7 崩壊
別れの言葉はもう言った。
帰ろうと立ち上がると、親父さんが肩をつかみ止めに入った。
「待て!明どういう事だ!」
「どういう事も何もそのままです。京香とは別れます。」
「ふざけんな!お前だから京香を任せたんだ!それをこんな事ぐらいで別れるとは何だ!」
「ふざけてんのはそっちだろ!俺は我慢してたんだ!
けど、どうしても京香と付き合っていくのが不安になって、不安でどうしようもなくて、
少しでも彼氏としての自信が欲しくて、京香にキスしようとしたら俺は引っ叩かれたんだよ!
それをたかがキスで済ませんのかよ!彼氏の俺がダメで何であんな奴が簡単にキス出来んだよ!」
俺の言葉を聞いた親父さんはうろたえたようで掴んでいた肩を放した。
「京香、本当なの?」
お袋さんが京香に尋ねる。
「だって、明と別れたくなかったから!お父さんとお母さんと約束してたから!私だってキスしたかった!」
京香の言葉を聞き、京香の両親が黙り込む。
「…スマン、あの約束は心構えみたいなものだと思ってしたものだ。約束をしたからといってどうせ守らないと思っていた。」
「そうね。私たちはそんなに重く考えてはいなかったわ。でも京香は真に受けてしまったのね…。ごめんなさい。」
「えっ?そんなのわかんないよ!今まで約束破ったらすごく怒ったじゃない!」
「そうだったか…。いやこれは俺たちが悪いな。申し訳なかった、明、許してくれ。」
「もういいです。どっちにしろ、俺たちの問題ですから。それで、俺は気持ちが無くなりました。なので別れたいです。」
「ちょっと待って!どうして?!あれはアイツが悪いだけだよ?キスしたくてしたんじゃないよ?!」
「わかってるけど、それ以外にも色々あっただろ?アイツと2人きりにならないって約束も破ってるし。」
「だって!しつこかったから!今日で最後にするって言ってたから!」
「あと付き合うということに対しての価値観が違いすぎると思う。」
「それはちゃんと話してくれれば直すよ!それに、もうキスだって出来るよ!お父さん、お母さんもいいよね?」
「あぁ、一般的な節度を守ってくれれば俺たちはもう何も言わない。明、考え直してくれないか?」
「…多分無理です。あの場面を見ちゃってから京香の事大事だって思えないんです。」
「嫌ぁ!嫌だぁっ!お父さんとお母さんのせいだ!なんであんな約束なんかさせたの?!」
「京香…。ごめん、ごめんね。」
「明と別れるぐらいなら約束なんて守らなきゃよかった!どうしてくれるの?!」
「京香、悪かった許してくれ…。」
「すいません、帰ります。」
「待ってよ、明!本当にもう駄目なの?!」
「ごめんな、京香。いままでありがとう。もう学校も別々に行こう。」
「ヤだよ明!嫌ぁぁぁぁぁ!!」
京香の家を後にした。