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御用猫  作者: 露瀬
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死剣 人取り 17

人は、隠して生きるのだ


己を隠し、罪を隠し、省みる事を拒む


なればこそ生きるのだ


さらけ出しては、死ぬほかない



 御用猫は、夜空を仰ぎ見る。



死ねば総てをさらけ出す


夜空に吸われて星になるのだ



 誰の言葉だったか。


 父か、それとも、名も無き首だったか。


 どちらにせよ、残念ながら曇り空だ、星はないのだ。



「それで、ガンタカはどうしてる」


「どこぞで、野垂れ死んだそうです、気にする事は無いです」


 みつばちは、いつもの無表情だった。平坦な発音で、光の灯らぬ瞳を真っ直ぐに向けてくる。


「案内しろ」


「死んだ者の所に、案内は出来ませんが……どうしてもと言うなら、黒雀が同じ場所に連れて行きますよ?」


 御用猫の手が太刀に伸びた、黒雀は腰の針剣に手を掛けようとしたのだが。


 その時には、井上真改二の切っ先が、ぴたり、と、彼女の鼻先に向けられていた。


 カディバ一刀流「霞打ち」


 右手の動きを囮に、左手で鍔を打ち弾き、相手の予測以上の速度を出す抜刀術。


 黒雀の目が細められる、全身の梵字が蛍の様に、薄く発光した。


「はい、そこまで、黒雀は仕事に戻って下さい」


「仕事、先生、止める」


 不満も露わに、黒雀は右の針剣を抜き放つ。


 ぬらぬらと輝く刀身は、正しく蜂の針を思い起こさせた。


「止まらないので、作戦を変更します」


「なら、良い」


 ぱちん、と、剣を収め、黒エルフの少女は、背を向けて、とことこと歩き始める。


 どうにも、理解できぬ精神構造をしているものだ。


 御用猫はそう思ったが、よくよく考えてみると、理解できる相手の方が少ないのか。


 理解の程度、その多少過多は問題にならないだろう。


「田ノ上老にお任せするのが、一番安全で確実だと思いますよ、楽だし」


「そりゃ、そうなんだがな」


 なら、そうしましょう、と、みつばちは主張するのだ。


 当然だろう、御用猫自身もそう思う。


 そう思うのだが。


「アルグレイドンを殺ったのは、別人なんだろ?」


 はたして、みつばちは答えない。


「なら、これが正解だ」


「……死にますよ? 多分」


 御用猫は苦笑するほかない、まさしく、その通りなのだから。


「でもな、こっちを選ばないと、なんだ、気分が悪いんだよ、後悔かな? まぁ死ぬ時も後悔するだろうが、そりゃ一瞬の事だろう、死なないだけで後悔し続ける、そんな人生は御免だね、どうせ生きるなら気分良く、だ、そして俺は生きたい、だから死なない、野良猫なめんなよ」


 はぁ、と、無表情なままに、大袈裟な溜め息を吐き、みつばちは頭を振った。


「仕方ないですね、お手伝いします、でも、個人的にご褒美は頂きますからね」


「……そうだな、もし、死ななかったら、房中術の練習くらい、付き合ってやるよ」


 いつもの冗談のつもりだったのだが。


 本当ですか、約束ですよ、と、みつばちは意外な食い付きを見せる。


 御用猫は、煩く付きまとう女忍者に、手を振りあしらいながら。



 果たして、この曇天は命を吸い込めるのだろうか。


 ふと、疑問に思った。



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