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店を出たあと、しばらく私の頭の中はぼーっとしていた。空っぽになったように何も考えることができなかった。
外は蒸し暑く、夏の黄色い夕日が強く射していた。おばさんが言っていることがよくわからなかった。タイムスリップっていきなり言われてもよくわからない。本当にできるのかもわからないし、新手の詐欺にしてはあまりにも雑な詐欺だし、なにかの勧誘にしてもあまりにも幼稚に思えた。
帰りにサッポロファクトリーに寄った。平日昼間のファクトリーは人はまばらだった。エスカレーターを登り、三階からアトリウムを眺めることにした。適当なベンチに座り、アトリウムのイートインでアイスを食べている人や歩いている人たちを眺めた。
志度とアトリウムを眺めたことを思い出した。そのとき、アトリウムにはクリスマスツリーがあり、しばらく手すりにもたれてツリーを眺めていた。そして、ベンチに座り、志度と手をつなぎクリスマス色に点滅する電球や、結晶の形や丸の形をしたオーナメントを眺めていた。私は酔ったように落ち着いていた。
あの落ち着きは運命ぶってただけかもしれない。だって、志度はすぐに死ぬんだから。
タイムスリップして、もし志度に会えたとしても、私はどうするのかわからなかった。タイムスリップして志度に会って、私は一体何を話すんだろう? 過去に戻って、志度とクリスマスツリーを眺めて、また酔ったように落ち着いた気持ちを味わうだけで終わりなのだろうか。その次の日に志度は死ぬのに。




