表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御用猫  作者: 露瀬
47/150

死剣 人取り 12

「お前達二人の仕事は、ここの死守だ」


「ウス」


「良く分からんが、分かりました」


 ぬるり、と敬礼するのは、ウォルレンとケインの二人。肘を曲げ、胸の前で水平に構えた右手の掌を相手に向けるのが、クロスロード式だ。


「マイヨハルト団長の許可も頂いている、事が終わるまでは、私の指揮下に入って貰うぞ」


「ウス」


「特別手当とかあるんすかね? 」


 リリィアドーネが出立したあと、シファリエル王女が、応援として送り込んできたのだ。


 御用猫からは、中々に腕が立つと聞いていたのだが、どうにも軽薄そうなこの二人を、彼女は好きになれずにいた。


「お前達、この仕事はクロスロード市民の、生命財産を守る為の戦いだ、騎士の本義使命といえる任務だ、そこの所を分かってるいるのか? 」


「ウス」


「まぁまぁ、肩の力を抜いて下さいよ、姐さん」


 もういい、と、溜め息を吐いて、彼女は、二人を引き連れ、商館の周囲をぐるりと一周する。


 ゆるく雑談しながら、ケインとウォルレンは付いてくる、一応はリリィアドーネの言う事に、従っている様だ。


 クロスロードの四大騎士団は、それぞれが、主力騎士団、国境警備隊、クロスロード駐屯団に分かれている。国境警備隊は、小競り合いや盗賊団の討伐など、実戦も多く、その為、平民上がりの多い実力主義、それとは逆に、駐屯団は貴族の子弟が中心で、どちらかといえば、家格が重要視され、他の騎士や従士からも、お坊ちゃんの腰掛け、実の無いお飾り騎士団、と揶揄される事もある。


 リリィアドーネの所属する、中央テンプル騎士団は、国中から集められた精鋭の中から、僅かに三百人のみを選抜したもので、家柄は問わぬが、剣力人品に優れた。


 騎士の中の騎士。


 とでも呼ぶべき者たちの集まりだった。


 羨望と栄誉を一手に集め、他団の騎士に対しては、非常時の命令権を持つ。


 リリィアドーネは、成人してからテンプル騎士団の承認審査に合格し、家柄の良さと剣の腕、なにより年が近いという理由で、王女の側仕えとして、近衛騎士団に配属された。


 団長のアルタソマイダスに、憧れていた彼女は喜び、初めて会った時など、緊張で会話にもならなかった程だ。亡き父の師である、テンプル騎士団団長アドルパスにも目をかけられ、リリィアドーネは、二人から剣技と、騎士としての正義観念を叩き込まれたのだ。


 今でも、その頃の心備えを忘れてはいない彼女にとって、ウォルレンとケインの態度は。


(どうにも、弛んでいる)


 としか映らなかった。


 今にしても、ただ散歩をしているという訳ではないのに、彼女の背後で雑談は続いている、よくもまぁ喋り続けられるものだ、がやがや、と、まるで三人で会話でもしているかの様だ。


 敵から見て攻めやすい場、此方から守りやすい場、全て確認し、人員の配置、守りの方針を決めねばならない。


 スキットの家族は、上町の邸宅に居る、彼の私兵と、麒麟パイフゥ騎士団が守りを固めているため、一先ずは安心だろう。


 クロスロード西の郊外にあるこの商館は、大井屋の隊商の中継地であり、クロスロードへ出入りする資材の整理確認と、再配を行う場所でもある。


 現在、アルグレイドン門下生と、田ノ上道場の一行が警護しているのだが。


 田ノ上ヒョーエの作戦は、この商館へスキットが身を隠した、との情報を流し、やってきた襲撃者を捉える、という実に単純なものだった。


 もしも餌に食い付くならば、それなりの数を集めてくるだろう。


 いつ決行されるか分からぬ襲撃に、備え続けるのは、なかなかに辛いものだ、精神的に、骨の折れる仕事といえた。


 アルグレイドン道場の門下生達は、最低限戦える希望者だけを集めて十三名。


 師匠の仇討ちだと士気も高いが、リリィアドーネの見た限り、腕前の程は、上級者でサクラと同程度だろうか。


 当然だとも言えるが、それ以上の者は既に仕官し、騎士として働いているのだ。


(手練れを揃えられると、少々辛いか)


 こちらの戦力は、先の門下生と、田ノ上道場の三名に、リリィアドーネ達騎士が三名。


 スキットや奉公人達は、数えぬ方が正解だろう。


 やはり、厳しい。


 二十四時間見張り続けるならば、交代要員まで考え、警備は半数で行う事になるだろう、襲撃の規模は分からぬが、十や二十という事はあるまい。


 麒麟騎士団も、所縁のある商人とはいえ、これ以上兵はさけぬだろう、傭兵を雇うにも、この状況では身元がよほど確かな者しか使えまい。


「……せめて、猫が居れば」


「居るよ」


 ふと零した呟きに返事を返され、リリィアドーネは飛び上がったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ