9 新日常
翌日電話の音で起きた。締め切りの期限を間違えたかと思い急いで電話に出ると着信音がいつもとは違ったことに今更気づいた。着信元を見て無視を決め込んだ。すると通知がどんどんなり始めた。察した。
いわゆるスタンプ連打というやつだろう。スタ連してきたのは例の奴だった。昨日知り合った同級生(仮)である。通知オフを通り越してブロックしてやろうかとも思ったが、判断基準を感情から理性に移し、要件を聞いた。
「いや〜昨日LINE交換したしさ〜せっかくなら送ってみようと思って〜」
伸ばし棒がやたらヘニャヘニャなふざけたメッセージが飛んできた。僕は彼の通知をオフにしておいた。
昼すぎだろうか、既読無視を決め込むのは性に合わないと判断した僕は彼の素性を知るためにやり取りをしてみることにした。その前には「既読無視ってひどくない???」とか「君友達少ないでしょ」などどうでもいいがムカつくメッセージが飛んできていたが、その主題のない会話に僕の方から吹き込んだ。
「歳は幾つ?」という質問には「23歳」という返答が帰ってきた。「何県出身?」という質問には
「正確に言えば県じゃないけど...T都出身だよ」という返答が帰ってきた。出身地も年齢も同じ...彼への解像度が上がるに連れ彼の発言が現実性を帯びていく不思議な感覚に囚われた。
「君の方は?」その返信が返ってくると少しめんどくさい職業柄答える側には慣れていない。そんなことを思っていると質問をしていないのに返信が飛んできた。
「君の方は?ほら、好きな食べ物とか」先見の明とはまさにこのことだろう。嫌な予想が当たった。
まあそれでも自分が質問しておいて無視を決め込むのは質問をしていないときでも無視をできなかった僕にとって不可能なことなので、一つ一つの質問に律儀に答えていた。時刻は14時を回っていた。




