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凍てつく寒さなんて感じない。
私は真冬の札幌でお気に入りの黄色のコートを脱いでいる。そして、そのコートは血に染まっている――。
「志度!」
彼の名前を何度も口にするけど、彼は反応しない。彼の顔はすでに青白くなり始めている。周りの人に救い出され、雪の上に寝かせられた彼は血まみれだった。降り積もった雪が簡単に赤くなる。
止血するものはない。救急車のサイレンが遠くから聴こえる。
私は制服のまま、雪の上にひざまずいている。黒タイツ越しに冷たさを感じるけど、そんなのどうでもいい。
彼が雪のように消えなければいい――。
もしかしたら、彼の命はすでに溶け始めているのかもしれない。
早く。
誰か、早く彼を救って――。
息を吐くと大粒の涙が両目から溢れた。




