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10話 絡まり結ぶ糸


驚いた。彼女のことは知らないけれど、エレノアだとバレないようにしようとしていたのは知っていた。それが本人ではないからだとは思わなかった。正確にはエレノアであってエレノアではない……か。一緒に行動をしてみて噂とは全然違う人間だったからまさかとは思ったけれど、姉妹ですらない赤の他人だったなんて。“エレノアだとバレないように、ノアとしてのアピールもしていかないと”って言っていたのはそういう事か。ノアとしてやりたい事があるのか、それともノアとして新しい生活を始めようとしているのか……。彼女の事だからそんな平凡な事ではないんだろうな。なら、やっぱりエレノアに一泡吹かせようとしているのかも。それから、マナは物に干渉する力かな。この指輪をすぐに見つけられたのもなんらかの干渉をしたからだろうし、ずっとその力を見ているのに僕には何も分からないということは、やっぱり彼女にしか分からない何かがある。平凡じゃなくてすごく面白い、興味あるなあ。話しながらずっとそんな事を考えていた。


最後の依頼を片付けて彼女と共にギルドに戻ってくる。今回指輪を盗まれたのは本当だけど、本当じゃない。盗ませて売らせた。というのもギルドで依頼を出すことで面白い人間に会えるかもしれないと思っていたから。こんなにもすぐ探していた人物に出会えるとは思わなかったけれど悪徳な商売を辞めさせることも出来たし、この国にとっても悪い事ばかりではなかったんじゃないかなと思う。まあ隣国のことなんて僕には関係ないですけどね。彼女のこともまだまだ観察して見極めたいと思っている。ギルドに報告をして報酬を受け取っている彼女をただ眺めていたら、その内の一部を差し出してくるので瞳を丸めてしまった。


「シャル。これを受け取って」

「受け取れませんよお金なんて」

「でも手伝ってくれたじゃない、何も渡さないなんて私も気になるわ」

「僕だって依頼主じゃないですか、ノアさんだって入り用でしょう」

「ダメよ、受け取りなさい」


押しが強い……、渋々受け取ると満足そうにしている。変な人。自分の取り分が減ったのにこんなに充足感を感じられるものなんだな。困ってはしまったものの渡されてしまったものは仕方ない、貰ったお金を懐にしまう。


「じゃあここでお別れね」

「そうですね、じゃあ。またどこかで会えたら」

「ええ、さようなら」


ギルドの外に出て別々の道を行くことになった。半日程度だけれど一緒に過ごしていたことで彼女のことがだいぶ分かった気がする。根は真面目だろうし人として当然の良識もある、少しお人好し過ぎる所もあるけれど譲れないところは譲らない。そういう強い面もあった。かなりいいな理想的かもしれない。


「フィンはいつまでそうやって隠れてるんですか」

「げっ。いつから分かってたんですか」

「僕とノアさんが会った時からですかね」

「最初からじゃねえですか、ほんとに人の事弄ぶのやめてくださいよ!」

「だって、フィンまで居たらノアさんに警戒されちゃうじゃないですか」

「俺だってシャルレイ様のこと心配して探してたんですけど……」


このうるさい人はフィンと言って僕の護衛だ。怒ったり笑ったり泣いたり、感受性の豊かな分かりやすい人。まあ悪い人間じゃないことだけは保証されているし、だからこそ僕も傍に置いている。勝手に着いてくるからっていうのもあるけど。僕から数歩離れたところで文句を言う彼に呆れたような表情を見せる。


「そもそも心配だなんだって言うならその距離感どうにかしてくださいよ」

「いやだって、シャルレイ様勝手に人の心読むじゃないですか」

「人聞きが悪いなあ、勝手に読めるだけですよ」

「制御できる癖に……」

「大体、フィンの場合は読まなくても分かりますよ」

「えっ、まじっすか」


自覚がないところもこの人の面白い所と言うべきか。この人と僕はいわゆる幼なじみというやつだ。今でこそ軽口を叩き合う仲だがあの頃はそんなに関わりもなかった。それが変わったのはあの日フィンが僕を守ってくれたことにある。


僕のマナは、ノアさんと同じで特殊なマナだった。一般的な人が持っている単調なマナと違って特殊な状況下で力を発揮する。それが相手に触れた時に心が読めるということ。今は一定の距離にいればある程度心を読めるほどになったが、あの頃は完全に触れていないと分からなかった。だからこそ、誰かに触れた時に流れ込んでくる浅ましい感情や権力に媚びへつらった気持ち悪さが嫌で嫌で仕方なくて孤立していた。


僕はあの国の王子だから。


権力に群がってくる虫のような奴らに仲良くするなんて選択肢はなかった。近付いて来たかと思えば浅ましい狙いで姫の椅子を狙っていたり、王子の友達という特別な椅子を取り合う猿のような連中ばかり。だからこそ毅然として人を寄せ付けずに居たら腹を立てた奴らに連れ出された。自分の身を守る程度の能力は身に付けているけれど、適当に殴られてこいつらのことをどうにかしてやろうかとでも思っていたあの日。この人は現れた。


「友達になりたいなら真っ向からぶつかれよ!」


その言葉は僕にも刺さった。そう言って僕を助け出した彼は誰かに武勇伝として語るわけでもなくただ本当に僕のことを助けて、これも何かの縁だから友達になろうと言ってのけた。その心に嘘も偽りもなかったのがその時差し出された手でわかった。後々分かった事だけれどフィンは本当に僕の立場も何も知らずに、たまたま見かけて困っているんじゃないかと思って助けただけだったらしい。本当に訳が分からなくて面白い人だなってその時に思ったのを覚えている。


あれからフィンのマナのことも知って傍に置くことにした。フィンは誰かを守る時にその力を存分に発揮するマナだ。王子の護衛なんてピッタリな仕事だからこそ、僕が提案して僕の傍に置くことにした。そうして、フィンを連れてこの国に来たのは面白い人を探すため。


「それで、そのノアさんって人のこと随分気に入ってませんでした?」

「どっちだと思います?」


フィンも当然さっきまでずっと傍にいた、僕を守る名目に置いて彼に隙はない。気配を消すことだって出来るし並大抵の人ではその気配を感じる事は出来ないのだからノアさんにもバレていないはず。それに見ていたなら分かるだろう。


「そりゃあもう、お気に入りだったでしょう」

「あは。分かりました?」

「あんな分かりやすく一緒に居たらさすがの俺にも分かりますよ、そもそもシャルレイ様気に入らないと無視するじゃん」

「興味のないことに使う時間ほど無駄な事はないですからね」

「こっわ。それでどうするんですか、連れて帰るんですかあの人」

「まあ、彼女の気が済んだら連れて帰りましょうか」


ノアの知らない所で話は進んでいく。そんなことが起きているなんて当然知りもしない、渦中の女は武器屋に来て今後依頼などで扱うための武器を選んでいた。出来ることなら自立稼働してくれる武器がいいのだけれど、そんな年季の入った物も見当たらないのよね。大体、自分で使って想いを込めない限りは自立稼働させる程の強さにはならないかしら。そしたらやっぱり握りやすいダガーとかがいいかも、これくらいなら自分でも扱えるはずだし敵とも十分戦えるはずだわ。


「よし、これにしましょう」


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