15.繰り返す「悲劇」
視界が銀色の粒子に染まるたび、私はまた「あの日」の屋上に立っている。
手元のサムライクロックは、もう何度目か分からない逆回転を終え、静かに時を刻み始める。
「……また、ここなのね」
私は、校門をくぐる玉木君の姿を遠くから見つめる。
一周目。二周目。十周目。あるいは、もっと。
私は彼を救うために、あらゆる手を尽くしてきた。
【回想:試行錯誤の残響】
三周目の記録:
龍馬を暗殺し、プロトカードの流布を未然に防いだ。けれど、ロストナイトは「原因」をすり替え、突如として現れたアダバイスによって玉木君は街を守り、死んだ。
七周目の記録:
玉木君にカードを渡さず、彼を地下シェルターに監禁して守ろうとした。けれど、彼は丸腰のまま栞(過去の私)を助けるために瓦礫の中へ飛び込み、死んだ。
十五周目の記録:
私が最強の戦力となり、アダバイスを一人で殲滅しようとした。けれど、相打ちになった私の身代わりになって、彼は微笑みながら……死んだ。
「……どうして。どうして、あなただけは救えないの?」
【未来の栞の視点:収束する運命】
どんなに道を変えても、どんなに結末を急いでも。
世界というシステムは、必ず「玉木隼人の死」を対価として、ロストナイトを終結させようとする。
彼は、この残酷なゲームの**「絶対的な生贄」**として定義されている。
そして、毎回訪れるあの瞬間。
致命傷を負った彼が、私の涙を拭いながら言う、あの呪いのような、愛しい言葉。
『見届けてくれ。……俺を。最後まで、生き抜いた俺を』
(……聞き飽きたわよ、玉木君。……その言葉を聞くために、私は戻ってきたんじゃないのに)
【現在の絶望:止まらない秒針】
私は、銀色の瞳で空を仰ぐ。
今、この瞬間も「過去の私」は、何も知らずに彼に恋をし、彼と共に戦い、そして彼を失うカウントダウンの中にいる。
サムライクロックのカードが、私の魔力を吸い取って黒く変色していく。
タイムリープの代償は、私の「人間らしさ」を少しずつ削り取っていた。
味覚はなくなり、痛みも感じず、ただ「彼を救う」という命令だけが、私というプログラムを動かしている。
「……次こそ。……次こそは、あなたを地獄から引きずり出してあげる」
何度繰り返しても逃れられないロストナイト。
それでも私は、再びカードをセットする。
絶望に慣れ果てた「観測者」は、またしても愛する人の死を見届けるために、新しい円環へと足を踏み入れた。




