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エッセイアラカルト

気付けるヒントがあったのに、どうして気付けなかったんだ

作者: 降井田むさし
掲載日:2023/10/20

自転車で50分弱、漕いで行った。

オープンしたばかりの、ディスカウントストアに。

夏の自転車は、疲れるものだ。


それが、脳を鈍らせたのかもしれない。

暑い中を、ずっと休まず漕いだ。

だから、きっと気付けなかったんだ。

あんな、分かりやすいことに。


運動をせず、疲れていない状態。

しかも、冷房室に30分入り浸った後。

そんな脳なら、気付けたはずだ。

普通なら、気付ける程度のやつだ。


坂を、いくつ越えたことか。

何回、立ち漕ぎをしたことか。

何回、虫が顔に体当たりしたことか。

何回、水が欲しいよ、と思ったことか。


自転車で、何度、よろめいたことか。

自転車で、何度、まだかぁ、と思ったことか。

それでも、乗り越えてきた。

でも、乗り越えられない壁もあるのだ。

世の中には、色々あるから。




ディスカウントストアに着いた。

そこで、野菜を買った。

お菓子を買った。

飲み物を買った。

他にも、色々買った。


Tシャツが、399円。

かなり、安すぎる。

それを、2つ買った。

すぐに決まった。


速乾Tシャツが、安い。

それだけで、買った。

即断即決だった。


即断即決、速乾Tシャツ。

即断即決、速乾Tシャツ。

即断即決、速乾Tシャツ。


3回、繰り返してしまった。

早口言葉みたいに、なってしまった。

いや、違うかもしれない。

決して、言いにくくはないから。


特に何も考えず、買っていた。

安いものを買うとき、そんなに勇気はいらない。

スッと、手に取って買ってしまう。


399円も積もれば、山となる。

399円も積もれば、山となる。

それなのに、簡単に買おうとしてしまう。

それは、あまりよくない。

そこは、改めないといけない。

ただ、そのTシャツが今、大活躍していることは、間違いない。



買うとき。

セルフレジ。

そこしかなかった。

人がいるレジが、ひとつもなかった。

普段も、セルフレジがあれば利用する。

だから、抵抗なく、レジを開始した。


買う予定のTシャツから、ハンガーを取る。

そして、スキャンして、エコバッグに入れる。

そんな簡単なことが、出来なかった。

どうしても、出来なかった。


不器用なのか。不器用なのか。

僕は他の人より、不器用なのか。

そう思ってしまった。

でも、針に糸を毎回、5秒以内に通せる男だ。

ハンガーなんて、普段は簡単に外せるのに。


なのに、ハンガーでつまずいた。

ハンガーで、つまずいてしまった。

Tシャツから外したハンガーを、床に落として。

それに、つまずいたのではない。

そんな、ドジはしない。

ハンガーで、行き詰まった。

それだ。


困っていたら、店員さんが来てくれた。

そして、Tシャツから簡単に、ハンガーを外してくれた。

やはり、僕が不器用だったのか。

さすが、店員さんだな。

それくらいで、そのあと、特に気にすることはなかった。






数日後、そのTシャツを着る時が来た。

着ようとした。

首を先に入れて、着ようとした。

おかしかった。

いつものTシャツと、違う感じだった。

通らない。

押しても押しても、通らない。


丸首Tシャツだった。

しかも、頭が通らないほどの細い穴。

僕は頭の大きさには、定評があるけど。

普通の人でも、通らないと思う。

マスクに顔を、飲まれそうになっているようなアイドル。

そんな人なら、通るかもしれないが。


ハンガーが抜けなかった。

なかなか、外れなかった。

それが、頭の入口が小さいよ、というヒントだったのだ。

そこに、気付けなかった。


よく気付くね。

そんな言葉ばかり、投げ掛けられた少年時代だった。

それしか取り柄がない、人間だった。

だから、今回気付けなかったのは、悔しい。


安いだけで、買おうとしてしまった。

首部分の形状も、穴の大きさも見ずに、買ってしまった。

速乾、地味色、激安、の3つが揃った時点で決めた。

他の重要であろう部分を見ずに、買おうとした。


失敗した。

ずるずると、引きずるくらいの過ちだった。

ほぼ安さで、決めてしまった。

女子高が共学になって、男子が入ってきた。

だけど、男子がそれほど入って来なかった。

そんな高校、みたいな感じだ。

女子が安さ、男子がその他みたいな感じだ。違うか。


Tシャツは着れるかどうかが、一番重要なのに。

そこを見ていなかった。

着られなかったら、399円を海に投げ捨てるようなものなのに。

海にお金は、絶対に投げ捨ててはダメだ。そうだ。

399円を捨てるようなものなのに。

そこを、全然見てなかった。


なんとか、着られた。

Tシャツがなんとか伸びて、助かった。

それが、救いになった。


頭が大きいと、脳も大きくて、頭の回転も良くなる。

その反面、入口の小さい丸首Tシャツは、着れなくなる。


頭の回転がいいはずなのに、鈍くなって、入口の小さい丸首Tシャツを買ってしまった。

頭の回転がいい人が、回避できる入口の小さい丸首Tシャツを、回避できなかった。

ジレンマというやつか。

ジレンマという言葉が、ピッタリくるかは分からないが、そんな感じだ。


視野が狭かった。

ほぼ、ひとつのことしか見えていなかった。

どのくらい狭かったかというと、その丸首Tを着ようとした時に見える、景色くらいだ。

ほぼ見えない。

穴が小さすぎるから。


今後、同じようなことを、起こさないためには、どうしたらいいか。

考えようと思う。

一番大事なことは、きっと何のために買うかだ。

買う一番の目的を考えれば、気付けるはずだ。


人生は謎解き。

そんな感じで、これからの人生を過ごそうと思う。

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