64
大通駅に着き、南北線の改札口を抜けた。地下街へつながる改札前の地下通路の暖房があまりきいていなかった。出口から吹き込む風がとても冷たかった。地下で反響する無数の足音と話し声の雑音はいつもどおりだった。
志度は三越のショーウインドウの前に立っていた。志度は携帯をいじっていた。耳に付けているシルバーのピアスが照明に反射していた。
志度はベージュのダウンに黒のパンツを履いていた。ショーウインドウによりかかり、右足を左足首に組んでいた。私は立ち止まり、しばらく志度の姿を眺めていた。手が熱くなり、手のひらに少し汗が滲んだのを感じた。
「日奈子」
志度が私に近づいてきた。私はその場で立ち止まったままでいた。
「――日奈子」
志度はもう一度私にそう呼びかけた。志度は真剣そうな眼差しで私を見ていた。私は息を吐いたあと、志度に抱きついた。
「おい」
周りから視線を感じる。だけど、そんなのどうでもいい。コート越しでも志度の体温を感じる。鼓動は大きくなって、すごくドキドキしている。
志度は私の背中に両手を回した。そして、お互いにしばらく抱き合ったあと、私は両手を志度から離した。
「――ごめん。遅くなって」
「――いいよ。大丈夫だよ」
「うん。ごめん」
「よーし、ランチ行くか」
志度はそう言って、左手で私の右手をつないだ。




