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「美味しい。最高」
私はドゥーブルフロマージュを一口食べたあとそう言った。ドゥーブルフロマージュを口に入れた瞬間、とろけてミルクの甘さが口いっぱいに広がった。ゆっくりそれを噛むと、レアチーズの甘さとベイクドチーズの酸味、風味が口の中で立ち、それだけで幸福な気持ちになった。
病院からルタオのカフェまでタクシーで移動した。病院は思ったほど、離れていなくて、ワンメーターで行くことができた。カフェの中はほとんど満席に近かった。私と志度は窓側の4人席に座っている。テーブルの上には白いお皿に乗ったドゥーブルフロマージュ2つとコーヒーとカフェオレが並んでいる。
「やっぱ、何回食べても美味いわ」
志度はそう言いながら、フォークでドゥーブルフロマージュを掬い、口の中に入れた。しばらく、私と志度は黙々とドゥーブルフロマージュを食べた。さっきの事故なんてまるでなかったかのように食べ続けた。私と志度はほぼ、同じくらいに食べ終わった。ドゥーブルフロマージュを食べ終わって、志度を見ると志度は微笑んだ。
「美味しかったね」
志度はそう言ったあと、コーヒーを一口飲んだ。
「うん、最高だった。あそこで帰らなくてよかった」
「やっぱり、小樽に来たら、これ食べて帰らないとね。後悔するよ」
「だよね。――事故からのギャップがヤバいね」
「あぁ。死ぬかと思った。マジで。ホント、殺しにかかってるよな。俺たちのこと。――こういうのお祓い行ったらどうにかなるのかな」
「お祓いでどうにかなったら、私達のどっちかが、死んでないよ。たぶん」
「そっか。多分、今日って、最高に不運な日なんだろうな。だって、こんだけ事故りそうになるんだよ?」
「もう、一回、事故ってるけどね」
「あ、そうだった」
「――ねえ、痛い思いさせて、ごめんね」
「ううん。日奈子が無事でよかった」
「結局、志度は私のこと守ってくれたね」
「――当たり前じゃん。日奈子のこと、守り抜くよ」
「――志度」
「なに?」
「死なないでよかった」
私はそう言ったあと、また涙が溢れそうになった。だけど、口をつぐみ、力を入れ、泣くのを我慢した。




