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ドリフのあれ

 郷に入れば郷に従うということもある。それはもちろん、郷ひ○みに従うわけではない。


 せっかく貸し切り状態のお店なのだから、しばらく楽しんだ方が得策だと悟ったまでは良かったが、すっかりママのペースにはまってしまい、鼻の下を伸ばしまくりながらイイ気分で飲む常松はまさにそんな心境であろう。


 消えたエレベーターの謎よりも、ユリコママの殺し文句にテンションが富士山の八合目くらいまで上がってしまい、浮かれに浮かれて最高の気分を満喫しまくっている。


 イイ感じにお酒も入って、ユリコママのシモネタも心地よく聞こえてくる。


 初めて入ったお店なのに、初体験とは感じさせないママの笑顔と振る舞いによって、下半身のテンションまでマックスになりつつあった。

 

 しかし、こんなところで色んなところがマックスになっている場合ではない。


 常松は芋焼酎のロックを3杯ほど飲み干して、調子も良くなってきたので話題を変えてみる。


「このフロアのお店って、ちょっと変わった名前の店が多いですよね」


「やっぱりそう思いますぅ? ちなみに一番変わってると思ったのは、どのお店かしら?」


(やっぱりって……ママもそう思ってるんだ)


「一番って言われると難しいなー。どの店も個性的というか、あんまり聞かないような店名ばかりですから」


「うちのお店の手前に“アイアンヘッド”ってお店があったでしょ~」

「あー、ありましたね。確かヘビメタBARでしたっけ」


「そうそう、ヘビメタスタイルのBARなんだけどね」


「でも、ヘビメタだから“アイアンヘッド”って名前は特に違和感は感じなかったけどなあ」


「そうよね、確かに名前そのものには違和感はないんだけどぉ」


「その言い方って、何かあるってことですか?」


「店構えだけ見たら、モヒカン頭でトゲトゲの首輪とリストバンドをつけたデニム&レザースタイルのマスターがいるお店とかって考えちゃいますわよねぇ」


(!!! あれっ? それって俺が思ってたこととほぼ一緒だぞ!)


 一瞬、ゾワッとする常松。


 ユリコママは常松の眼を見つめながら話を続ける。


「普通はそう思っちゃうでしょ~、だから、常松さんもそう思われたんじゃあないのかしら~♡」


(んっ! やっぱり見透かされてるのか? ってことは俺のあっちこっちのテンションがマックスなのも見透かされてるのかあーー!? 不味い、不味いぞー! だとしたら、かなり気恥かしいぞ!)


 何が“不味い”のか? 不味いのは常松のその捉え方なのだが、考えを見透かされる怖さよりも、気恥かしさが先に立ってしまう常松は、やはりスーパーな企業戦士と言うべきなのかもしれない。


 そんな常松が切り返す。


「そう! なんですよねー。俺のマックスじゃなくて、俺もあの店には映画のマッ○マックスに出てくるような強面のバーテンさんとかがいるんじゃあないのかなーなんて考えてたんですよ」


(ふうーー、危なかった! 俺の方のマックスではなく、映画の方へ振ってやったぜ! ありがとうメ○・ギブソン!!※注1)


※注1:「怒りのデス・ロードにはギブソンは出演していません」


「マッドなマックスだなんて......うふふふふ...常松さんって面白い方ね♡」


「いや~、よく言われるんですよー。昔は俺もパツキンのお姉さま達に“ファニーボーイ”なんて言われてモテ囃されていたものですよ。思い出してしまうなあ、あの頃を......」


 どさくさ紛れに自慢話を入れて、遠い目をする常松。


「あら~、とってもモテモテだったんですね。そんなにモテモテだったら“アイアンヘッド”なんかには興味ないですよねぇ。それよりも気になるお店があったんじゃないのかしらあ〜」


「いやいや、妙な名前の店ばかりですから、気になるというよりも愕きの方が大きいですよ」


「そんなこと言って〜、お隣のお店の“熟魔女”なんて看板に目がくらんじゃったりとか~したんじゃないの~」

「えっ!! まさか、あの“LL”って名前の店ですかーーぁ? それはないですよーー」


「LLの派手な看板って、なんだか“茶~さん※注2”の昭和のあれを彷彿させちゃうでしょ~」


(でた! ドリフのあれか!)


※注2:茶〜さん・・・ドリフのちょっとだけよの人


「確かに、妙な名前の店だなーとか思いましたけど、嫌だなあ~目が眩むとか、そんなんじゃあないですって!」


 本当にどうとも思っていないのだが、ママに変な誤解を与えているんじゃないかと思うと、どーしても反論に力が入ってしまう。


 そんな常松の同様を見透かすようにママは微笑む。


「も〜う、そんなにムキになっちゃうなんてぇ〜。怪しいわよ〜」


「ちょっ……、勘弁してくださいよー!」


「ホントはエッチィィなこととか考えていたんじゃあないんですか〜?」


「それはないですって!! そんなこと思ってないですよ、ホントに!」


「じゃあ〜ぁ、本当はどう思ってたんですかぁ? 店の看板は穴があくほどご覧になられたんですものねえ。どんなことを考えていたのかしら〜?」


(いや、穴があくほどって、そりゃあ見るには見たけど......)


「確かに、あの妙な、茶〜さんが出てくるようなピンク電飾の看板は目立つし、嫌でも目に入りますから、何か怪しげな感じがするな〜って」


「そうよね〜。特に、あのLLの文字の色がエロチックで妖しい感じするでしょ〜♡」


(なんか俺が相当スケベな奴になっちゃってるみたいなんだけど……)


「色がどうとかいうよりも、LLってどういう意味なのか疑問に思っただけですよ」


「やっぱりエルエルで妙な妄想しちゃってたんですねぇ~」


 せっかく話題を変えたのに“LL”のせいで、すっかりドスケベ男のレッテルを貼られてしまう常松だが、誤解を解こうと足りない頭をフル回転させる。


 しかし、そんな店の名前よりも今飲んでいるこの店の名前の方に注目して欲しいのだが......。


 そこに辿り着くには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

 そして、どうでもいいことだが、

 

 いまどきの若者は<茶〜さんのあれ>を知っているのだろうか?

読者の皆様、よろしければお星様にクリックなどしていただけましたら、とっても嬉しく思います。

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