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13話 こんなはずじゃなかったのに


なんなのこの扱いは。こんな美少女に転生したのに全然なんにも上手くいかない。本当は教会を助けて有理くんと結婚して、幸せに王城で贅沢な暮らしを満喫するつもりだったのに。あれからエレノアは何もしてこないしどこにいるかも知らないからどうでもいいけど、ミレナがずっと邪魔してきてほんとにうざい。私のための物語で有理くんだったのに。


「あーもうほんとにうざい、るいくんもどっか行っちゃったしつまんないの」


学園の中でも美人な私の周りには自然と人が集まったし、少し頼れば男達はなんだってしてくれた。ちょっと猫撫で声を出して甘えてみる、それだけで優しくしてくれるんだから可愛いって正義だよね。クラスのギャルたちがやってたみたいにするだけで男を操れちゃうんだからほんとにイージーモード。それなのに唯一好きな男の子だけは落とせないなんて本当に最悪だよ。なんかチートアイテムでも作っておくんだった、恋愛ゲームみたいに惚れ薬みたいなものとか。そんなの作ってないんだよなぁ、途中で車に轢かれちゃったからまだまだ書ききれてなかった設定も多いし。悪役令嬢が断罪される、みたいなエピソードだけは書いてなくてよかった。


まあでも悪役令嬢って言っても私はエレノアじゃないしなあ。ミレナのことを虐めてる訳でもないし、ちょっと生意気だから悪口を言うくらいで断罪されるようなことはしてないもんね。そんなことを考えていたせいかミレナが向かいから歩いてきた。今一番見たくない顔なのに、ちょっと可愛いからって調子に乗って有理くんに媚びててほんと最悪。その癖何かと私にも話しかけてきて何考えてるのかよく分かんない。目が合うとにこりと微笑みかけてくる、こっちからしたら煽られてるようにしか感じない。どういうつもりでそんな顔してんのよこの女、腹立つから足でもかけてやろうかな。そう思っただけのはずが無意識に足を引っ掛けるように動いてしまった、突然足を取られたミレナはきゃっと小さな悲鳴をあげてその場に転んでしまう。そんなつもりなかったんだけどなあ、と思いながらも内心では喜んでいた。


「ミレナ!」


視界と意識の外にいたその人には声が聞こえてくるまで気が付かなかった、ミレナよりも後の方から追ってきていたのだろう。転んだ彼女に向かって走ってきたのは愛しい有理くん。でも彼は私に見向きもせずに地面に転がる薄汚い女の元に駆け寄っていく、自分の洋服が汚れることも気にせずにその場に膝をついてこの女を起き上がらせるために手を差し伸べて。少しだけ絵になると思ってしまったのが本当に悔しかった。だって私が有理くんに合うように可愛い女の子を用意したんだから、そんなの当然なの。現実とは違って有理くんと一緒に居た時にお似合いだねって言われるように、それなのになんで私はヒロインじゃなくてこんな見た目だけの女になってなんの力もなくて……。


「大丈夫?」

「はい、大丈夫です」


心配そうにミレナの顔を見る有理くんは本当に愛しいものを見るような顔をしていた、あの顔は見た事がある。クラスの中でも一番の美少女で有理くんの彼女のあの子を見てた時と同じ顔。すごく嫌な気持ちだった、自分が作った世界ですら自分の思うような地位を得られない。見ず知らずの親は家に居ることの方が少ないからこそ、いつまで経っても慣れやしないし仲良くもない。いつもどこか一人で居るような感覚、取り巻きの連中は機嫌を伺うばかりで一緒に居ても価値がない。腹が立つ。


「有理くん」

「エレノア様、なにかご用ですか」


私にはいつもこうだ、ミレナにはあんなに砕けて話してるのに絶対に敬語を崩さない。明確な線引きをされて距離を置かれてるのが分かるこの感じはすごく嫌だ。だから強引にでも私に惚れさせてやるんだってなんでもしてきた、体を寄せて甘えて好意を伝えて。それなのに有理くんは少しも振り向いてくれないから、もっと距離を縮めようとする。今日も体を寄せて腕に胸を押し付けるようにして甘えてみせた。


「そんなつれない態度取らないでください、寂しいです」

「失礼……。何度も伝えてますが、私には立場がありますので申し訳ありません」

「その女はいいのにですか」

「ミレナとは教会の仕事のことがありますので」


ゆっくりと避けられる。エレノアの胸はそんなに触り心地が悪いわけ?こんな事なら胸だけは私の体の方がよかったな。ミレナもなにか言おうとしていたから睨み付けて黙らせる。今は私と有理くんが話してるんだから入ってくんな。大体教会がなんなのよ、孤児院の設立をしたら後はお金を入れて終わりでしょう。そんな何度も何度も顔を出して子供の面倒まで見てるのかな、よくわかんない慈善活動なんか辞めて私とデートしてくれればいいのに。子供と遊んでる時間があるのなら絶対自由な時間が沢山あるのに。


「エレノア様申し訳ありませんが、ミレナが怪我をしてしまっているので私は保健室に同行します」

「えっ!いけません、ユウリさま。このくらいならわたくしは大丈夫ですので」

「ダメだよ、少しの怪我でも何かあったらどうするんだ」

「ですが……」

「そういう事ですので、私共はこちらで失礼します」


こちらの返事も聞かずに私の目の前であろう事か、この女を抱きかかえて所謂お姫様抱っこで颯爽と去っていく彼。腹の底から怒りが湧いた。これが少女漫画の世界だったら、扉絵になりそうな理想的シチュエーションでライバルが大切にされてるのを見せられるなんてどんな屈辱なの。なんの力もない私には八つ当たりをすることも出来なかった、ただ不機嫌を露わにして歩くだけ。触らぬ神に祟りなしということかこういう時は取り巻きたちだって寄ってこない。こんな時に決まって来るのは一人だけ。


「エレノア」

「るいくん、どこに行ってたの」

「ごめんね、少しやりたい事があって」

「それって私よりも大切なの」

「ううん、エレノアの方が大事だよ。だから迎えに来たでしょ」


いじけた顔をしたら有理くんがミレナに向けるような愛しい表情を見せてくれる、そのまま頭だって撫でてくれる。るいくんだけは私に対して臆すること無く色んな感情を向けてくれる。こうやってイケメンに愛されるのってほんとに気持ちいいな、このままハーレムでも作れたらいいのに。るいくんのことは好きだけど有理くんには正直劣る。どうして私が好かれてるのはるいくんなんだろう、エレノアとるいくんにそんな関わりあったかなあ。でもそんなこともうどうでもいいよね、だって愛されてるってことはそういう事でしょ。あの時声を掛けといてよかったな、あれからるいくんが私に好きだって行動で示してくれるようになったし。これからも存分に利用させてもらって、有理くんと結婚したら愛人にしようかな。るいくんなら喜んでなってくれそうだし。


「るいくんはずっと私のそばに居てね」

「もちろん。だからエレノアもどこにも行かないよね」

「うん。ずっと居るよ」


そう言って微笑むとるいくんの表情が少し怖く見えた。有理くんのこと追い掛けてるから怒ってるのかな。今まで怒ったことないのに嫉妬だけじゃ済まなくなってきた?なんて考えもしたけど、すぐに笑いかけてくれたから気のせいだったみたい。


「そっか。ありがとう、ずっと一緒にいよう」


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