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君が神様になるまでの46の嘘。  作者: mr.iwasi


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1.干渉

――世界は、あと1000日で終わる。


南極から発生した未知のウイルス「覚醒病」。

感染すれば、遺伝子レベルで身体を書き換えられ、異形の怪物へと成り果てる。

人類が積み上げた文明は、音を立てて崩れ去ろうとしていた。


極秘防衛機関『Cicada』が掲げた人類救済計画。

その名は、「プロジェクト・ビリオン」。

80億人のうち、適合者である10億人だけを選別し、残りの70億人を切り捨てる残酷な生存戦略。


だが、その「選別」さえも失敗し、すべてが灰となった未来があった。


滅び去ったはずの「あの日」から、一人の少女が時間を飛び越える。

血の匂いと絶望を背負った、未来の小瀬栞。


彼女が過去の自分へ託したのは、世界の運命を変えるための『鍵』であり、

愛した少年を戦場へ引きずり込むための『呪い』だった。


何も知らない少年、玉木隼人。

未来の自分に操られる、内気な少女、小瀬栞。


「あなたは、運命に逆らえる?」


二人の栞が交差する時、止まっていた時計の針が、残酷に動き始める。


白い世界だった。どこまでも続く、音のない場所。

 登校中、ふっと意識が遠のいたかと思えば、私はここに立っていた。

「……ここ、どこ? 私、学校に行かなきゃいけないのに」

 震える声に、乾いた足音が重なる。振り返ると、そこにはボロボロの制服を着た私と同じ顔の少女が立っていた。

 ひどい鉄の匂い。その人は、私の手へ強引に一枚のカードを押し付けた。

「これを持って。そして、あの日――十二月の校門前で、彼に渡しなさい」

「え……? 彼って、誰のこと……?」

 問いかけに、もう一人の自分は答えなかった。ただ、泣きそうに歪んだ顔で私を見つめ、消え入りそうな声で囁いた。

「お願い。今度は、彼を死なせないで」

 視界が爆ぜるような光に包まれ、私は現実へと叩き落とされた。


【玉木隼人の視点:表】

「おーい玉木! またお前、意識飛ばしてたろ。昨日ゲームのやりすぎか?」

 前の席から、後藤孝太朗がニヤニヤしながら身を乗り出してきた。こいつはいつも距離が近い。

「……いや、ちょっとボーッとしてただけだよ。それより後藤、お前こそ宿題やったのかよ。今日、英語の提出日だぞ」

「げっ、マジ!? ひよりー、頼む! 一生のお願い、ちょっとだけノート貸して!」

 孝太朗が隣の席の浅倉ひよりに拝み倒す。ひよりは呆れたように肩をすくめながらも、ノートを机の端に置いた。

「一生のお願い、今月でもう五回目だよ? はい、これ。……でも、丸写しはダメだからね」

「さすがひより! 学年委員長の慈悲が身に染みるぜ!」

 そんな、どこにでもある平和な日常。

 だが、放課後の校門を出たところで、その「日常」の幕は唐突に引き裂かれた。

 冬の低い陽光を背に、一人の少女が立っていた。

 僕と同じくらいの年齢。けれど、その瞳には、この世の終わりを見てきたような深い絶望が宿っていた。

「……あなたは、運命に逆らえる?」

 その声は、僕の鼓動を一瞬止めた。

「え……何……?」と聞き返す間もなく、彼女は僕の目の前に回り込み、鈍く光るカードを僕の胸元に押し付けた。

「絶望の未来を壊すための、唯一の欠片。……受け取って。英雄ターゲット、玉木隼人」

 彼女はそれだけ言うと、霧のようにかき消えた。

 手元に残ったのは、不気味な脈動を繰り返すカードが一枚。

「……玉木隼人……? なんで、僕の名前を……」


【栞(現在)の視点:裏】

 私は、電柱の陰でそれを見ていた。

 心臓が壊れそうなほど速く打っている。膝が震えて、地面にへたり込みそうだった。

「……誰、あの男の子。……あなたは、何をしたの?」

 もう一人の自分が接触した相手。玉木隼人――さっき、そう呼ばれていた気がする。

 私は彼のことを全く知らない。話したことも、見たこともない。

 なのに、もう一人の自分は、あんなにも悲しそうな顔で彼を見つめていた。

『――手続きは済ませておいたわ。明日から、あなたは彼の「監視役」としてあの学校へ行きなさい』

 脳裏に直接、もう一人の自分の声が響く。

 足元には、見たこともない私の学生証と、防衛機関『Cicada』の資料が落ちていた。

 震える手で資料をめくると、一枚の写真が滑り落ちた。

 そこには、今よりもずっと大人びた――さっきの彼に似た少年が、冷たくなった「私」を抱いて泣いている姿があった。

「知らない……こんな人、知らないのに……っ」

 知らない男の子を守るために、私は明日から、偽りの転校生として彼の前に立たなければならない。

 12月の冷たい風が、私の頬を刺した。


...続く

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