女性でお願いしますね」
「お前はリチャードと付き合ってるのか? 」
「なぁっ!? 」
瞬間的に沸騰したサクラが、何かを捲し立てようとしたのだが、素早くリチャードが口を塞ぐ。
(いいぞ、中々に手慣れてきたな)
歩みは遅くとも、この少年も、日々、確実に成長しているのだ。
「…そういや、猫の先生を探してたんだよな、俺たち」
ふらふらと、立ち上がりながら、ウォルレンが言う。
「覚えてたけど、二人を揶揄うのが先かと」
相変わらず、クロスロードの未来が不安になる、若き騎士達を眺め。
何の話かは知らないが、この二人相手なら、断っても良いだろうと。
御用猫は、たかを括っていたのだ。




