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札幌に戻ってきた。帰りのJRの電車の中では、二人とも無言で、手を繋いだまま過ごした。魔法が解ける前の憂鬱ってきっとこういう感じなのだろう。小樽からどんどん離れていく車窓も寂しかった。真っ暗な日本海が不気味に見えた。途中から、吹雪はじめて、白い雪の粒が斜めに過ぎ去っていった。志度の手のぬくもりだけが今、確かなことのように思えた。
結局、どこにも行くあてがなくて、地下鉄で地元に戻り、国道沿いのファミレスに入った。とりあえずドリンクバーを頼み、志度はコーヒー、私はカフェオレを飲んだ。窓側の席に座り、トラックとタクシーしかほぼ通っていない国道を眺めていた。雪は本格的に降り始めていた。
「ねえ。本当にこれでお別れかな」
「お別れかもしれないね」
「そんなの。――理不尽だよね」
「理不尽だね。――だから、ギリギリまで起きてよう。お互い。オールしてさ、最後の最後まで一緒にいよう」
「私は信じないよ。戻ること。絶対、このまま志度と二人で人生歩むことができるんだよ。――それにプロポーズしたんだから、責任取ってよ」
「当たり前だろ。俺だって、元の世界に戻ること、信じないよ。信じたくない。だけど――」
「だけど、なにさ」
私はムキになって食い気味にそう言った。
「戻っちゃうかもしれない」
志度はそう言ったあと、コーヒーを一口飲んだ。
「ねえ、志度。約束して」
「なにを?」
「戻らないってことを信じ切るってことを」
私はそう言ったあと、右手の小指を志度の方に差し出した。志度もそっと右手の小指を出し、私の小指に結んだ。
「わかった。信じ切るよ」
志度はそう言ったあと、右手を何度か揺らし、指切りをした。




