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スナッキーな夜にしてくれ 〜異世界でもスナックに行ってる件〜  作者: 火夢露 by.UMEBOSHI-P
第1章 彷徨えるオッサン編
1/40

ボルトの時速って?

挿絵(By みてみん)

Thursday

PM8:30


「あ~ぁ、今日も気がついたらこんな時間かよ」

 常松(つねまつ)京太郎はパソコンのキーボードを叩く手を止めてつぶやいた。


  周囲からは“おっさん”のレッテルを貼られているが、自称“ナイスミドル”を気取る平凡なサラリーマン。

 そんな常松は、ここのところ仕事が忙しく、昼飯もゆっくり食べる時間もない。


 今日も夕方4時過ぎに立ち食い蕎麦屋に入りわずか5分ほどのランチタイムを終えると、そのまま仕事に戻って急ぎの案件の企画書をまとめていたが、忙しいときの時間の流れってやつは、まるでウ○イン・ボルトのような速さであっという間に過ぎてゆく。


 (そういえば、ボルトの時速ってどのくらいなんだろうか?)


 中年街道のスタート地点に立っている常松は独りごちた。


 腕時計に目をやると夜の8時30分をまわっているが、肝心の企画書はようやく7〜8割程度書きあがったところだろうか。


「よーーーし!」


 何が良しなのかは自分でもよく判らないが、今日の仕事はもうおしまいと自分に言い聞かせるように声をあげた。そそくさと帰り支度をはじめる。


 ふと、スマホを見ると新着メッセージが1件届いている。


 ーーお仕事ご苦労様です。

   今日はこれから合コンなんで、仕事でつまんない想いをしている先輩の分も

   美味い酒と美味しそうなお姉ちゃんをガッツリご馳走になってきますよ!

   では! ーー


 後輩の辻野からの羨ましいけど嫌がらせ丸出しのメッセージだった。


(あいつ、腹立つなーーー、自慢かよ!! な〜んか、あいつのメッセージ読んだら余計に疲れがドッと押し寄せてきたな。あ~あ、こんな時はさっさと帰るに限るな)


 常松は妙な虚しさをかかえてオフィスを出た。


 会社を出て、まず目に飛び込んでくるのは、すでにほろ酔いのサラリーマン達、楽しそうに笑いあうOL達、これから飲みに行くであろう男女のグループ、周囲のすべての人々がみな笑顔で楽しそうに見えて、自分ひとりだけが孤独の中の孤独の王様なのではないかと思ってしまう。


 もともと仕事はテキトーでいい加減さには定評があり、だけど寂しがり屋で、酒に走るのが大好きな常松だが、残業続きで飲みに行きたくても行けない状況が続いていた。


「アハハハハ……」

「もう一軒行っちゃう?」


 リア充たちの声が常松を切り裂く。

 こんな酒ひでりで女ひでりの状態だから、酔っぱらったオッサン軍団はともかく、浮かれた男女の楽しそうな笑い声がメンタルに突き刺さる。


(クソッ! どいつもこいつも浮かれてやがるなー、金曜でもないのになんの祭りだよ・・・ダメだ。余計にテンションさがってきた)


 そんな光景を尻目にいつもの地下鉄の駅へと足を向けた。


 地下鉄のホームには、すでに発車寸前の電車が扉を開けて待っていたが、発車ベルの音とともになんとか飛び乗ることができた。


(セーフ! タイミング良く急行電車に乗れたな。少しでも早く家に着きたいからなあ・・・)


 なんとなくホッとした常松だったが、やっぱり虚しさが込み上げてくる。


(このまま帰るのも寂しいよなー。やっぱり、飲みに行っちゃおうかなー)


 こんな日こそスカッと飲んで、楽しく歌って、明日の鋭気を養うのも悪くない。

 羨ましい後輩のメッセージや街中の浮かれ飛んだビジネスマンたちの姿に感化されてしまった常松は、自分にそう言い聞かせると馴染みのスナックへ向かうことにした。


 しかし、だからといって“明日の鋭気”を養えるのかどうかは判らないのだが............。



 常松が利用する最寄り駅の一つ手前、急行停車駅S駅で途中下車して馴染みの店を目指す。


 その店はバスロータリーを抜けた飲み屋スポットの一角にある雑居ビルの5階にあった。居酒屋、バー、スナック、ラーメン店などが各階に入る、いわゆる“飲み屋ビル”。


 このビルのエレベーターは4~5人も乗れば窮屈になってブザーが鳴ってしまう雑居ビルにありがちなサイズのもので、早い時間だとエレベーター待ちの先客がいることがある。そうすると一度でエレベーターに乗れずに待つことがしばしばだった。

 しかし、珍しいことに、この日はビルの入口に先客はおらずスムーズに乗ることができた。


 早速エレベーターに乗り込み『5階』のボタンを押した。ドアが閉まり、エレベーターが上昇していく・・・・。


 独りで乗っているせいなのか、疲れているからなのか、エレベーターはいつもよりもゆっくりと上がっていくような気がした。

 テンションが落ち込んでいるせいか、妙な静寂さまで感じてしまう。


 突然、ガクンッとエレベーターが止まった。


(あれ??? マジかよ! まさか、地震か? こんなところに閉じ込められちゃうわけ? )


 一瞬焦るが、地震のような揺れは感じないし、エレベーター内の電気は消えていないので停電ではないようだ。

 

 エレベーターのドア上にあるフロア表示を確認すると、4階と5階のランプが点滅している。


「4階、それとも5階で止まったのか?? なんで表示が点滅しているんだろう?」


 しかし、しばらくしてもエレベーターは動かない。

 よく見るとドア横の押しボタンの「4」「5」のボタンも点滅している。


(まさか4階と5階の間で停まっちゃったのかな?)


 常松はおそるおそる、点滅しているボタンを押してみる。

 最初に「4」を押すが変化はない。次に「5」を押すがこちらも反応がない。


(おいおい、マジかよ! 開いてくれよ、開けーーー!)


 心の中でそう念じて、焦る気持ちを押し殺しながら「4」と「5」両方を同時に押してみる。


 すると、『チーン』という音とともに扉が開いた。


「良かったーー! 開いた―ーー。マジで閉じ込められるのかと思ったよ」

ホッとして思わず声がもれる。


 常松は扉が開いた安堵感からなのか、閉じ込められそうになった恐怖心なのか、扉の先をよく確認もしないままエレベーターを降りた。


———そして、ここから・・・不可思議でキケンな♡夜♡の冒険がはじまる。


 が、ボルトの時速については、また別の機会に考えることにする。


 知りたい方はネットで検索! もちろんAIでも可!


※皆様、よろしければ、お星様とブックマークをいただけましたら幸いです。


10年ぶりに新作を書いてみました!

が、相変わらず文章能力は低レベルです。文章作法もまったくわきまえておりません。


あれから世の中は様変わりしちゃって、この2年余りはコロナウイルスの脅威にさらされ

日本はおろか世界中が大混乱。

ようやくコロナも収束の兆しが見えてきたわけで、見えたように思えただけかもしれませんが、

Withコロナだの、ポストコロナだの、ニューノーマルだのと言われている昨今、

このサイトのニューノーマル的なトレンドを鑑みて“異世界もの”を書いてみようか!

と、よせばいいのに無謀な考えを抱いてしまった次第。

しかし本格的なのが書けるわけもない。

ということで、10年前に書いていた“スナッキーな夜にしてくれ”の番外編としてみました。


落語家 立川キウイ師匠の2作目の著書「談志のはなし」が先月発売されたそうですが、

なーーんと、キウイ師匠の本も前作から10年ぶりの発表となったそうです。


だからなんなんだということではありませんが、

どうか皆様には、暖かく優しいお気持ちを忘れずにお読みいただけましたら幸いです。


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