6 事故?
俺は走ることも声を出すことも出来ずにいた。
なんだ、この絶望感。とても大事にしてきた宝物がただのゴミになったような…。
暫く呆然としていると話し声が聞こえてきた。
「どうしてこんな事するんですか?!私まだ明ともキスしたことないのに!」
「それは君が彼氏君の事を大して好きじゃないからだろ?」
「違います!ウチは厳しいから出来なかっただけで…。」
「そうかな?いくら親に言われていたからって本当に好きなら気持ちを抑えられなくなるものだと思うよ。僕のように。」
「私はっ!…えっ?!明?!」
ここにきてようやく俺に気づいたのか…。
「えっ?!見てたの?違うの明!これはこの人が勝手に!」
「何で一緒に帰った?」
自分でも驚くほど低い声が出た。
「そ、それはこの人がしつこいから!断り切れなかっただけなの!」
「何で俺の時みたいにソイツを引っ叩かなかった?」
「き、急だったから!びっくりして!こんな人だとは思わなかったの!」
「ははっ。彼氏君は引っ叩かれたのかい?」
「何笑ってるんですか?!アンタなんか関係ない!帰って!帰ってよ!!」
「何を騒いでるんだ?京香か?」
京香の親父さんが出てくると、生徒会長はダッシュで逃げていった。
「なんだ?あの男は?京香と明じゃないか。何の騒ぎだ?」
「お父さん…。」
「…こんばんは、おじさん。」
京香の家に上げられ、京香の両親と俺と京香で話をすることになった。
京香がこれまでの事を説明するのをぼんやりと聞いていた。
「許せねぇなあの野郎。ウチの京香を…。明、京香を慰めてやってくれよ。頼むわ。」
「…。」
「明、どうした?まぁショックだろうが、たかがキスだ。そんなに気にすることもねぇよ!」
たかが…?たかがキスだと?俺が不安になってどうしてもしたくて、それでも拒否された…。キスだぞ?
「京香とは別れます。いままでありがとう、さよなら。」