おっぱいとウソと婦警のおねえさんと
※GL注意
◆
おっぱいという一点において、ぼくの彼女は他を圧倒している。
本題に入る前に、ひとつおことわりを入れたい。
今回、おっぱいはおっぱいと表現させていただきたい。
まず乳房だとかバストだとか迂遠な選ぶこともできるが、あえて主におっぱいという言葉を選びたいのは、彼女の柔らかく豊かなソレを表現する語感としてこれに勝るものを思いつけなかったからだ。
少なからず、ぼくの貧相な断崖絶壁に等しく、顔を埋めようとすれば骨の感触さえ味わえる胸元に比べれば、それはまさにおっぱいと堂々表現するべきだろう。
いやさ、おっぱいに貴賎なし、貧乳も良さがあるのだという人もいるにはいる。
その価値観を否定はしない。
性的嗜好は人それぞれであるからして、世の中には、ぼくの方を好む人もいるだろう。
でも、だ。
でも、少なくともぼくは自分の胸について語る気は微塵もにんじんもない。
これはぼくの彼女のおっぱいを主題にしたのろけ話のようなもの、あとは瑣末事だ。
彼女と出逢ったのは、ぼくが十億円を交番に届けた日のことだ。
偶然、河川敷をジョギング中に拾ったが、ロケットランチャーを拾ったことも過去にはあるが、まぁたまにニュースで見かける程度のよくあることだ。
その十億円を届けた交番に勤務する、婦警のおねえさんが後のぼくの彼女だった。
仮に、名前は天ノ川つきみ、としておこう。
なぜ仮の名前かといえば、ここでこうしておっぱいおっぱい連呼して惚気たことがバレないようにする小細工だ。
さて、ぼくは十億円についてのアレコレをきっかけに、婦警のおねえさんである天ノ川つきみ(仮)と知り合うわけだが、ここから恋愛関係に至るまでは、紆余曲折がある。
紆余曲折あるが、大事なのはおっぱいなので端折る。
重要なのはこの初対面のときに、その美貌と、フォーマルな警官制服と隠しきれないおっぱいに、強烈に「……良い」と脳を焼かれたということだ。
「……あ、十億円の人」
とプライベートで偶然再会した天ノ川つきみには記憶されていたが、こちらは「……あ、おっぱ」と言いかけてごまかすほどに、大変失礼ながらぼくの心のSSDに記録されている。
ああ、大問題だ。
とても魅力的だ。お近づきになりたい。――という本心を伝えたくても、その発端が言うにことかいて「婦警のおっぱい!」では最低すぎてお話にならない。
ぼくは紳士淑女を装い、巧妙に、むしろ極力おっぱいが気になりすぎることを悟られないよう心理戦を展開しつつ、友人になり、そしてどうにか恋人になった。
恋人に――なった、はずだ。
まだ、何もしていない。彼女のおっぱいを、言葉でさえほとんど触れたこともない。
それは富士山のように遠く眺めるに容易く、登りがたい霊山だった。
□
わたし、天ノ川つきみ(仮)は嘘をついています。
おっぱいという一点において、わたしの彼女を騙しているんです。
彼女、織花ゆい(仮)はまだ気づいていない、はず。
この偽乳に。
偽物のおっぱいに!
つまらない見栄を張って、日常的に“胸を大きく見せるバストアップブラ”をわたしは着用していたのです。
本来のサイズの、2-3カップ上に見える程度にはふっくらと見えるように。
お化粧と同じ、かわいいウソ。
これくらいは御愛嬌だって甘く見ていたんです。
でも、ある日、ふと『……あれ、もしかして、織花さんって……』とわたしの偽りの胸への執着に気づいてしまったんです。
本人はバレてないつもりなんですけど、時々、じっと視線が胸元に注がれていて。
はじめは単に偽乳を疑われてるんじゃないか、と思ったんですけど、ちがいました。
彼女、おっぱいを愛でたくて仕方ないんです、きっと。
――と同時に、シャイというか、ホントは興味津々のクセに、奥手というか。
織花さんは年下で、まだ大学に入りたて。
恋愛経験が無いに等しいらしいので、もっぱらわたしがリードする側です。
……というか、ぼくっ娘属性が可愛すぎてこっちが辛抱たまりません。
早期に、なる早で。
はじめてを迎えたい、とわたしは心密かに企んでいる次第。
けれど、けーれど。
織花ゆい(仮)はおっぱいに夢と希望を抱いている。
わたしのつまらない見栄が、その夢と希望を裏切り、傷つけようとしている。
その罪悪感が――。
「……あれ? これ、興奮するゾ……?」
夢と希望を打ち砕かれる純真な少女って、尊いのでは?
すこぶる好こいのでは?
いっそ、おっぱいは大きさじゃなくて感度だよと丁寧に教えてあげればいいのでは?
おっぱいをのぞく時、おっぱいもまたこちらをのぞいているんだゾ、と。
わたしは速達便で、ふわふわファーつきのかわいい手錠をポチった。
真実だ。
真実を告げ、正直になるんだ。
今夜。
ベッドで。
おっぱいについて。
◆
今夜、ついに誘われてしまった。
ぼくは嬉し恥ずかし、隠し事をどうやって打ち明けようか悩みながらホテルへ赴く。
ぼくは今夜、天ノ川つきみのおっぱいをついに触ってしまうらしい。
ちゃんと正直に、ホントはおっぱいが大好きだって、言えるだろうか……。
幻滅されたり、しないだろうか。
「おまたせ、織花さん」
「い、いえ、ぼくも今きたところです、天ノ川さん」
「それじゃ……入ろっか」
彼女に手を引かれて、ぼくは緊張に息を呑みつつ、はじめてのホテルへと入る。
ぼくは胸を高鳴らせ、天ノ川つきみの横顔を見つめた。
真実だ。
真実を告げ、正直になるんだ。
今夜。
ベッドで。
おっぱいについて。
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