表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
御用猫  作者: 露瀬
40/150

死剣 人取り 5

 人生、何があるのか。


 神ならぬ人の身なれば、予想も出来ぬ事だろう。


 なればこそ、面白い。


 などと、言う者も居るだろうが、御用猫はそうは思わない。面倒事など、無い方が良いに決まっているのだ。物事が総て見通せるならば、己の行いに悔恨の情も残らぬだろう。


 そこに成長があるのか、と反論されても。後悔の無い人生の方が、良いに決まっているではないか。


 所詮、人の生き死に、湖面の泡の如し。


 泡の大小に何の意味がある。


 野良猫は、そう思うのだ。


「まぁ、過ぎた事は仕方ない、好きにやらせたのは俺だしな」


 いのやの二階、廊下の突き当たりの、薄暗い部屋で、胡座をかく御用猫。その傍で、倉持カンナは、捨てられた子犬のように小さく纏まっている。


 みつばちと名乗る「くノ一」は、何処吹く風といった態で、すーすー、と、音の出ぬ口笛を吹き鳴らしていた。


 相変わらず、癇に障る女だ。


「……あの、どうすれば」


 カンナは、おそるおそる、消え入る様な声で、尋ねてくる。


 正直なところ、すでに、御用猫に怒りは無かった。


 カンナの好きにさせていたのは自分なのだし、経過の報告も求めず、打ち合わせすらしなかったのだ。


 これで彼女を責めるのは、流石に。


(すじが、通らぬ)


 のである。


 御用猫が腹を立てていたのは、あくまで面倒臭いくノ一に対してであり、そんな女を寄越した事に文句を言ってしまえば、すっきりとしたものだ。


 むしろ、少しくらい褒めてやっても良いだろう。長いこと閉じ籠っていた、ただの少女が、よくもまあ、あれやこれやと手配したものだ。


「とりあえず、事の経緯だな、折角だし、最初から説明してくれ」


「……はいぃ」


 しおしお、と、今も萎んでいくような彼女の頭を軽く撫で、御用猫は笑顔を作る。


「別に、責めてる訳じゃないさ……そうだな、これは武勇伝だ、カンナがどんな活躍をしてたのか聞きたくなったのさ、ゆっくりで良いから、話してごらん」


 撫でられる方向に合わせて、頭を振る彼女は、ようやく安心したのか、ぽつりぽつりと、話し始める。



 確かに、御用猫には、未来など見えない。


 見えれば良いとは思いもするが。


 見えぬ事自体に、不満を持った事など、一度もない。


 所詮は野良猫、流れ猫。


 一度きりの人生なれば。


 好きに流され生きてゆく。


 ただ、それだけの事なのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ