清掃
桜花大学付属高等部 新館生徒会室
生徒会会計長野美紀に、またまた呼び出される浦鏡
ドアをノックします
「どうぞ、お入り下さい」
長野美紀の、声を確認してからドアを静かに開けます
「どうぞ、お座り下さい」
浦鏡は、一番近くの椅子に座ります
(美紀さん、其処は生徒会長の席ですよ
よく座ってますけど)
「今日は、私の専属秘書である貴方に
仕事を与えます
明日の放課後に、正門の門に集合してください」
(正門ですか)
「何か、必要な物とか有りますか?」
「いえ無いわ、授業が終わったら
走って正門に来なさい
生徒会副会長の、お手伝いをして頂きます
良いわね、生徒会長よりもさらに美人な副会長と二人切りなんて
とても羨ましいわ」
長野美紀は、浦鏡の表情を観察します
「了解しました、生徒会会計の長野美紀さん
なるほどボディガードですね
では失礼します」
席を立つ浦鏡
「荷物持ちだよ浦君、そうそう
また今度、バトミントンしましょうね
またパーフェクトで勝ってあげましょう」
(バトミントンでは、負ける確率が非常に高いからな)
「そうですね、機会が有れば
バトミントン以外で、お願いします
では、失礼します」
ドアを開け、生徒会室から出ます
長野美紀は、ドアを見つめます
「可愛くない、浦鏡」
(聞こえてますよ、美紀さん)
桜花大学付属高等部 正門
放課後に、生徒会副会長広井弥生は
浦鏡を待っています
(まいったな、待たせてしまった)
正門に、浦鏡は走ってきました
「お待たせしました、弥生さん」
「お久しぶり、浦君
今日は宜しくお願いします」
広井弥生は頭を下げます
浦鏡も頭を下げます
「浦君、これを持ってください」
広井弥生は、腕章と軍手とゴミ袋を
浦鏡に渡します
「さあ、行きましょう」
「了解しました」
二人は正門をくぐり歩いて行きます
「あの、弥生さん今日はゴミ拾いですか?」
広井弥生は、空き缶をゴミ袋に入れています
「そうですね、ゴミ拾いもだけど
最初の段階では、生徒の見回りだったんだけど
折角だから、ゴミも拾うことになったんだよ
生徒会長が提案したんだよ
私は思いつかなったよ~
一石二鳥だよね?」
「そうですか、さすが生徒会長ですね」
(生徒会長が提案したのか
なるほどね)
二人は土手沿いを歩いています
浦鏡は、本日二度目は
マンションへの行き方を聞かれています
「マンションですか、不動産屋の方に
聞けば分ると思いますよ」
浦鏡はまたゴミ拾いに戻ります
(今日はよく道を尋ねられるな)
広井弥生は手を止めます
「浦君は、親切そうだから?
道を尋ねられるんだね」
「そうですか、自分では分りませんけどね」
(平凡なオーラが出ているんだろうか
諜報任務には役立ちそうだけど)
「浦君、ゴミを入れる袋も
重くなってきたので
あの橋まで行ったら帰りましょう」
「そうですね」
(けっこう重いし)
「ねえねえ、私達
デートしてるみたいだよね
他の人が見たら」
浦鏡はゴミ袋を持ちあげます
「ゴミ袋を持ってのデートは
なんかロマンチックでは無いですね」
「浦君、現実に戻しちゃったね
今の言葉で
でもね、お金使わないし、環境に優しいデートだよね」
「流行りのエコですか
エコデート」
「エコデート、流行ったら良いね、地球に優しい恋人達
地球に優しい恋人達
ねえねえ、良いフレーズだよね」
広井弥生が、浦鏡に同意を求めます
「そうですね、語呂は良いと思います
弥生さん、橋に着きましたよ
さあ、戻りましょう」
「うん、戻ろう
此処から見るとね
川も綺麗に見えるね
青く見えるよ川が」
広井弥生は、立ち止まります
「そうですね、遠くから見ると凄い綺麗に見えますね」
「浦君、川は直線では無いね
蛇みたいな形だね、うねってるよ」
「そうですね、直線だと洪水の時
大変ですからね、直ぐ川が氾濫しますから」
「川を見ていると、和むよね」
「和みますね確かに、
時間の感覚が鈍りますから、つい時計を見てしまいます」
浦鏡は、広井弥生のゴミ袋を持ちます
「此処からは、僕が持ちましょう
重いですから、弥生さん
軍手をお渡しします、これを持ってください」
「有難う、重いから助かったよ
前に来た時はね、袋を引きずってしまって
袋に穴が、空いて大変だったよ」
広井弥生は、クスクスと笑います
「それは大変でしたね
そう言えば
見回りの時間としては、少し早かったですかね」
浦鏡は、辺りを見まします
「問題ないよ、危険物とか無かったし
今回は、生徒を見るより
危険な物が、有るかを重点的に見てたんだよ」
二人は正門に着きました
「案外早かったね、浦君
今日はお疲れ様です、またお願いします」
「了解です、またお供させていただきます」
「では、解散しますね」
二人ともお辞儀をします
広井弥生は、浦鏡が見えなくなるまで
手を振ります
浦鏡も、手を振り返します
(なんだ、この状況は
早く、僕が姿を消さなければ
お互い、気を使って手を振り続ける状況だ)
浦鏡は、早足で立ち去ります
桜花大学付属高等部 新館生徒会室
長野美紀の、前に浦鏡は立っています
長野美紀は、浦鏡のネクタイを
解いたり結んだり、繰り返します
「そうですか、そうですか
デートを楽しんだと、生徒会長より美人な
生徒会副会長広井弥生と、そしてまたデートをすると約束するとは
随分調子に乗ってますね、私の専属秘書の浦鏡君」
「誤解が有りますね、ゴミ拾いをデートとは
ムードも何も有りませんよ
あの状況じゃ
またゴミ拾いに付き合うだけですから」
「良いでしょう、今日はお疲れ様でした
報告ご苦労さまでした
下がりなさい」
「それでは失礼いたします」
浦鏡は、静かに生徒会室のドアを閉め立ち去ります
お疲れ様です、では失礼します