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目が覚めた。
ただいま、25歳――。
いや、戻ってない。
身体は右手を下にして、横向きになっていた。景色は実家の私の部屋だった。
私は起き上がり、机に置いていた携帯を手に取った。携帯も昨日のままだった。携帯で時間を見ると朝の5時半すぎだった。ものすごく長い時間寝ていたことになる。昨日のお昼すぎに寝たから、20時間近く眠っていたことになる。少しだけ頭が痛かった。
私はようやっと気づいた。なんでタイムスリップが終わっていないのか、よくわからなかった。占いのおばさんは2回寝たらタイムスリップが終わるって言ってた。
だけど、私はすでに3回目の睡眠を終えてしまった。私はため息をついた。志度が死んだ世界で生き続けても意味がない。しかも、今更高校生をやっても意味がない。もし、これで25歳に戻れなかったら、また大学受験をしなくちゃいけないし、就職活動をしなくちゃいけない。
しかも、25歳のときにプロポーズしてくれた優に出会えるかどうかもわからないし、優と付き合うこともできるのか、よくわからない。
――私は、結局、すべてを失った。
急に優に会いたくなった。25歳の自分に戻ったあと、優にタイムスリップしたことを白状して、死んだ初恋相手を救うことはできなかった。
運命はかえられなかった。だから、あなたと真剣に向き合って、生涯を過ごします。って言いたくなった。きっと、優ならそんな私の話も聞いてくれるかもしれない。
きっと、冗談として受け止めて、『日奈子って面白いね』といつものように言って、笑ってくれるかもしれない。
――だけど、優のそういうところが好きになれなかった。
本当は志度みたいに『バカだろ』って正直な感想を言って欲しい。本当の私を突いたような言葉を返して欲しい。
もう、そんなこと言っても遅いんだ。
志度も優も失った今、消えることがない空虚を感じて、死ぬために生きなくちゃいけなくなる。それだけで、ものすごく嫌になった。
今日も学校を休んだ。昼過ぎに桜子から、メールが来た。3日も学校に行っていないから、気にかけてくれたのだろう。メールには私を気遣う言葉と、もしよかったらカフェで話そうって言われた。だから私はその誘いに乗ることにした。




