小話
桜花大学付属高等部 新館生徒会室
「石田君、怪我完治したんだってね」
生徒会会長綾瀬川月子が、石田治を興味深く見ています
「はい、お陰様で
すいませんが、明日からはこの時間はお手伝い出来ませんので
月子会長、ご了承ください」
綾瀬川月子は、生徒会書記安藤菜緒を
指で、つんつんと突きます
「奈緒ちゃん、寂しいわね
そう思わない?」
安藤菜緒は、石田治へ顔を向けます
「お疲れ様でした、石田君
陸上頑張ってください」
「頑張るよ、安藤さん」
尚も、安藤菜緒を指でツンツンと突いている綾瀬川月子
「菜緒ちゃんさ、ここは嘘でも寂しいって言わなきゃ
ダメでしょ」
「月子会長、それを言う時点で石田君に失礼だと思いますよ」
(本人が、聞いているのですが)
石田治は、聞こえていない様に
視線を外します
「ほらほら、言ってあげなよ」
安藤菜緒は、石田治を見ます
「石田君が、居なくなると寂しいな」
(棒読みですよ、安藤ちゃん)
「有難うございます、安藤さん」
石田治は、顔を引き攣らせながら返事をします
生徒会長綾瀬川月子は、二人に拍手します
「まあ良いでしょ、石田君嬉しそうに
返事しなきゃ」
「そうですね」
(さっきから、地味に効くな
なんだ、この状況は)
「石田君、ご苦労様
部活に行きなさい、時間よ」
「もう、そんな時間ですか
では、お二人とも失礼します」
生徒会室から、石田治が出て行きます
ドアが閉まるまで、綾瀬川月子は安藤菜緒を
観察します
「菜緒ちゃん、行っちゃたわね
見送りに行かないの?」
「月子会長、私に何を期待してるんですか?
先ほどから、意味ありげに」
「菜緒ちゃんは、石田君に何の感情も湧かなかったの?」
「そうですね、特には無いですが
何でですか?」
綾瀬川月子は、ニコニコしながら
安藤菜緒の髪を撫でます
「気にしないで、菜緒ちゃんらしいと思っただけよ」
「教えて下さいよ、月子会長」
「教えないわ、だって面白くないじゃない」
(菜緒ちゃんは、まだまだ子供ね)
お疲れ様です、失礼いたします