三コマ
よろしくお願いします
桜花大学付属高等部 一年四組の教室
佐藤舞教諭は、生徒の自己紹介を聞きながら
生徒の名前と顔を,一致させるために凄く集中しています
目を何時もより、1・5倍大きく見開いています
気が付いた生徒達は、ちょっと顔が怖いと感じています
浦鏡は、ようやく先ほどの失態から回復しました
(いけないいけない、思考を切り替えよう
佐藤教諭、目を見開きすぎです生徒を怖がらせていますよ)
(よし、一年四組四十名の顔だけは
覚えました多分、私は出来るやるんです)
四十名の自己紹介が終わり、佐藤教諭に視線が集まります
「みなさん、明日から早速授業を始めますので
そのつもりで、では解散」
一斉に生徒が、席を立ち始めます
もちろん、浦 鏡も席を立とうとします
佐藤教諭が浦 鏡に手招きします
「浦君ちょっと、来て来て」
「はい」
急いで教壇に向かいます
小声で佐藤先生は喋り始めます
「入学式では、御免なさいね
貴方の名前読めなかったの」
頭を下げる佐藤先生に慌てる、浦 鏡
「頭を上げてください、先生
僕の氏名は読みづらいと思いますから」
「有難う、ずっと気になっていまして今の言葉で安心しました」
「いえいえ安心していただいて、何よりです
では先生、さようなら」
浦は教室を、出るべきその場から離れようとします
そんな浦を佐藤教諭が、呼びとめました
両手で彼の腕を掴みます
「あの~浦君お願いがあるのですが」
佐藤先生は、必死だったので浦君との顔の距離は10センチも離れていません
浦君は、気が付いたら佐藤教諭の度アップの顔があったので
驚きの表情をしています
「うお、なんでしょうか先生」
「あのですね、出来ればでいいのですがクラス委員を
引き受けて頂ければと思いまして」
「確か男女各一名でしたよね」
「そうなの、浦君誰と一緒にやりたい?」
「あのですね先生、推薦したい奴が後に居ますのでいいですか」
「うんうん良いよ、石田君?クラス委員やる?」
先ほどから様子を見ていた石田治は
教壇まで一気に駆けてきた、岡村愛子を伴い
「任せてください、岡ちゃん一緒にやろうよ~」
岡村愛子が手招きすると
桜カレンが駆け寄ってきます
「舞先生 石田治と桜カレンが引き受けるそうです」
「安心したよ二人とも宜しくね」
佐藤舞教諭は、石田治と桜カレンの手をとり
「早速仕事よ、行きましょう」
と立ち去ります
石田治は困惑しています
「浦、なんでこうなるんだ
愛子ちゃん、何でカレン?」
桜カレンが、石田の口を押さえます
「文句言わないの、行くわよ」
三人が教室を去り
「面白かったね、石田君の顔」
「そうだね、僕に火の粉が被らなければの話だけどね」
「大丈夫大丈夫だよ、二人のフォロ-は私たちが
しなきゃね~
もうこんな時間
部活に行ってきます、またね~」
教室には浦 鏡だけが残ります
コンコンとドア叩く音がします
「どうぞ空いてますよ、文芸部の部長さん」
ガラッと扉が勢いよく開きます
人影が浦 鏡に近づきます
「あの私の気持ちです、受け取ってください」
彼女は怪盗ラウールの冒険第一巻を差し出します
浦鏡が借りたかった本です
「ご丁寧に有難うございます」
「浦君、高等部ではまだ文芸部書記です
それから名前で呼んでください」
「分りました、有沢理子さん」
「私には浦君しか考えられません、
この婚姻届けにサインしてください」
浦鏡の目の前に書類をつきつけます
浦は目の前の書類を手に取り読み始めます
「どう見ても、入部届けですから文芸部の」
「サインしてください、やっぱり同じ趣味思考が
結婚生活を続ける秘訣です」
「スルーですか、まあ掛け持ちですけど
いいですか?」
有沢理子は頷き、入部届けを指さします
浦鏡は金色のボールペンで名前を書き込みました
有沢理子は入部届けを素早く鞄に仕舞います
「浦鏡君文芸部にようこそ
早速、新居に行きましょう」
「まだ続けるんですか?いいですけど向かうのは
部室ですよね有沢理子さん」
「浦君はつまらないです、お芝居に付き合うべきです
もう少し遊び心も必要ですよ」
「では、部室に案内してください理子さん」
有沢理子は、浦鏡と手を繋ぎ歩き出す
「今日部室には誰も来ませんから二人だけです」
「そうですか、なぜわざわざ言うのですか?」
「ドキドキしますね、浦君」
「そうですね、ある意味では」
「変な事絶対しないでね
どうですか良く言われるフレーズですけど」
「そうですね、警戒してると言っていることで
少なくとも、異性としては認識してますよとサインを出してますね」
「雑談してる間に部室に到着しました
さあどうぞ」
扉をガラッと開けます
(またスルーですか理子さん
確かに到着しているな、文芸部の部室に
案外広いな部室)
文芸部の部室には、大きな本棚が置いてあります
創作用と読書用の大きな机も完備されています
「浦くんここへ」
二人は向かい合い座ります
「三時に食堂にご一緒してください、私が奢りますよ」
「有難う御座います、好意は素直に受け取らせていただきます」
「素直が一番です、三時まで時間も有りますから
第一巻をどうぞ堪能してください」
「では失礼します」
浦は、鞄から怪盗ラウールの冒険第一巻を取り出し読み始めました
文芸部の部室には、有沢理子と浦鏡が本を捲る音しかしません
(浦君をゲットしました、あんがい簡単でしたね
浦鏡チョロイです
もう少し苦戦すると思ったのに少し物足りないですが)
有沢理子は浦を見つめています
さすがに浦も気になります
「何かな理子さん、さすがに気になりますよ」
有沢理子は何も言わずただほほ笑むだけです
浦は視線を本に戻し、また読書を続けます
(ランチ食べ損ねたよ、あ~でもデザート沢山食べれるからいいや)
有沢理子は、笑みを浮かべながら本を読み始めます
浦鏡は理子の様子を窺っています
(有沢さん、機嫌が良さそうに見える どうゆう心境の変化なんだ
先ほどの視線は何だったんだ、気になるな
今は読書読書、折角の良い読書環境を利用しよう)
そして時間は進みます
有沢理子は時計で時間を確認します
(少し早いけど、浦君と行こうそうしよう)
(お昼を食べ損ねた、有沢さんの対応でスッカリ忘れていた
糖分を補給しなければ、しかし脳の栄養はブドウ糖だけなのだろうか?
あ~お腹が減ってしまいどうでも良いことを考えているな、
しかし正しいのか?この知識は良く分らないな~?
空腹時の思考経路では頭のデータが上手く引き出せない)
浦鏡がどうでも良い事を考えている内に
有沢理子は、浦の後ろに回り込む事に成功しました
(耳に息を吹き込む?脇を擽る?普通ですこれでは
ではこれです、覚悟しなさい浦)
有沢理子は、浦の首にボールペンを当てています
「動かないでください、浦君本を閉じないと痛いめにあいますよ」
「理子さん分りました、物騒なものは片づけましょか
こんな感じでよろしいですか?よくあるシュチュエーションですよね」
「リアクションがイマイチですね、危機感とか恐怖感が足りないですね
でも一番ダメなのはセリフが棒読みです」
浦鏡は苦笑いを浮かべます
「では時間も潰せましたので、行きましょう行きましょう」
浦の、手を掴み起たせます
「いざ食堂へ、お腹を満たしに行きますよ」
有沢理子は浦 鏡の手を握り早足で食堂へ向かいます
(有沢さん、手がちょい痛いかも
やはり彼女もお腹が減ってるのかな?)
有沢理子に浦 鏡が引きずられるように手を引かれています
「到着しました、浦君席の確保をお願いします」
人がまばらな食堂を見つめる浦 鏡
「奥の方で宜しいですか?」
「うんでも、混んでないから其処で待っててね」
浦鏡は頷く
有沢理子はガラスケースの中身を凝視しています
有沢理子を待つ、浦鏡
(時間帯により人の流れも変わるな~有沢さんお早い到着をお待ちしております)
有沢理子は、隙間を見つけるのが困難なほどに
デザートセットデラックスバージョンの全品をトレーの乗せ
運んでいます
「浦鏡カモ~ン ダッシュダッシュ」
大きな声で叫ぶので、まばらな食堂の人の注目を集めます
浦は有沢理子の元へ、急いで駆けつけます
「理子さん、声が大きいですよフルネームで叫ばなくても」
「ごめんごめん、予想以上にこれが重くて
私の細腕では、無理っぽいからです
浦君重いからね、注意してください」
浦が有沢理子から、トレーを受け取ると表情が引きつります
何とか運び終えた、浦は椅子に座りこみます
「お疲れ様、えらいえらいよ」
「力を使い果たしたよ、どうぞお先に召し上がってください」
「いえいえ浦君からどうぞどうぞ
お疲れの様子ですね、そうだデザートの紹介をしますね
ざっと説明致しましょう、お客さま
右から、チーズケーキ、シュークリーム、エクレア、モンブラン、プリン、おはぎ
抹茶まんじゅう、黒糖まんじゅう、大福、イチゴ大福
飲み物は紅茶 日本茶 ウーロン茶 水 牛乳
コーヒー、ジンジャーエール、レモン水 炭酸水 ミルクティー
ロイヤルミルクティー、イチゴミルク、カフェオレ、バナナミルク
マスカットジュース、トマトジュース、です」
「なんか微妙な取り合わせだね、何時もは売れ残るという感じではないし
セットで販売するには商品の種類が多すぎですね?」
「そこは追及してはいけません、浦君たまたま多く発注したのかもしれません
注文書を四月からパソコンで入力していて100を1000と入力しても不思議ではありません
チェックし忘れ、そのままファックスで送ってもです
、デザートセットデラックスバージョンという安易な
セットメニュー名を安易に名付け、食欲旺盛な生徒達に食べてもらおうとは
考えてはいないですよ?」
浦鏡は席を立ち、丁寧にお辞儀し食堂の皆さんに謝罪しました
皆さん苦笑いしています
「理子さんも謝っときましょね」
「空腹でトリップしてたみたいです」
有沢理子も浦と同じように深くお辞儀し謝罪します
「では理子さん、頂きましょうか」
「どれにする?浦君からどうぞ」
「では、おはぎ、抹茶まんじゅう、大福
飲み物は日本茶、ウーロン茶、牛乳でお願いします」
「すごいねこれ、浦君並べると壮観だね
ところでなんで最後は牛乳なの?」
「カルシウムは骨を形成する大事なものだから」
有沢理子は、浦の目の前にある牛乳を半分ほど飲み干しました
グラスを浦の前に返します
浦鏡は口を開け有沢理子を見つめます
「浦君、牛乳はヤッパリ少し苦手です」
「じゃあ、飲まなきゃいいのに」
「なんとなく?浦くんは和菓子フェアだね
この取り合わせは」
「僕も何となく選んだよ」
有沢理子と浦鏡は黙々と食べ続けます
暫くして有沢理子の口が止まりました
「浦君もう駄目です、後は任せました
さあさあ、生ものは今食べてしまいましょう
夏休みの宿題やダイエットみたいに今日はいいや~
明日からやる~ではダメですよ
はい、お口を開けましょうね~」
残りのデザートを浦 鏡の口におしこみます
「良かったですね、良く頑張りましたよ
残してはいけませんよ」
漸く口の中が空になりほっとする浦鏡
浦鏡の頭を撫で続ける有沢理子
(有沢さん、口の中に指まで入れて強引に全部入れますか
息苦しかったですよ、凄い笑顔ですねそのお顔は
鏡で見せてあげたいくらいですよ)
お疲れ様です、続きが書けるように頑張ります
失礼いたします