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熟女の神様とオッサンだらけ

-- 前回までの『スナッキーな夜にしてくれ』 --


 ユリコママのグッとくるような“おもてなし”とシモシモなネタにすっかり気分が高揚しまくる常松。


 しかし、隣の店の“茶~さんのあれ”的な話題を振られてしまい、すっかりエロオヤジーに格下げ寸前の常松。

 そんな彼に勝機は生み出せるのか?

 否、勝機って何だ?  『正気』の間違いなのでは?


 そして、最早、この得体のしれないビルの消えたエレベーターの謎について、作者はどう考えているのか?

考えていないっぽいのだがバレバレだが・・・。


 そこはツッコミを入れないで欲しい状況だが、常松のどーでもいい状態の思考は、『正気』を取り戻せるのか!?


 エロオヤジーと化した常松の運命やいかに!



▽ ▼ ▽ ▼ ▽


 茶~さん※1を彷彿とさせるドリフのあれ的な『熟魔女バー』の看板の話題が思わぬ方向へ転がってしまい、すっかり“どすけべ野郎”の称号を与えられそうになってしまう常松。

※1・・・ドリフのあの人


 必死に抵抗を試みる常松に、なおもユリコママの三段逆スライド攻撃が襲いかかる。


「お隣のお店の名前LLって……たしかにどんな意味なのかしらね。それでぇ〜? どんないやらしい意味だと思ったの〜?」


(いやいや、どうしてLLがいやらしいことに結びつくんだよ)


「ホント、いやらしいとは思ってませんって!」

「男なんだから仕方ないわよね♡ 特に常松さんってエッチィな妄想が得意って感じですから~」


「だからー! LLなんて妙な名前でエッチな妄想とかしませんよ! っていうか、あれじゃあ出来ませんよ!」

「そんなこと言って〜♡ LLって聞いて変なところが反応しちゃってるんでしょ~?」


(えっ!………まあ、確かにさっきの雰囲気ではテンションがマックスしかかっていたからなぁ……)


 乾杯の時にマックスになってしまっていた常松は声が小さくなる。


「……なってませんよ」


(なんなんだ、この攻撃は! あっ、もしかしたら、さっき? ……ん? さっきといえば……さつき(・・・)? いやいや、五月? もしかしたら、さっき“●月み●り※2”の歌をディスったことで熟女の神様の怒りを買ってしまったのかもしれないぞ)

※2・・・大女優の五●みど●さん

 

 そんな神様なんかは聞いたこともないのだが、とにかく常松は五●さんに申し訳ないと思いつつも、話の核心に入る。


「LLって、普通は洋服なんかのサイズだと思うじゃないですか。だから、お店のスタッフがみんなそういうサイズの女性ばかりなのかなーとか思ったりしたわけですよ」


「それってやっぱり、肉感的なダイナマイターズ♡ のお姉さまたちに揉みくちゃにされたい的な~」


「―――ダイナマイターズって……」


「そういうふうに思いますもんね~♡」


「いや………それは思ってませんでしたよ」


(いかん! LLの話題を変えないとマズイぞ! このままだと“どすけべ”のレッテルを未来永劫まで貼られてしまう。熟女の神様~、助けてください。お願いしまーす!)


 常松は、居もしない熟女の神様に願いを込めると、思い切って他の店の話題に切り替えた。


「それはもういいとしてですね、やっぱり一番妙な名前の店は、『居酒屋漢だらけ』ですかねー」


「あら~、どこが妙な名前なのー? 男だらけなんて素敵じゃないですか」


「ええーっ! あれが素敵……ですか?」

「イイ男がいっぱいいるのかな♡ って想像しちゃうでしょ♡」


(いやいや、赤い三連星しかいないんだけどな………でも、熟女の神様ありがとう!)


 常松は、間一髪のところで話題のすり替えに成功すると、さらに続けて述べる。


「確かに、女性はそういう想像をするものかもしれませんね。でも、男の俺からすれば、なんだか暑苦しいような、ムサ苦しいような、そんなイメージになるんですけど」

「あら、そういうものなのかしら」


「昔、まだ社会に出たばかりの頃だったかなー、嫌~な思い出があるんですよ」

常松はムサ苦しい思い出に顔を歪めさせた。


「そんなに嫌~~なことがあったの~」


「実は上司に誘われて商業ビルの屋上にあるビアガーデンに連れて行かれたことがあるんですよ」


「あら~、夏の風物詩って感じで素敵じゃないですか」

「いやいや、それが全然、素敵じゃあなんですよ!」


 なおも顔を歪める常松が続ける。


「その頃のビアガーデンって、そりゃあもうリーマン天国というか、白いワイシャツを着たオッサンだらけで、おまけに凄い混雑していたから、おじさんのイモ洗い状態で両サイドからおじさんの肩がぶつかるような状況だったんですよ。屋上だからって涼しい訳もなく、蒸し厚い中にオッサンが犇めき合って酔っぱらっちゃっているあのムサ苦しい光景は、まさに地獄絵図でしたよ!」


「うえぇぇ~、それは想像しただけでムサ苦しいわよね~」


「そうなんですよ! おわかりいただけましたかあ! なんて言うか、いらない男の息吹みたいなものが渦巻く空間とでも言うんですかねえ。もう二度と行きたくないって思わされたんですよ」


「でも、ビアガーデンだからってOLさん達だっていたでしょ~?」

「いやいや、OLらしき人もいるにはいたけど、オッサン集団の中にポツンポツンと忘れた頃にいるような状況で、オジ山の中に埋もれちゃっているような状態でしたよ」


「―――――それは、災難だったわね~」


「まさに“オッサンだらけのビアガーデン”だったから、まだ若かった俺には拷問のようでした」

「うわ~っ! そういうフレーズにすると、何かゾワゾワしてきますね~」


「“女だらけの水泳大会”だったらどんなに良かったことかと思ってましたよ。だから“漢だらけ”という看板はキツイんですよ!」


「そんなどーでもいいようなトラウマがあったんですね~。常松さんったら、本当に地獄でも見てきたかのような表情で話すからとっても臨場感があったわよ~♡ 確かにイケメンに囲まれたら嬉しいけど、その辺のおじさんばかりに囲まれたら私も逃げ出しちゃうかも~」


「どーでもいいトラウマ......って! まあ、女の人にはわからないかもしれませんけどね」


「でも、居酒屋さんのネーミングの話題が、随分とドイヒーな話になっちゃいましたよね~」


「しょーーーもない思い出話なんかですみません」

「本当にしょーもないですわねえ~♡」


(.........その言い方.........)


 と、気を落とした常松は、どーでもいい過去の話を終えると腕時計を見た。

 時間はすでにてっぺんに近づこうとしている。もうすぐ日付が変わろうとしていた。


「あ~ぁ、もうこんな時間になっちゃったか~」


 常松の台詞に誘導されるようにユリコママも時計を確認すると、突然、表情が険しくなる。


「あら、いけない! もうこんな時間だわ!」


 常松は急に語気を強めたユリコママに反応する。


「もしかして、そろそろ閉店の時間ですか?」


「そういう訳ではないんだけど…………今からちょっと大事な話をするわね」


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