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カーテンを開けると、弱くて黄色い朝日が部屋に差し込んだ。3階の高さがあるこの部屋からの景色は白色一色で、道路も、電柱も、街路樹も、すべてが凍てついている。
二重窓越しでも冷気を感じる。そっと、窓ガラスに右手を当てると冷たくて、一気に鳥肌が立った。
正月も12月の延長線上みたいにポッカリと心に穴が空いたまま過ごした。そして、年始のお祝いムードが抜け、そのムードの寂しさも一緒に1月4日は私にのしかかった。成人の日を過ぎたら冬休みは終わる。そして、私は学校に行くだろう。タイムスリップして、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。そして、志度がいなくなってからも1ヶ月が経とうとしていた。
桜子に会ったあとから、ひたすら逃避することを考えていた。実際、何度考えても、今後の私の人生をどうやって進めていけばいいのか、全くわからなかった。今更、大学に行って、何を学ぶんだろう?
私にとってやりたい仕事なんてほとんどない。本屋の仕事も元々、憧れて入ったけど、もう十分やりきった。出版不況の所為で給料にならないし、毎日クタクタなまま、プライベートを犠牲にして働かなくちゃならないことは十分にわかっている。なろうと思っても正社員にすらなれないんだ。
優と遭うためにもう一度、同じ会社で書店員をやってもいいかもとも思ったけど、優とまた出会える保証なんてなにもない――。
そして、そもそも、志度がいないと私の人生は回り始めない。また、優と付き合いながら中途半端な気持ちに苦しめられるかもしれない。
――絶対にそうだ。
志度と一緒に人生を作っていかないと、私は生きていけないんだ。だけど、志度はもういない。その現実を私はまた受け入れたくなかった。




