仮か、真か、真実は?
-- 前回までの『スナッキーな夜にしてくれ』 --
髭マスGAGAのマル秘の部分とは何なのだろうか? むしろ、誰もが知りたいとは思わないであろう謎の部分。
この髭マスGAGAのマル秘の部分をこじ開けるのは誰なのか? それは、おっさん向け週刊誌の袋綴じのように
ドキドキしながら開けるものではないと常松は直感していた。
しかし、そんな大それたことは絶対にしたくない常松に、その白羽の矢が当たってしまう。
「あたしのマル秘の部分は袋の方にあるからこじ開けて欲しい」
という髭マスからの欲しがり要望が無情にも炸裂する。
何度も言うが、そんなものをこじ開けたいと思わない常松は、それは誤解なのだと必死にGAGAを諭すのだが、元々説明下手で言葉足らずの常松は、更に誤解の上塗りを招く。
―――常松が知りたがるマル秘の部分とは、ユリコママのマル秘の部分だったのか! ―――
と、モノの見事に誤解した髭マスGAGAは、常松のことをお下劣でギラギラしたモテないオジだ! と罵り出す。
実のところ半分は当たっているものの、そこまでお下劣ではないと反論したい常松だったが、先の髭マスとの舌戦によるHP不足によって、大ピンチに陥ってしまう。
ユリコママのマル秘の部分、それは男の浪漫でもあるのだが、今はそんな誤解を与えるような発言をしている時ではない。そして、その誤解によって繰り出される髭マスの猛攻は止まらない。
それをどうにか必死に耐える常松は、ついに逆ギレすることでMAXとなった怒りのボルテージをHPに変換することに成功する。
気力を取り戻したことで、髭マスの誤解を解き窮地を脱した常松は、同時にユリコママの真意そのものにようやく気が付くのであった。
髭マスGAGAからは、ヒミツの内容が語られるのであろうか?
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
「ユリコママが話していたヒミツを知りたいんだったわね……いいわ、迷惑かけちゃったお詫びに教えてあげるわ」
ついに髭マスGAGAから情報提供の申し出を受けた常松は、思わず喜びが露わになった。
「やったあ! ありがとうございます!」
「常ちゃんにとっては、その情報がないとかなり厳しいことになるのよね」
「そうなんですが、実はあまりに情報が乏しすぎて、藁にもすがるような状態でして……」
「常ちゃんは、ここの何軒かあるお店で、入店したのはユリコママのスナックとあたしの店だけかしら?」
「ちゃんと入ったのは、こちらのBarとスナック亜空間だけですよ……あっ、でも、あれはどうなるんだろう?」
「あれ? あれって言うと、こっちのアレかしらあ?」
髭マスGAGAが下半身を指差しながら質問する。
「あっ、いやあ、違いますって! そのアレではなくてですねえ」
「じゃあ、何のアレだって言うのよお」
「いやいや、だから、そっちの方の“アレ”ではないんですって! 実はですね、ここに迷い込んだ時にすぐそこにある居酒屋に入ったんですよ」
「ええーっ! “アレ”って、隣の居酒屋のことなのーー! 全然、いらない方の“アレ”じゃないのよ」
期待と違った“アレ”のせいで、ガッカリすぎてムッとする髭マス。
(勝手に妙な想像したくせに、なんでムッとしてるんだよ……というより、どうしてガッカリとかしちゃってるんだよ、このオッサンは!)
「すみませんねえ、いらない“アレ”だったみたいでご期待に添えずに……」
嫌味混じりの常松の台詞を遮って髭マスGAGAが血相を変えた。
「あらっ! 居酒屋って、まさか! 常ちゃんってば……あの…筋肉バカ兄弟の店に入っちゃったの〜」
髭マスは、急に何か悪いことでも思い出したかのような驚愕の表情になる。その表情を見て、何やら嫌な予感が過ぎる常松。
(あれ? なんでそんなに驚いちゃってるわけー。何か不味いことでもあるのかな?)
「そういえばあの居酒屋には筋肉自慢のような店員さんがいましたよね。でも、その容姿というか、何か得体が知れない赤一色に染まった奴等のドシフンが異様すぎて、すぐに店を出たんですよ」
「やっぱり〜、常ちゃんたら、あんなお下品なドシフンをガン見しちゃったってわけ〜」
(おいおい、“わけ〜”な訳がないっつーの!)
「いやいや、ガン見なんてしませんよ! ただ、赤い三連星とでもいうような、あの強烈な何かを感じたというか、まるでニュータイプに目覚めたかのような感覚になったんで、店内から即座に退散したんですけどねえ」
「それは良かったわね〜、あんなのをまともに喰らったりしたら、常ちゃんもマッチョに目覚めてサックスとか吹いちゃったりするところだったわよーー」
(それって、俺があいつらをディスった内容とほぼほぼ同じだなあ……)
「なんて冗談は、隣の居酒屋に置いておくとしてえ〜、あたしが思うには……ユリコママの話を聞いて勝手に推測したんだけどお」
(筋肉バカの話は冗談なのか?……まあ、いいか。いよいよ話の核心に迫るのかな)
真剣な眼差しを向ける常松に目線を合わせて、髭マスが続ける。
「ここに並んでいるお店って、なんだか興味を引くお店ばかりだと思わない?」
「確かに店名がちょっと変わっていて、どんな店なのか気になりますよね」
「そうなのよ、妙な名前の店ばかりでしょう」
「あの居酒屋だって、変な店名ですよねー」
「それよお〜、それなのぉ〜よ! ユリコママの話なんだけど……常ちゃんと同じ世界から迷い込んだ二人の男の人の話ね。そのうちの一人は隣の『居酒屋漢だらけ』に入ったらしいのよ……」
「ええっ!! その人って、そのどっちの人なんでしょうか?」
「どっち? というと、デッパの方か、ゲーハーの方か? 的な、そういうどっちってことかしら?」
「いやいや、今の話の流れだったら、それは違いますでしょー。 ほらあ……」
「あら、ごめんなさいね! 大丈夫よ、わかってるわよ! どっちと言ったらあ、もちろん仮性かあ、真性なのかあ、どっちなの〜ってことでしょ〜」
(............おいおい、この髭はいったい、何を言ってるんだろうなあ)
「お願いしますよ、マスター! 確かに、二人のうち、どちらかがMSク◯ニックとか、メンズなんとかクリニックとかに行く予定だったのかもしれませんけどおー! そのどちらかではないんですよ!」
「はいはい、大丈夫よお、常ちゃん! 今のはアメリカンなジョークだから〜」
「ホント、頼みますよ! っていうか、今のがアメリカンなジョークなんですか!?」
「あたしのセンスの良いジョークについては、また今度ということで。 で、さっきの質問だけどお、『どっち?』……ってのは、無事に戻れた方の男なのか、それとも……捕まった方の男なのかってことよねえ?」
(うわっ! 意外にもストレートで切り返してきたぞ)
「はい! そのどちらだったのかを知りたいんです」
「だから〜、さっき、常ちゃんが居酒屋に入ったって聞いてえ、かなり驚いちゃったのよお」
「――――ということは……居酒屋漢だらけに入った人は…」
「そうなのよ! 真性の方だったの!」
「――――」
(………その二段オチはいらないって………)
と、常松は心中思うのだが、無言で髭マスを見つめる。それを一切、動じることもなく話を続ける髭マスGAGA。
「その真性な男の人が次元パトロールに捕まっちゃったそうなの。ひょっとすると……だけどお、通報されちゃったのかもしれないのよ」
「――――!!」
(マジかあーーー!! 俺ってば、かなりヤバかったのかよ。あの時、咄嗟に赤い三連星のジェットストリーム的なアタックをモロに喰らっていたとしたら、俺も今頃は……)
「ホ・ン・ト〜、常ちゃんってば、よく無事だったわよねぇ〜。常ちゃんて、どう見ても運が悪そうにしか見えないんだけどぉ〜、実は運が超絶に良いんじゃあないかしらあ〜、そういう男ってぇ、悪くないわよぉ〜」
(俺って、運が悪そうにしか見えないのかよ!)
「アハハハ…、そんな、自分では超絶に運が良いとは思ってもいませんよぉ」
「そうよねえーーー! 常ちゃんってば、一見は全く冴えない男にしか見えないもの〜、ねえ?」
(いやいや、“ねえ?”じゃねえよ!)
「だけど、その話を聞くと、咄嗟の判断で店の外に逃げ出した自分の判断だけは正しかったってことなのかと…自慢する訳ではないんですけどね」
「そうよね、この先も常ちゃんだったら、きっと正しい判断で元の世界に帰る扉を探せそうよね」
「そうだといいんですけど」
「きっと大丈夫よ!」
「ありがとうございます! 絶対に探しだしますよ」
「そんな直向きな感じの常ちゃんに、今度は明るい方の話をするわね。ユリコママの話の続きよ」
髭マスは、シャンパンを自分のグラスに注いで、それを口に運んだ。
「お待ちかねのもう一人の方、仮性の方の男の話よ」
(もう一人の男は、仮性呼ばわりだよ......)
「その男は、仮性のくせにユリコママの店を出た後に『和風スナック』へ入ったそうなの」
(………和風? ん? そんな店ってここにあったかな?)
「そのお店って、このフロアにはない店ってことですよね? 別の階とかにある店ですか?」
「いいえ、違うわよ! ここと同じフロアにあるわよ」
掴みどころのない髭マスGAGAだが、常松の質問に屈託ない様子で答えた。
(どういうことなんだろう?? そんな店なんて見てないぞ!)
困惑する常松がシンキングタイムに突入する。
髭マスの口から出た『和風スナック』とは……真せ、ではなく真実なのか、それとも虚言なのであろうか?
次回、乞うご期待!!
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