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14話 入学式


「……といった感じで、わたくしにも本当に危害を加えるつもりだったのかは分かりません」

「なるほどね、そろそろ私も動いた方がいいかしら」


教会に寄付をしにしきたところでミレナと出くわしたので話を聞いていた、聞く限りだと最近は直接的な被害も大きくなってるみたいだし、あの女もいい加減本性がボロボロ出てきているから学園でも浮いてきてるみたいね。ユウリ様にも完全に引かれてるみたいだし。


「本当に女神様が心配するほどの大きな事を起こすのでしょうか」

「そればかりは分からないわ、でもあの女の言動を見ていると無害だとも思えないでしょう?」

「確かにそうかもしれませんが……」


どうにもミレナには腑に落ちない点があるらしい。あまりにもあの女が小物過ぎてそんな大それた事を起こすはずがないと思っているのかしら。私もそうは思うけれどこの世を作り出した創造神なのだから侮る訳にもいかないと思うのよね。どこでどんな風にこの世界へと干渉してくるのかは分からないのだから。


「ミレナが思っているよりは悪いやつよあの女」

「それも分かっているつもりなのですがどうにも……」


そう言って苦笑いをしているけれどあの女が小物過ぎて心配していた訳じゃないのね。ミレナは少し他人に優し過ぎるという悪癖があるらしい、だからミナのことも一概に責められないといった感じかしら。あんな女にまで慈悲があるなんて、この子いつか本当に女神になってしまうんじゃないかしら。と変な心配をしてしまった。


「なにか起きてからじゃ遅いのよ」

これは自分にも向けられた言葉。一度ありえない事を経験しているのだから警戒してたっぷりと準備をしてきたけど、また何かが起きてからでは遅い。あの女にはマナがないように思えるけれどそれもいつ覚醒するものか分からない。杞憂で終わればいいのだけれど。もし何かのタイミングであの女がマナに目覚めたら、そのマナはどういうものかなんて想像もつかないけどあの女の性格から考えるにまともなものではないはず。


「……一つだけ気になる事があります」

「なに?」

「ルイ様のことです。異常な程に執着した愛情を感じるんです、それがなんだか気味が悪くて」

「それは私も感じていたわ」


ルイの幼い頃に起きた事は私も把握しているけれど確かにあれは異常な程に執着していると私も思っている。改めて口に出して言われるとその違和感は異常というよりかはあまりにも異質なものであるように感じられた。


「もしかして……マナ」

「その可能性は十分にあるかと、あまり気にした事はなかったのですがユウリ様が一度彼女を庇ったこともあったんです」

「待って、その話詳しく聞かせてくれる?」


どうやら杞憂では終われないみたいね。前に一度起きたというその話は、詳しく聞いてみるとなんだか違和感の残るものだった。しつこく言い寄ってくるミナに困っている様子が見て取れたからその場から離れるためにユウリ様を呼び出したこと。その時に困っていたように見えたのでと伝えたところ、彼女にも悪気はないようだから。と庇うような発言をしていたと。普段であれば立場的にも困ってしまうと苦言を呈していた王子様がその時だけはそんな発言をしたと。その時に起きたことはミナが王子様に言い寄って体に触れていたことくらいらしいけれど、接触系のマナだとしたらベタベタと自分から寄っていくルイは飛んで火に入る夏の虫ってやつだけど。もしマナだというのなら、話を聞く限りだと自分で気付かないままに薄い効果で使っているように思えるから今の内に抑える必要があるかも。


「レイラ、聞いていたわね」

「もちろんです」

「学園に行くわ、準備を」


驚くミレナに微笑みかける、私も入学して直接対峙するしかないからね。シャルにも暫く会えなくなる事を伝えるべきかしら。だとしたらすぐに会える保証はないのだしギルドに出向いて先に伝えておくべきかもしれないわ。伝言として伝えておけばシャルの耳にも入るかもしれないし。


「シャルにも伝えてくるわ」

「お話にはよく聞きますが、わたくしもいつかお会いしたいです」

「ふふ、いつかばったり会えるかもね」


不思議な男性だとミレナには話している、本当になんだか一緒に居ると居心地もいいし不思議な気持ちになるのよね。彼とは会えなくなるかもしれないけど、これでミレナとももっと気軽に会えるようになるし王子様ともお目にかかる事になるでしょう。準備をしてミレナと神父様に挨拶を済ませるとすぐにギルドへと向かった、もう暫く会えないと思うとなんだか心寂しくなるものね。せっかく仲良くなったのだからもう少し一緒にダンジョンへと行ったり、仲を深めたかったけれど私にはやるべき事があるのだから。


「シャルちゃんと会えなくなったら寂しくなるわね」

「そうね、でも仕方のないことよ。私はあの女が地獄に落ちるまでは許せはしないから」

「私はノアちゃんの幸せの方が大切よ」

「何言ってるの、私にはティリーやレイラが居てくれるだけで幸せよ」

「あら、あらあら。嬉しいわね」


ティリーと話しているとギルドの前でシャルとフィンを見付ける、タイミングのよさに驚きながらもふたりの所へと駆け寄った。すぐに私達に気が付いて手を振ってくれる。


「ノアさん、依頼ですか?」

「いいえ、今日は違うのよ。少し話したい事があってふたりを探していたの、会えてよかったわ」


普段と違うことを察したのか顔を見合せている。そうよね突然だもの、こんな風に何かを話すことはなかったから。私が復讐したい事もシャルは分かっているのでしょう、私は私の立場を取り戻したいという話はした事があるけれどその他のことは話していなかったから。隠していた事になるのかしら、自分の汚い所をあまりこの人には見られたくなかったのよね。事情を説明して学園に通う事にしたと伝えるとシャルはあっさりと納得した様子だった。


「なるほど、でもそれはまた急な話ですね」

「ごめんなさい、だから暫く一緒に依頼は受けられないし会えるかも分からないのよ」

「謝ることじゃないですから。ただ一つ約束して欲しい事があるんですけど、いいですか」

「なにかしら、私に出来ることなら守るけれど」


ふと手を握られて驚いたけれど、これは隣国特有の文化だと私は知っていた。こうして両手を合わせて握る事で大切な誓いを立てるのだと聞いた事がある。でも少しだけ自分よりも大きな掌に動揺してしまった。こんな風に触れ合ったことはないから、思わず目を逸らしてしまうとシャルが笑っている。


「勉強もして欲しいんです。ノアさんならきっと途中入学でも首席卒業も夢じゃないでしょう」

「え……いえ、それは買いかぶりすぎでは」

「そんな事ないです、僕には分かります」

「……それが、約束なのね」

「はい。それだけ目指してくれるなら僕から言う事は何もありません」


シャルの意図は分からないけれど、私の知性を信頼してこう言ってくれているのなら断るのは失礼だと感じた。きっと私があの女への憎悪だけに染まることを危惧してくれたのね。そうやって都合のいい解釈を見つけて自分を奮い立たせる、復讐もして首席卒業もしてみせる。


「約束するわ、シャルのために勉強もする」

「ありがとうございます、その言葉を聞けて僕も安心しました」


そうして手を離すとフィンとも別れの挨拶をした。会えなくなると寂しいと嘆くフィンの首根っこを掴んで私から距離を取らせるシャルを見ていると、なんだか本当に名残惜しくて暫く話をしていた。


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