71
あたりは静まり返った。この道を歩いていた何人かは立ち止まり、車道の車は停まっていた。反対側の歩道で何人かの人が車の方へ走っていくのが見えた。「ヤバい」とか「うわぁ」とかそういう声が、いたるところから聞こえて、ざわつきになっていた。
私と志度はその場に止まったまま、道路越しに反対側の歩道を見ていた。スーパーのショーウィンドウにシルバーの車が突っ込んでいた。ショーウインドウのガラスは粉々になっていた。車道を見ると中央分離帯を超えて、車が飛び出しているのが見えた。握っている志度の手がかすかに震えているのを感じた。
「日奈子、マジだったな」
「うん。マジなやつ。ヤバいね」
「ああ、ヤバいな」
「もしかして、俺らあの事故に巻き込まれてたかもしれないな」
「うん。あのままだったら巻き込まれてたよ」
「マジか――」
「うん、マジ」
「――震え止まらないだけど」志度はそう言った。
志度の手はさっきにましてブルブルと震えているのが私の手に伝わった。私は繋がれた右手にまた力をギュッと入れた。ちょっとでも震えが止まればいいなと思ったけど、志度の震えは止まる気配はなかった。
「――大丈夫?」
「だいじょばない」
志度は私の手を繋いだまま、そう言った。




