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48時間後に君は死ぬ  作者: 蜃気羊


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「やばかったな」

 志度はコーヒーを一口飲んだあとそう言った。

「やばかった」

 私はココアが入っているマグカップを手に取り、ふーっと息を吹きかけた。息を吹きかけると湯気がふんわりとあがった。向かい側の赤いベンチシートに座っている志度は左手で頬杖をつき、窓越しに外を眺めていた。

 志度と私は学校に行く気にならず、そのまま駅前の喫茶店に入った。この喫茶店は年季が入っていた。壁やカウンターはブラウンで統一されていて、床のタイルも四角くて茶色のものが引き詰められていた。照明は裸電球を何個も天井から吊るしたものになっていて、店内はとても薄暗かった。 

「たぶん、あの車、俺に当たってたよな」

「そうだね。粉々になってた。夢みたいに」

 私がそう言うと、志度はため息を吐いた。

「正夢だったってことか」

 志度の声は静かで低かった。志度はコーヒーをもう一口飲んだあと、コーヒーカップをソーサーの上に戻した。


「――正夢じゃないよ」

「え、正夢だろ。だって――」

「志度が死んでないから」

「あ、そっか」

 志度がそう言ったあと、ふっと弱く笑った。私もつられて弱く笑った。

 

「ねぇ」

「なに?」

「――生きててよかった」

「日奈子もな」

 志度は優しく微笑みながら、センターパートの前髪を右手でジリジリといじった。 

「なあ、日奈子」

「なに?」

「俺、マジで死んでたかもな」

「うん」

「――だけど、生きてる」

「――うん」

 私はそれ以上、言葉が出てこなかった。もう一度マグカップを手に持ち、ココアを一口飲んだ。そして、窓越しに外を眺めた。道路には切れ目なく車が走っていて、どの車もゆっくりと通り過ぎていった。

 ――過去が変わった。志度は死ななかった。ようやく私はそれを噛みしめることができた。しかも、簡単にあっさりと出来てしまった。

「あのとき、日奈子がコケてくれたから、助かったんだな。きっと」

「――よかった」

「ありがとう」

 志度はそう言ったあと、また左手で頬杖をつき、窓の外に広がる雪景色を眺めていた。窓の外では無数の人達が駅に吸い込まれていた。


「ねえ」

「なに?」

「ねえ、学校サボっちゃおう。今日」

「いいね。日奈子、悪い子だな」

 志度はそう言って、微笑んだ。


「ねえ、私の家に来ない?」

「え、日奈子の家、行くの?」

「なにビビってるのさ」

 私はそう言って、笑った。志度は急に頬杖をやめて、右手で口元を抑え始めた。

 

「いや、そうじゃなくてさ」

 志度は明らかに目が泳いでいた。

「大丈夫だよ。親は6時までは帰ってこないし、お昼ご飯もうちで食べれるしさ」

「オッケー。わかった。あー、緊張する」

「もう、緊張しないでよ」

 私はそう言いながら志度に微笑みかけた。





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