18.終焉を喰らう者
ラボの天井が、巨大な質量によって押しつぶされる。
龍馬は手元に掲げた漆黒の「ブランクカード」を見つめ、陶酔したように笑った。
「見ていろ、栞君。これが宇宙の摂理、完全なる進化だ」
彼はカードを自らの胸へと突き刺した。
瞬間、ブランクカードが膨大な情報量を飲み込み、空を覆っていたアダバイスの本体が、一筋の光となって龍馬の肉体へと収束していく。
肉体は肥大し、無数の瞳と触手を纏った異形の神格へと変貌する。
【アダバイス・レギオン】。
龍馬の意識と宇宙の捕食者が完全に融合し、世界を素材として直接加工する権能を手に入れたのだ。
【玉木隼人の視点:覚醒病の果て】
ラボへ辿り着いた俺の視界は、すでに真っ赤に染まっていた。
全身の血管が浮き出し、皮膚が内側から弾けるような激痛。
覚醒病。
カードの過剰な同期と、龍馬への殺意が、俺の肉体を限界まで侵食していた。
「……はは、これが『病』かよ。最高の気分だぜ」
俺は血を吐きながら、手元のレッドドラグーンを見つめた。
カードはもう、本来の姿を留めていない。
俺の「死」を燃料に、この世界のすべてを道連れにするような、どす黒い輝きを放っている。
「栞……ごめんな。約束、守れそうにない。……でも、こいつだけは絶対に連れて行く」
【変貌:アルティメットカタストロム】
俺はカードを握り潰した。
瞬間、覚醒病が臨界点を突破し、俺の肉体が崩壊と再生を繰り返しながら巨大な「影」へと姿を変える。
「……あ、あああああああッ!!!」
背中から噴き出したのは、翼ではなく、世界を焼き尽くすための断罪の炎。
漆黒の鎧を纏い、龍をも超える破壊の化身。
【アルティメットカタストロム体】。
それは英雄の姿ではない。
龍馬という悪夢を終わらせるために、自ら悪夢となった「破滅の王」の姿だった。
【激突:神と悪魔の共鳴】
神と化した龍馬の触手が、空間そのものを切り裂きながら襲い来る。
対する俺は、一歩踏み出すごとにラボの床を原子レベルで消滅させ、拳を叩き込んだ。
「無駄だ、玉木隼人! 君はもう人間ではない。その力を使えば使うほど、君の存在自体がこの宇宙から抹消されるのだぞ!」
「構わねえよ! お前をぶっ殺せるなら、地獄の果てまで付き合ってやる!」
二つの巨大な質量が衝突し、余波だけでロストナイトの結晶が粉々に砕け散る。
銀色の瞳で呆然と見上げる栞の目の前で、玉木は一振りの「死神の鎌」となり、龍馬の肉体を削り取っていく。
46回のループの果てに辿り着いたのは、奇跡の救済ではない。
「共倒れ」という名の、あまりにも凄絶な反逆だった。




