小話
文芸部部員有沢理子は、立ちあがったままの
状態で、桜乃部長とカガミに対して
話しはじめます
「お二人とも、いよいよ私が話します
オチが無い話をしようと思います
あれは、私が実家に帰省して
この学園に、電車で帰る途中の車内での
出来事でした
私は、大きなトランクを置くために
座席の一番端に座る事にしてるんです
私の前方には、高校生の女子生徒が座ります
電車が進むにしたがって、乗客がどんどん下車していきます
もう少しで、私が下車する駅に着こうとした時
前の高校生は寝ていました、隣には座席が空いているのにも
かかわらず、中年男性がピッタリと横に座っています
時々、立ちあがりまた隣に座るのです
私は、事件の匂いを感じ
凝視していましたら、つい乗り過ごしてしまったんです
重いトランクを、運んでの乗り換えは大変でしたよ」
有沢理子の話を、静かに聞き入っていた南野桜乃は
質問を投げかけます
「理子ちゃん、どうなったのよ
その高校生は?」
「私が、降りるはずの駅で下車しましたよ
私は、乗り過ごした事実に驚いてしまって
余裕が有りませんでした
あれですね、しまったと思いましたよ
こんなお話でも、桜乃部長なら創作活動のヒントになると
思い話してみましたよ」
「ほんとにオチが無いのね、理子ちゃん
そういうお話なら、誰かが助けに入るのよね
ドラマとかではね、恋愛ドラマではヒロインとの出会いの
場面で使いそうよね、カガミ君」
目を閉じ、手を組んでいたカガミは
顔を上げます
「そうですね、桜乃部長
まあ、理子さんが御無事でなによりです
そのような状況でしたら、一人では行動せずに
車掌さんに御相談ください」
「カガミ君、もっと他には無いのかな?
カガミ君は、理子ちゃんの近くに不審者が
いたら身をていして、守るのかな?」
「善処しますよ」
南野桜乃は、首を横に振りため息をつきます
「ダメだよ、カガミ君ここは嘘でも
全力で守るって言わなきゃダメだよ」
「桜乃部長、嘘でもって
引っかかる事言わないでくださいよ
カガミ君も、約束だよ
私を守ってよね」
カガミは目をそらします
「絶対守りますよ、目の前に危険が有るのなら
例えその日、初めて会った人の為にでも
どうでしょうか、桜乃部長」
顎に手を添えていた、南野桜乃は
少し間を空けます
「良いんじゃないかな~
カガミ君らしいかな
少しだけ期待しておこうね、理子ちゃん」
「そうですね、少しだけですね~
桜乃部長」
有難うございました