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熟女の神様とオッサンだらけ

 -- 前回までの『スナッキーな夜にしてくれ』 --


 ユリコママのグッとくるような“おもてなし”とシモシモなネタにすっかり気分が高揚しまくる常松。


 しかし、隣の店の“茶~さんのあれ”的な看板の話題を振られてしまい、すっかりエロオヤジーに格下げ寸前の常松に勝機はあるのだろうか?

否、勝機って何なのだろうか? 『正気』の間違いなのであろうか?


 そして、最早、この得体のしれないビルの消えたエレベーターの謎については、どーでもいい状態の思考は『正気』を取り戻せるのであろうか!?


 エロオヤジーと化した常松の運命やいかに!



▽ ▼ ▽ ▼ ▽


 スナック亜空間は、常松にとって居心地の良い、飲み心地も最高の空間に思えるのだが、掴みどころのない美人ママのユリコに少々翻弄されていた。


 伝説の茶~さん※1を彷彿させるドリフのあれ的な『熟魔女バー』の看板の話題が思わぬ方向へ転がってしまい、すっかり“どすけべ野郎”の称号を与えられても何も文句は言えない常松。

※1・・・ドリフのあの人


 飲み始めのうちは、大して働かない常松の理性がしっかりと働いていたものの、徐々に威力を増すユリコママのちょいエロ攻撃によって、元々大したことのない理性は限界を迎える。

それでも必死に抵抗を試みる常松と常松のお粗末な理性。それを打ち砕くユリコママの三段逆スライド攻撃が襲いかかる。


「LL…たしかにどんな意味なのかしらね。それでぇ〜? どんないやらしい意味だと思ったの〜?」


(いやいや、どうしてLLがいやらしいことに結びつくんだよ)


「ホント、いやらしいとは思ってませんって!」

「男なんだから仕方ないわよね♡ 特に常松さんってエッチィな妄想が得意って感じですから~」


「だからー! LLなんて妙な名前でエッチな妄想とかしませんよ! っていうか出来ないって!」

「そんなこと言って〜♡ LLって聞いて変なところが反応しちゃってるんでしょ~?」


(えっ!………まあ、確かに違うことではテンションがマックスしかかってたなぁ……)


 乾杯の時にマックスになってしまっていた常松は声が小さくなる。


「……してませんよ」


(なんなんだ、この攻撃は! あっ、もしかしたら、さっき? ……ん? さっきといえば……さつき(・・・)? いやいや、五月? もしかしたら、さっき“●月み●り”の歌をディスったことで熟女の神様の怒りを買ってしまったのかもしれないぞ)

 

 そんな神様なんかは聞いたこともないのだが、とにかく常松は五●さんに申し訳ないと思いつつも、話の核心に入る。


「LLって、普通は洋服なんかのサイズだと思うじゃないですか。だから、お店のスタッフがみんなそういうサイズの女性ばかりなのかなーとか思ったりしたわけですよ」

「それってやっぱり、肉感的なダイナマイターズ♡ のお姉さまたちに揉みくちゃにされたい的な~」


「―――ダイナマイターズって……」


「そういうふうに思いますもんね~♡」


「いや………それは思ってませんでしたよ」


(いかん! LLの話題を変えないとマズイぞ! このままだと“どすけべ”のレッテルを本格的に貼られてしまう。熟女の神様~、助けてください。お願いしまーーーす!)


 常松は、熟女の神様に願いを込めると共に、思い切って他の店の話題に切り替えた。


「やっぱり一番妙な名前は、『居酒屋漢だらけ』ですかねー」


「あら~、どこが妙な名前なのー? おとこだらけなんて素敵じゃないですか」


「ええーっ! あれが素敵……なんですか?」

「イイ男がいっぱいいるのかな〜♡ って想像しちゃうでしょ♡」


(赤い三連星しかいないんだけどな………でも、熟女の神様ありがとう!)


 常松は、間一髪のところで話題のすり替えに成功すると、さらに続ける。


「確かに、女性はそういう想像をするものかもしれませんよね。でも、男の俺からすれば、なんだか暑苦しいような、ムサ苦しいような、そんなイメージになるんですけど......」


「あら、そういうものなのかしら」


 常松は赤い三連星の出現によって、その昔に体験したメチャクチャむさ苦しかった記憶が蘇っていた。


「実は、まだ社会に出たばかりの頃だったかなー、その当時の嫌~な思い出があるんですよ」

常松はむさ苦しい思い出に顔を歪めさせて語り出す。


「そんなに嫌~~なことがあったのですかあ」


「実は上司に誘われて商業ビルの屋上にあるビアガーデンに連れて行かれたことがあるんですよ」

「あら~、夏の風物詩って感じで素敵じゃない」

「いやいや、それが全然、素敵じゃあなんですよ!」


 なおも顔を歪める常松が続ける。


「その頃のビアガーデンって、もうリーマン天国というか、白いワイシャツを着たオッサンだらけで、おまけに凄い混雑していたから、おじさんのイモ洗い状態で両サイドからおじさんの肩がぶつかってくるような状況だったんですよ。屋上だからって涼しい訳もなく、蒸し厚い中にオッサンが犇めき合って酔っぱらっちゃっているあのムサ苦しい光景は、まさに地獄絵図でしたよ!」


「うえぇぇ~、それは想像しただけでムサ苦しいわよね~」

「そうなんですよ!」


「でも、ビアガーデンだからってOLさん達だっていたでしょ~?」

「いやいや、OLらしき人もいるにはいたけど、オッサン集団の中にポツンポツンと忘れた頃にいるような状況だったから、オジ山の中に埋もれちゃっているような状態だったんですよ」


「―――――それは、災難だったわね~」


「まさに“オッサンだらけのビアガーデン”だったから、まだ若かった俺には拷問のような状況でしたよ」

「うわ~っ! そういうフレーズにすると、何だかゾワゾワしてきますね~」


「“女だらけの水泳大会”だったらどんなに良かったことかと思ってましたよ。だから“漢だらけ”という看板はキツイんですよ!」


「そんなどーでもいいようなトラウマがあったんですね~。常松さんったら、本当に地獄でも見てきたかのような表情で話すからとっても臨場感があったわよ~♡ 確かにイケメンに囲まれたら嬉しいけど、その辺の増殖系おじさんばかりに囲まれたら私も逃げ出しちゃうかも~」


「どーでもいい......って! まあ、女の人にはわからないかもしれませんけどね」


「でも、居酒屋さんのネーミングの話題が、随分とドイヒーな話になっちゃいましたよね~」


「しょーーーもない思い出話なんかしちゃってすみません」


 そう謝った常松は、どーでもいい過去の話を終えると腕時計を見た。

 時間はすでにてっぺんに近づこうとしていた。もうすぐ日付が変わろうとしている。


「あ~ぁ、もうこんな時間になっちゃったか~」


 常松の台詞に誘導されるようにユリコママも時計を確認すると、突然、表情が険しくなる。


「あら、いけない! もうこんな時間だわ!」


 常松は急に語気を強めたユリコママに反応する。


「もしかして、そろそろ閉店の時間ですか?」


「そういう訳ではないんだけど…………今からちょっと大事な話をするわね」


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