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あたりは一瞬で静まり返った。この道を歩いていた何人かは立ち止まり、車道の車は停まっていた。何人かの人が大丈夫ですかと言って、車の方へ走っていくのが見えた。私は尻もちをついたままだった。目の前に立っている志度を見ると志度は振り向き、車の方を見ていた。
私はまだ、自体を飲み込めていなかった。スーパーのショーウィンドウにシルバーの車が突っ込んでいた。ショーウインドウのガラスは粉々になっていた。何秒かして、ざわざわと多くの人が話し始めたのがわかった。歩みを止めていた何人かは再び歩き始めた。
「ヤバいね」とか「大丈夫かよ」などの複数の話し声がざわめきになっていた。そして、私は派手に転んでいたのに、志度以外、誰一人として、私が滑って転んだことを認知していないようだった。
「日奈子、大丈夫か」
志度はそう言って、右手を私に差し出した。志度は私をまっすぐに見つめていた。私は志度を見つめたまま、何度か深呼吸をした。
「ヤバいな」
志度は私の右手を掴み、私を起こした。地面に打ち付けたお尻はじんわりと痛み始めている。
「――志度」
「生きてるよ」
志度は私の手をつないだまま、そう言って微笑んだ。




