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僕らの見上げる空  作者: 気分屋柚汰
プロローグ
2/3

出合いは一瞬





あぁ、とうとう言ってしまった。



ゆっくりと自転車のペダルをこぎながら後悔の念に包まれる。




そして何気なく視線を上にあげる。





そこには必ず存在するものがある。



人によっては何もないという人もいるかもしれない。


だがしかし、学校の登下校、電車の中、授業中、いつ何時でも視線をあげると必ずそこに空はある。



不確かなものばかりのこの世界で、唯一確かに存在しているもの。




姿形は変わろうとも、私がどんな気持ちでいようとも絶対に存在しているもの。



そんな空を見上げるとなんだか全てどうでもよくなる。




どれだけ自分がちっぽで不確かな存在なのか自覚させられる。



今日私は、彼に全てを打ち明けた。



伝えるつもりなど一ミリもなかった私の気持ちを。



彼はただただ驚いているようだった。



彼にふられてしまうことを恐れた私は、彼に小さな嘘つきあの密室から逃げ出してしまった。



駐輪所まで全力で走り自分の自転車の前で急停止して息を整える。



心臓は通常ではありえないほど激しく脈を打っていた。





それは明らかそこまで走ってきたせいではなかった。





現に、すでに落ち着いてもいいはずの心臓は未だに激しく脈を打っているのだから。 









 残暑がすぎさりだんだんと肌寒くなり始めたころ。



校舎の周りの木々は身を包む物を全て風に攫われてしまい枝だけを寒そうに震わしている。



私は窓の外に見える木々や風景を見るためによそ見をしながら歩くのがすきだった。



そのせいで何度か人にぶつかりかけたり、壁にぶつかったりしてしまう。



まぁ普通に前を向いて歩いていても物を落としたり、躓いたりすることがあるけども。



同じ部活の友達曰く私は「ドジっ娘」なんだそうだ。



正直私自身は少し注意力が足りないだけでドジではないと思っている。



たとえ、人より転ぶ数が多くても。



物を落とす頻度が多くても。



あの日も私は窓の外をぼーっと眺めながら歩いていた。


しかし前方に人の気配を感じてぶつかってはいけないと考え視線を進行方向に戻した。



その視線の先にいたのは彼だった。



あの時は確か2年生の秋ごろ。



一年半同じ学年だったはずなのに私はその日彼を初めて見た。



彼とすれ違った一瞬。



私の胸が小さく高鳴った。



今思えばもうあの時にはもう彼に恋をしていたのかもしれない。





彼とすれ違ったのは本当に一瞬の出来事だったのに、まるでDVDをスローモーションで再生しているときのようにゆっくりに感じた。



そう感じながらなんだこれ恋愛ドラマみたい、とまるで他人事のように思っている私いた。



彼とすれ違ったあとは通常通りの時が流れだした。







私は数歩歩いてからそっと後ろを振り向いた。



もちろん、彼のクラスを確認するためである。



彼は4組の教室に消えていった。



そこで私は目を見開く。



まさか隣のクラスだとは思いもしなかった。



私は5組。




4組とは体育の授業や情報の授業を何度も一緒に受けている。



なのに私は今まで彼の存在に気付かなかったのだ。



自分の注意力の無さに呆れてしまった。



でもまぁ、気づかなくても無理はないのかもしれない。



正直あまり印象に残るような顔でもないし、雰囲気てきには物静かなタイプのようだった。



黒い淵の眼鏡の向こうに見える切れ長の目や少し高めの鼻。



シャープなあご。


少し癖のある髪の毛。


落ち着いた雰囲気。


彼の第一印象はねこっぽい、だった。


ものすごいイケメンというわけではないがまぁまぁ整っているほうだろう。



3時間目の授業を聞きながら先ほどすれ違った彼について思案する。



どんな事を考える人なんだろう。


何が好きなんだろう。


どんな声でどんな話し方なんだろう。


まだ何も知らない彼の事をいろいろと想像していたらなんだか歯がゆい気持ちになった。



あの時の私にとって彼はまだ「好みの同級生」程度の認識だった。


見かけられたらラッキー!と言う感じだ。



後に彼の一挙一動に胸を締め付けられるような想いを味わうとは夢にも思っていなかった。









 

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