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さらば、BAR アイアンヘッド

 -- 前回までの『スナッキーな夜にしてくれ』 --


 フライングゲットの“フライング”とは、機動戦士でお馴染みの翔ぶ系の意味ではなかったことが発覚した。

 更に、機動戦士を『亀頭戦士』と聞き違えて喜ぶ髭マスGAGA。


 聞き間違えて喜ぶ髭マスを見ながら、機動戦士は『翔ぶ系』だが、亀頭戦士は『飛ばす系』なのかもしれないと常松はどうでも良いことを考えてしまう。


 というシモシモ、もしもしこんにちは的なシモネタがついつい全開になってしまったことで、また女性読者が減少してしまうことは否めない。

 シモネタが諸刃の刃であることは、解っちゃいるけど止められない作者自身の甘さが招いたことなので、仕方がないのである。


 そんなシモネタの振り返りなどはどうでも良いのだが、突如時間が押していると言い張って焦りだす髭マスGAGAからのBlowing a CHUUUUをガッチリと受け取るため、バッチこい状態で気合いの入った構えを披露する常松。


 果たして常松はプレッシャーを跳ね除けて、髭マスのCHUUUUを華麗にゲットできるのであろうか!


 普通に考えれば、絶対にいらないはずの『GAGAチュウ』なのだが、常松の命運はこれをゲット出来るかどうかで決まろうとしていた。



▽ ▼ ▽ ▼ ▽



「よっしゃあーー!! バッチこ――い!! ヘイ、ヘーーイ、しまって、いこーぜーーー!!」


 常松の気合いの入った声が響き渡る。


 目を閉じれば、青空と白い雲の下で白球を追いかける高校球児の姿が浮かんでくるかのような・・・そんな錯覚を呼び起こすような掛け声である。


 その声に答えるように、髭マスは再び、Blowingなポーズに入ると、間髪入れずに『CHUUUU』を大きくリリースする。


 その『CHUUUU』は、剛腕投手が投げ下ろす重たいストレートのような、というより別の意味で重たいオーラを放ちながら迫ってくる。百歩譲ってそんな感じがするのだと常松は自分に言い聞かせる。

 髭が乗っかった唇から射出された剛球、否、剛チュウが唸りを上げる…………的な状態に感じられ、ビリビリと空気さえも震撼させているように思える。

 

 伸びのあるドストレートなそれは、目前まで押し寄せる。


「うおーーーっ!! 止めてやるぅーー!」

 よくわからない熱血キャラのような声を張り上げて、両手でお札を差し出した。


 常松は、絵に描いたような屁っ放り腰の姿勢で捕球、否、捕チュウに成功したような気になる。


 しかし頭の中では、屁っ放り腰ではなく、蝶が舞うような華麗なプレーをイメージしていた。


―――すると、両手に持っていたお札に、まさかの変化が・・・。


 よくよく見てみると、真っ白いだけの紙切れのようだったお札に何やら奇怪な模様のようなものが浮き出ているのが確認できた。


(あれ? マジか!? 本当に何かの力が宿ったとでもいうのか!?)


 常松は無言でお札を目の前に運んでマジマジと見つめる。

 先ほど髭マスが凝視していた時に負けないくらいに、それはもう穴が開くのではないかと心配になるくらいの目力でガン見する。


 そして、常松は思う。

 現代社会において、女の子の体を舐め回すように見ることは御法度だが、紙(お札)を舐めるように見るのは誰にも叱られることはないのだと.........。


 そんなどうでも良いことが思考回路を支配しそうになるが、常松は、お札に浮き出た模様が何を意味するのかを考えた。


 しかし、模様は不規則で、何が書かれているのか想像がつかないと思いながら、お札を上下にひっくり返して、再び舐めるように見回した。


「んんっ!!?? なんだ?・・・桃・・・かな?」


 浮き出た箇所のいち部分に、何となくだが『桃』という文字が見てとれた。

 すると、スローイングを終えた髭マスが反応する。


「常ちゃん、お札に『桃』の字が見えたのね」


「はい、そう見えなくもないって感じなんですが・・・」


「どうやら成功したようね・・・その『桃』の字が浮き出たお札はねえ・・・鬼門封じの札というのよ」


「成功? 鬼門? 封じ・・・ですか?」


「そうよ、常ちゃんは無事にあたしの放出したエネルギーをしっかりと受け止めたってことなのよ」


「だから、このお札に文字のようなものが浮き上がってきたということですね」


「ようやくわかってきたようね・・・三枚のお札のうち、一枚は鬼門封じの札、そして残り二枚は『護符』と『呪符』なのよ! 護符と呪符は、常ちゃんを敵から守ってくれるお札よ、そして鬼門封じの札は、常ちゃんが嫌う者、次元パトロールのことね。つまり結界を張って次元パトロールの出入りを封じることが出来るお札なの」


「マジっすか! やったー! ようやくお札に本来の効力が宿ったっつうことですね!」


「そうなるわね。で、もう一つ言うことがあるの・・・あたしはねえ、実はこう見えても陰陽師なのよ!」


「は・・・ああーー!! えっ!? 今、なんと仰いました? お・ん・みょう・じ、とかなんとか」

「そうよお」

「もしかして、あのぅ、間違いでなければですが、あの安倍晴明とかで有名なアレですよね・・・」


「びっくりしちゃったでしょーーー! あたしってば、ほらあ、外見が煌びやかなハードロックスターのようじゃない。でもって、ほらあ、今は短髪だけどお、少し前までは長髪でジョン・◯ンジョヴィにクリソツだなんて方々から言われちゃってたわけよ〜、陰陽師とはイメージが真逆でしょ〜、そう思えばね、驚くのも無理はないんだけどねえ〜」


「いやいや、だって、先程マスターは魔法少女なんだ的なことを言って俺を困らせたりしたじゃないですかあ、ということは、あれはやっぱり嘘ってことなんですよねえ」


「あら、嫌ねえ〜、常ちゃんったら、あたしが可憐な乙女のような心を持っているからって、そんなことを真に受けていたの〜、あれは冗談よお、ほんの冗談」髭マスはそう言ってウインクを飛ばす。


(―――この髭親父は・・・まあ信じてはいなかったけど、なんかムカつくなあ)


 髭マスは、してやったり的な表情になって、得意げな素振りを見せるのだが、それが常松にとってはイラッとくるのであった。

 そのイラッとくる感情を抑えつつ常松は話の説明を促す。


「で、マスター、このお札の効力はちゃんと発動するってことで間違いないんですよねえ?」


「あたしの二つ名は『桃尻の陰陽師』と言うの・・・その名の通り、あたしのオケツは桃尻なんだけど、今は残念ながら披露している時間はないのだけれど、そのお札に刻印した桃の字こそが、あたしの十八番でもある結界術なのよ!」


(この人、自分で二つ名とか言っちゃってるよ・・・あと、ケツを披露しようとか考えるなよ! 時間がなくて助かったぞ、おい!)


「いやあ・・・あの・・・桃尻って、その尻は関係なさそうなんですけどお」


「ほらあ、常ちゃん! 四の五の言わずに、そのお札を大事にしまいなさあーーい! さっき、『しまっていこーぜー!』なーんて大声で騒いでいたでしょう。お札をしまいなさいよねえ」


 髭マスが、会心のギャグをかました。自分でも上手いこと言ったと満足気になって、どうだあ的な表情になっている。


(このオッサン、なんか上手いこと言ったみたいな顔してんのが、イラッとくるなあ、マジで・・・)


 更に、どうだあ顔で髭マスが常松においでをする。


「常ちゃん、こっちへ来るのよ。早くカウンターの中へお入りなさい!」


「えっ! まさか!? マスター、桃尻を見せようと・・・」


「バカねえ! そんな時間はないの! そっちの入り口から次元パトロールが入って来てしまうわよ!」


「えーーっ! それはマズイっすよ。俺、捕まっちゃうんですかあ」


「だから、さっきも言ったでしょう! 常ちゃんのことはあたし達が守ってあげるから」


「わかりました! お願いします!」


 常松は、店の扉を一瞥してから一目散に髭マスが立つカウンターの中へと駆け込んだ。


「常ちゃん、そこの隅っこにしゃがんで壁側を見て!」


 常松が言われるままにしゃがみ込んで壁を見ると、小さなスライド式の扉が確認できた。


「あたしが合図したら、その扉をスライドさせて外に出るの。そして向かいの“大料理ゆうこ”へ入るのよ。それからね、さっきのお札の残り二枚は、お向かいのゆうこママが刻印してくれるはずよ! 大事にしなさい!」


『ガチャ、ガチャン』


 髭マスの説明が一通り終わると同時に、店の入り口辺りからドアノブを回すような音がした。


「――――!!」


「さあ、今よ、外へ出るのよ!」髭マスの唾が飛びまくる。

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