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志度の家族が来たあと私は挨拶をし、事情を説明し、すぐに病室を出た。携帯をバッグから取り出した。
まだ11時すぎだった。
――まだ、午前中の出来事だ。
ため息をつくと、一緒に涙が流れた。灰色したビニールの廊下は涙で霞んでいる。奥の窓ガラスから差し込む白い光がやけに眩しく見えた。ゆっくりと廊下を歩き、会計ロビーに着いた。緑色のビニールが張られているベンチに腰掛けた。
座ったまま、前かがみになり、両手で顔を覆った。手はすぐに涙でぐしゃぐしゃに濡れた。息をするとき、声がでないように押し殺した。息をするたびに両肩が上がった。
結局、同じことの繰り返しだ。そもそも、志度を救えたとしても未来なんて変わらなかった。




