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寝坊した。
私は焦った。時間を見て絶望した。このままじゃ、志度が死んでしまうと思った。慌てて身支度をした。弁当を持ったことを何度も確認して、女子高生の格好をして家を出た。
外はスッキリと晴れていた。水色の空が気持ちよかった。そんなのはどうでもよかった。私は走り始めた。雪の下は氷になっていて、その上につもった雪で何度も滑りそうになった。このままじゃ、また同じ結末になってしまうと思うと、誰かに鷲掴みされているかのように胸が痛くなった。
今日に限って、道はツルツルだった。
――というより、このツルツルになった路面の所為で志度は交通事故にあったんだから、当たり前といえば当たり前に思えた。
だから走ることはとても難しくて、私は競歩みたいな速さで待ち合わせの場所の向かい側まで来た。
横断歩道がちょうど赤になった。道の向かいにいつも待ち合わせているスーパーが見えた。志度はまだスーパーの前にはいなかった。志度の家の方面を見ると、奥から志度が歩いてきているのが見えた。志度は携帯をいじりながら歩いていた。志度はまだ私のことに気づいていないようだった。
信号が青になり、待っていた車も動き始めた。信号が変わってすぐに私も横断歩道を渡り始めた。横断歩道は思った以上にツルツルになっていた。凍ったアスファルトが朝日で照らされ光っていた。横断歩道を待っていた何人かの人たちもゆっくり慎重に渡り始めた。
みんなペンギンの散歩のように慎重に、静かに横断歩道を渡っていた。やっとの思いで横断歩道を渡り切り、私は走って、志度の方へ向かった。志度は私に気づいて手を振っていた。私は手を振り返さなかった。
「志度!」
私は大声で志度を呼んだ。右足を踏み込んだ時、右足の摩擦がなくなった。そして、右足と左足は宙に浮き、私は尻もちをついた。志度をあの場所から動かさないと、と私は思った。
だけど、身体は鈍く痛んだ。早く立たないとと思いが空回る。心臓が破裂しそうなくらい音を立て、冷静に危機を感じた。
遠くから日奈子って声が聞こえた。志度が走ってきているのが見えた。私は両手を雪道についたまま、尻に鈍い痛みを感じ、上手く立ち上がれなかった。
志度は息を少し切らしながら、私に右手を差し出していた。私が志度の右手をつかもうとしたとき、大きな音がした。




