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領主館のディナーはすごく賑やか

まずはしばらく滞在する部屋に案内してもらった。

そこには、私が着てきたドレスとマントがハンガーにかけられていた。



しばらく、外を眺めているとノックの音がした。


扉を開けたのはトーマスさんだった。

「失礼いたします。

シア様は旅券などはお持ちでは無いので、こちらは当面の滞在許可証になります。

それからシア様のお召し物についてですが、フランク様のお姉様の衣装部屋にご案内します。

当面のお召し物をお選び頂きたいので、今からきていただけますか?」

とトーマスさんに案内されて大きな衣装部屋に来た。



衣装部屋の入り口には細身の侍女がいて、トーマスさんと私が入るためにドアを開けてくれた。そして中を案内してくれた。


衣装部屋にはオールシーズンの洋服が揃っていた。

パーテーションで季節毎に分けられており、この部屋の半分くらいがウィンターシーズンの服だった。


トーマスさんが、

「当面滞在されるシア様の服を見繕ってほしい。」

と、侍女に言ってから私に

「ここにいるティナは滞在中シア様のお世話をさせて頂きます。

この衣装部屋の洋服についても詳しいので、ティナと相談してください。」

と言った。


「はじめまして、シア様。私はティナと申します。

よろしくお願いします。

フランク様の女性のお客様が滞在されるなんて!

なんて嬉しい出来事なんでしょう!

フランク様は、女性の気持ちが全くわからない方なので、こんな素敵なお嬢様と仲良くなれただなんて!

滞在中は精一杯お世話させていただきますね!」

とティナさんは嬉しそうな顔をして言ってから、トーマスさんに

「女性専用の部屋ですよ?」

と言って凄い勢いでトーマスさんを部屋から追い出した。



衣装部屋の中に大きな姿見と、1人がけのソファーが仮置きされていた。

「シア様、今服を見繕いますのでそちらでお待ちください。」

とティナさんが言った。


私はソファーに座り、ティナさんが何をするのか眺めていた。


ティナさんは沢山のドレスから一着を取り、ハンガーラックにかけた。

それから、また一枚、と次々とハンガーラックにコートやドレスなどを掛けていく。


「先ほど、シア様がウィルコクス国でお召しになっていたドレスとハイヒールを拝見させて頂きました。

素敵なドレスですね。

あちらとサイズが同じものを見繕いましたので、試着していただけますか?

その前にまず、履きやすい靴にしましょう。

そちらのシア様が今お召しになっているブーツは雪に強いですが重たいですからね」


と、ティナさんは衣装部屋の靴の棚に行くと、一足のルームシューズを持ってきてくれてた。


私は宿屋の女将さんに貰った頑丈なブーツを脱いだ。

そして、持ってきてもらったルームシューズを履くと、立ち上がって歩いてみた。


「痛くないですか?」

私が頷くと、ティナさんはニッコリ笑った。


「では、まずこちらのドレスから試着してください」

と言われ、ティナさんに手伝ってもらいながらワインレッドのドレスに着替えて鏡の前に立った。


「シア様は出るところがきっちり出ているので、サイズをよく選ばないといけませんね」

と、ティナさんは楽しそうに言った。



ここから沢山のドレスを試着した。

微妙に肩の位置が合わない物など、動き辛い服とその理由を書いて伝えた。

「お洋服は機能性だけではありませんから好みも教えてください」

とティナさんに言われて、自分の意見を伝えていった。

そうやって私の好みを聞きながらドレスを決めていった。



「あら、もうディナーの時間です。

ではこちらをお召しになってください」




ディナーの準備のためイブニングドレスに着替えて、ダイニングに向かった。


ダイニングの入り口を入ると、柊の葉や松ぼっくりなどの飾り付けがされていた。

雑誌の特集記事とかで見た『スノーホリデー』みたい!

雪がほとんど降らないウィルコクス国では、冬を感じる瞬間は少ない。


部屋中の飾り付けがすごく素敵!


特に目を引いたのが部屋の目立つ位置にある不思議なオブジェだ。


それは、直径が2メートルくらい、高さが3メートル近くある円錐状のオブジェだ。

円錐の先端から放射線状に紐が張られていて、その中には沢山の藁が詰まっていた。

例えるとするなら、高さ3メートルの巨大なアイスクリームのコーンを逆さまに置いた感じ。



その張られた紐には、色々な形のアイシングで飾り付けられたクッキーや、やはり色々な形の大きなキャンディ、星の飾りなど、様々なものが付けられていた。


遠くから見ると、巨大なアイスクリームコーンに飾り付けられる感じに似ている。

すごく不思議な感じ。


その不思議なオブジェに目が釘付けになっている私に男性が近づいて来た。


「そのドレス似合ってるね。」

と言った。


声からしてフランクさんだけど。

髭を剃って髪をセットしたフランクさんは全く別人のようだ。


髭は綺麗に剃ってあり、ダークブラウンの髪は流すようにセットされていた。そして見たこともない蒼とも碧ともつかない瞳がキラキラと輝き、映画スターが霞むくらい綺麗な顔をしている。


はっと我に返って笑顔を取り繕った。


フランクさんは

「今日は、ちょっとしたお祝いがあるんだよ」

と言いながら、ダイニングの真ん中に向かって歩いた。



「今朝、空中で舞い散るこの無数の氷の粒が日の光に反射してキラキラと輝く「天使の囁き」っていう現象が起きたんだ。

地域によっては『ダイヤモンドダスト』って言うらしいけど、もっと寒くならないと起きないって言われている地域もあるね。

このあたりでは雪が降る前に、『天使の囁き』が起きるんだ。

これは、雪の精霊が産まれた時に起こるっていう言い伝えがあるんだよ。」

とフランクさんが説明してくれていると、沢山の使用人達がダイニングに集まった。


ざわざわしていたが、トーマスさんがフランクさんに

「始まりの言葉をお願いします」と言うと


「お祝いのワインを!」

とフランクさんが言った。ダイニングに集まった沢山の使用人がシンと静まり返った。


そして、皆に空っぽのワイングラスが配られた。



フランクさんはワインの瓶を持って木箱を裏返しただけの台に乗ると、

「おめでとう!今年も無事に冬が来る!

今年も新年を迎えるまで、みんなで大地の恵みをもらおう!」

そう宣言すると、勢いよくワインのコルクを開けた。



ワインを一口ずつグラスに注いだ後、皆で乾杯をしてそのワインを飲んだ。


このワインすごく甘い!デザートワインの中でも極甘口で、でも甘さは嫌味がなく後味はサラッとしていた。


美味しい!



ワインを飲んだ使用人達は口々にお祝いをいい合っている。


今日は立食パーティーになっており、大皿に盛られた料理がいくつも運ばれて来た。


フランクさんはみんなに声を掛けられていた。

「先代領主様の貫禄にはまだまだだな」

とか

「今年も頑張ろう」

とか声をかけられながら私の所に来た。



フランクさんは楽しそうに笑っていた。

「この地方では雪が降って葡萄が凍ったら収穫をして、デザートワインを作るんだ。

収穫開始は明後日から。

収穫は日が暮れて、気温が下がってから行うんだよ。

葡萄畑に灯りをつけて、みんなで一房ずつ摘み取っていくんだ。

寒いけど楽しいよ。」


フランクさんは楽しそうにこれから何をするか教えてくれた。



気がつくと白ワインや赤ワインなどが開けられ、誰かがアコーディオンで音楽を弾きだした。

すると、バイオリンを弾く人や、小さな太鼓を叩く人などが集まって演奏が始まった。


その音楽に合わせて皆楽しそうに踊り出した。


普段社交界で見るようなワルツとかそういった堅苦しい踊りではなく、男女関係なく手を繋いで楽しそうに踊っていた。

私も誘われて皆の輪の中に入って踊った。

周りを見渡すと、トーマスさんやフランクさんもみんなと手を繋いで踊っていた。



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