1年生 夏 前編
私は【カレ】を探しています。
ですが、私は【カレ】のことを忘れかけています。
そこで、ここに文章として残すことにしました。
私はまた、【カレ】に会いたいです。思い出したいです。
でも【カレ】の名前も顔も忘れかけています。
これから記すことに心当たりがある、
多分【カレ】のことだろうと感じた方は、
以下の連絡先にて、ご連絡ください。
aiueo1234(at)example.com
前回私は「ブタメンを奢らされた」と書きましたが、
もしかしたら別の駄菓子だったかもしれません。
駄菓子だったかも怪しく感じてきました。
ですが、とにかく何かを奢らされたのは確かです。
皆様も【カレ】には気をつけてください。
実際に奢る額としては少ないですが、奢らされるその低いジャンル(駄菓子や菓子パンなど)の中としては高いものを奢らされます。
同年6月22日
梅雨真っ盛り…………とも言えず、地球温暖化により
蒸し暑さよりも日差しの強さのほうが印象深くなっていた。
だが、昨日はまあまあ降った。
そして今日はカラッと晴れている。快晴だ。雲1つない
最悪だ。生きているだけで苦しい。
私は学校にいるとき、必ずマスクを付けていた。
ほかの子たちは、マスクを外して1日を過ごしている者もいれば、体育の日だけ外して、基本的には私のように顔パンツをしているものもいる。
だが、この季節は人間皆平等に苦しめる。
なんと素晴らしい思想の持ち主なのだろう。梅雨というのは。あーーーーー憎たらしい!!
憎たらしいといえば【コイツ】だ。
そう…………
「よーーー!!お前ー!!…ん?まーたマスクつけっぱなしなのかぁ〜?(笑)苦しくないのぉ〜?(笑)」
「はぁ…【キミ】が言えた口か…?【キミ】もまた黒いマスクをつけてるじゃないか。」
「はーはは!僕はお前と違って体力があるからねぇ〜!!(笑)それにぃ〜………」
「それに?」
「僕は梅雨が嫌いじゃない!!はーはっはっはー!!
どうだぁー?オトナだろぉ〜?(笑)」
あーそうだな。
「どこがだよ。」
「あ!?またお前心の声と真逆のこと言ってるぞ!!
というかいまのはフツーに間違えたのか!?」
「おーと。ほんとだ。本心が口に……(笑)」
「!?…………お…お前ぇぇぇえ!!!」
【カレ】は私に本気で殴りかかってきた。
……が、相変わらず子供みたいな【ヤツ】なので、
私には…というかこのチカラだと誰にも痛い目をあわせずに終わる。
【カレ】の気が済むまでぽかぽか殴られて、痛いフリをする。
そうすると【カレ】は
「………ふ……ふふふ……(笑)ど…どうだ……参ったか……?」
「あーいたいたい。まいったー。つよいなぁー【キミ】はー」
「……へへへ……そ、そうだろぉ………(笑)」
と満面の笑みになり、気分を取り戻す。
【カレ】の笑顔とこの態度だけは、どんな日差しや蒸し暑さよりも強く、暑い。
でも、苦しくないのだ。
生きていると感じる。
それが不思議でたまらない。
とても晴れやかになるのだ。そうだな……どれくらいかというと……
今日の天気くらい。
「なー?お前ぇ〜?」
「ん〜?」
「いっつも僕たち夕方に会うけどさ?どうして?」
「………知らない。あと、そんなに……きょうみ……ない。(笑)」
「えー!?うそー!?初めて同意見だぁ!(笑)
さっすが友達だなぁー!(笑)」
「…………興味ないのに聞いたの?」
「うん!!」
「…………」
「………?なに?」
「………はぁ…やっぱり掴めないなぁ…」
「あー!そりゃあそうだよ!だって僕………」
「…?」
「………ぼ、僕、お前と比べて頭いいもーん!!(笑)」
「あー…そ、そうか…」
「………なんだよ〜ツッコめよぉ。」
「いや、違うだろーとは言えないだろ。【キミ】、テストの点数とか教えてくれないし。」
「え?そ、そうだっけ?」
「いやそうじゃん。【キミ】と違うクラスだから、普段の【キミ】の成績とかわからないし、中間テストの結果聞こうとしたら、結局全然違う話になるし。明らかに触れてほしくなさそうだけど、点数低かったら自分からイジりにいくタイプだろうから、私より低いとも思えないし、かといって本当にテストで高得点取るようなひとなら……まぁ、しなさそうなことしてるし…何かとは言わないけど………ん゙ん゙、とにかくね……?はっきりいって未知数なんだよ。【キミ】。どれくらいのレベルかわからない。少なくとも私みたいな無キャというかこれといって好きなものとかないのかなーとしかわからない。私と同じでみんなに合わせて生きるのが苦と思わない、そうすることにより価値を見出そうとする…私みたいにしょうもないやつ……言いたいこととしては……しっかりとは、【キミ】のことはわからない。ってこと。」
「…………お…お前も…」
「ん?」
「そういうふうに考えてたのか……?」
「私……『も』?」
気づいたときには、どこにもなかった入道雲が【カレ】の後にあった。青々とした空に、一塊の大きな雲が、私の方に、猛スピードで向かってきているように見えた。【カレ】の金髪が、入道雲の白でより目立つ。
キラキラしていて、宝石のようだった。
だが、こんなにもきれいなのに、私は喜べなかった。
それよりも、『怖い』と感じた。
まるで猛スピードで向かって着ている入道雲が、私に大雨と雷を浴びせ、ズタボロにするような…
壮大な入道雲が……いや、偉大な何かが…私に直々に罰を与えるような……
そんな『怖さ』だ。
私はそんな怖さを紛らわせようと【カレ】に聞いてしまった。
「私も……って…どういうこと…?私の予想は当たってたってこと…?」
「逆だよ。お前も結局は本当の価値を知ろうと、見ようとしない。見ようとするフリばかりする人間……」
私は全く意味がわからなかった。
【カレ】の言葉だけではない。
【カレ】の目つきの意味も、
【カレ】にとっての価値も、
【カレ】にとっての私へ印象も。
【カレ】に関する全てのことがわからなかった。
なんだか暗くなってきているように感じる。
入道雲が近づいてきているのだろうか。
「…………ごめん………僕……何してんだろ……もっと話したいこととかもあったのに……また……また……友達に……ひどいこと……ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさい……」
「ち、ちょっと……?」
「自分にしてほしいと思うことを他の人にもしなさい………そうするべきなのに……僕は…友達に……ひどいことを……また失敗しちゃった……」
私があっけにとれている間に、いつの間にか入道雲が私たちの上にあって、ポツポツと振り始めてきた。
【カレ】の一文字一文字に反応するように、ポツリ…ポツリ……と…
私は急いで【カレ】を連れて雨宿りしようとしたが、
【カレ】はもうその場にはいなかった。
気がつけば外は豪雨になっていた。
とても激しくうるさい雨と雷だ。
怖い。なぜだろう。とても怖い。
この怖さは罰を受けることへの怖さではない。
大切な何かを失いそうになっている。
そういう怖さだ。
あれから何週間が経っただろうか。
すっかり梅雨明けし、呼吸をするだけで額から汗が滲み出る。しかし、私は暑いより寒いと感じていた。
いや、身体は暑いと感じている筈だ。……何を言っているんだろう。
……つまり、暑いから汗が滲み出るのではなく、大切な何かが完全になくなったのではないかという怖さによって、私は汗をかいていると感じたのだ。
今思えば、この時点でその何かに気が付かない時点で、既に失っていたのだろう。
それを当時の私は、失っていなかったとのちに感じたが、
今の私は……
取り戻すことができたのだろうとおもう。
私の心は快晴である筈なのに、真っ白でよく目立つ入道雲を、血眼になって探した。
そして、夏休み前のあの日。私はまた、【カレ】に会うことができたのだ。
そして私は決意した。
自分にしてほしいと思うことを、【カレ】にもする。
と。
*これはフィクションです。
実際にあのメアドが存在するとも思いませんし、本当に連絡する方もいらっしゃらないとは思いますが、
実際に連絡したりしないでください。
あと人生初作品です★