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幸せの訪れ

本日2話目の投稿となります。

王城での生活が始まった。

するとほぼ毎日、ベルーガ家の誰かがお茶の時間にくるようになった。

グレイグ国で、わだかまりが解けてから家族との関係は良好になった。

お妃教育のわからない事を本の知識が豊富なお姉様が教えてくれたり、古代の文化についてお兄様が教えてくれるようになった。

お兄様には、このネックレスを詳しく見せてくれとお願いされたけど、それだけは断った。

…きっとお兄様なら分解してしまうから…。


そのうちヘベリウスが毎日来るようになった。


お妃教育を終えると、夕方、ヘベリウスに乗って散歩に行くようになり、騎士団の演習場近くの丘まで行くのが日課になった。


始めは、護衛がついて散歩に行っていた。

でも、護衛はどんなに頑張ってもヘベリウスに追いつけない。

そのため、守護ネックレスをつけている上に聖獣か側にいるから、護衛を付けずに出かけることを認めてもらった。


騎士団の演習場近くに散歩に行くのは、やっぱり心のどこかで『シア』として過ごした日々を思い出していたせいかもしれない。


丘の上には常に騎士団の見張りが常駐する様になったけと、私は気にしなかった。


そのうち、丘まで練習に来る騎士団見習いの子供達と仲良くなった。

「シンシア様、さようなら」

私の側を通って帰って行く子供達は私に挨拶をしてくれるようになった。


そんなある日、騎士服が敗れている子を見た。

きっと魔法戦の練習をしたのかしら。


「私が縫ってあげるわ」

と声をかけると

「シンシア様、これは守護の付与魔法が施されているから無理ですよ。」

と言われたので、


「あら、それなら尚のこと得意だわ。確かアイテムボックスに、専用の糸があったはずよ」

私はあの『庶民のマント』からアイテムボックスを『侯爵家のコート』に移し替えていたので、アイテムボックスから裁縫箱を出した。

やはり裁縫箱には、シアとして裁縫をしていた頃の付与魔法付きの服を直す専用の糸が入っていた。


「ヘベリウス、危ないから結界を張ってちょうだい」

と言って、ヘベリウスに結界を張らせて見習いの子供の騎士服を縫った。

「はい出来上がり」

と渡すと、すごく喜んでくれた。


それからは更に子供達と仲良くなってここに来るのが楽しくなっていった。



気がつくと、季節は夏が終わろうとしていた。



グレイグ国内ではツユミム帝国との事があったので危険回避のため、グレイグ国皇太子との顔合わせが延びてしまった。


ウィルコクス国の迎賓館で、初めてグレイグ国皇太子と顔合わせが行われることになった。


「シンシア様、明日の午後、皇太子様との顔合わせですから、明日は出かけないでくださいね」

とリーナに言われた。



ヘベリウスに乗って散歩に行くのが最後になるかもしれない。


私は、騎士団の子供達にさようならを言うために丘の上に着いた。


いつもの丘からは演習場は見えない。

私はいつものように私用に準備された椅子に座った。


すると、演習を終えた子供達が登ってきた。

「あっ!シンシア様!僕、今日、戦闘中にボタンが取れちゃったんです」

というので、

「わかったわ。ボタンを付けてあげるから上着を脱いで」

と騎士団見習いの子供から上着を受け取り、いつものようにヘベリウスに結界を張ってもらった。


ボタンつけを行っている間に私に近づいてくる人がいたけど、私はボタンつけに一生懸命で気づかなかった。

その人は騎士服ではない服を着て騎士団の演習場のほうから私めがけて一直線に登ってきた。


ちょうどボタンつけが終わり結界を解いた時に、その人は私の目の前に来た。


私は自分の目の前に立っている人を見上げた。


その人は淡いプラチナブロンドを無造作に流し、蒼とも碧ともつかない瞳で私を見た。



その人を一目見た途端、心臓が止まるかと思った。

髪色や、顔の感じはちがうけど、その瞳はフランクさんそのものだった。


「あなたは誰?」

私の問いかけにその人は


「君こそ誰だ?そのネックレスをつけて、結界の中で縫物をして。」


その人の声はフランクさんそのものだった!


「…フランクさん…?」


「シア?」



その時、後ろから

「フランクリン皇太子殿下!いかがいたしましたか?

突然丘を登られて」


と声がして、ウィルコクス国騎士団のルーズベルト団長の姿が見えた。

それから


「これはこれはシンシア王女殿下、お久しゅうございます」

とすぐに私に気がついて遠くから挨拶をしてくれた。



「シンシア?君が私の婚約者のシンシア王女?」

「あなたがフランクリン皇太子殿下?」


私たちの声が重なった。




「君はシアだったのか。

君を忘れなければと今日までなんとか頑張って来たけど…。シアが私の婚約者だったとは!」


「私も、あなたを忘れなければと日々過ごしていました。」



フランクリン皇太子は嬉しさのあまり私を抱きしめて甘いキスをくれた。

そして私を抱き上げると嬉しそうにクルクルと回った。


そしてバランスを崩して芝生の上に転んだ。



フランクリン皇太子に抱きしめられたまま芝生に転がると2人で笑い出した。

そして顔を見合わせてまた大笑いした。

フランクリン皇太子の顔は、フランクさん以上に美しくて全く別人のようだけど、やっぱりその目も声もフランクさんだった。


それを見ていた子供達やルーズベルト団長はポカンとしていたけど、ヘベリウスは小さく

ヒヒン

と鳴いた。



その後、急遽、迎賓館で2人だけの舞踏会を開いた。

これは私の希望で、国王陛下は快く希望を叶えてくれた。



「…あの騎士団のパーティーの時、最後に聞こえたのはやっぱりシアの声だったんだね!

シンシア王女、

お初にお目にかかる。

私は、グレイグ国皇太子のフランクリン・グレイグだ。この度は、私との婚約を受け入れてくれて嬉しく思う。

そしてもう1人の私はフランク・ユールサイト子爵。

第一騎士団の第一小隊長をしている。

この度は、あなたに命を救われた。」

と騎士の最敬礼をした。


「フフフ。

私はベルーガ侯爵家のシンシアと申します。

この度はグレイグ国に嫁ぐ事を嬉しく思っています。

そしてもう1人の私は、シア。出身はウィルコクス国よ。特技は、ツユミム帝国軍を半壊する事よ」

と答えて、2人で笑った。



「シア…いやシンシア王女には命を救われた。

シンシア王女のおかげでツユミム帝国軍を壊滅させる事ができた。こちらは100人にも満たない人数だったのに勝利できたのはシンシア王女のお陰だ。

シンシア王女のおかげで入らずの森に進軍される事なく、封印も守れた。」


そして、フランクリン皇太子は片膝をつくと

「シンシア王女、私の生涯をかけてあなたを幸せにすると誓う。

私とグレイグ国に来てくれませんか」


と言ってくれた。


「はい」

と返事をしてフランクリン皇太子の手を取ると、フランクリン皇太子は立ち上がって私を抱きしめて甘い甘いキスをくれた。



気がつくと、あの『精霊の喜び』というワルツが流れていた。


フランクさんに手を引かれて誰もいないダンスホールへと向かうと、2人で踊った。

これまでのダンスとは違って緩く優しく、愛を囁かれながらのダンスだった。




それから数日後、ウィルコクス国でお輿入れのパレードがあった。

パレードはヘベリウスとレグルスも姿を現し、大騒ぎになった。


もちろん、グレイグ国のお輿入れのパレードにもヘベリウスとレグルスは参加してやはり大騒ぎになった。


結婚式は雪の季節にしたいという私の希望を聞いてくれて、数ヶ月先になった。



誰とも結婚しないと決めていた私は、気がついたら皇太子妃になる事になっていて、あんなに気にしていたお祖父様の遺産分割の日、私は参加しなかった。


もう遺産はいらないから。


しかし、後でお姉様から手紙が届いて、遺産はお祖父様が作ったお皿だったと教えてくれた。

「お祖父様は、すごく価値がある物を残したって言ってたけど、『単なるイビツなお皿3枚』だったわ。1人一枚ずつよ。

シアの分は結婚式に持って行くわね」

と書いてあった。



その手紙を読んでから、私は朝の準備をする。

髪を魔法で茶色に染めて、ナチュラルメイクをするのだ。

そしてフランクさんと共に、久々に葡萄畑に行く。



結婚式はまだ先だもの

これで完結となります。

いかがでしたでしょうか?

前作の主人公であるマリーナちゃんはもっと出番が多いはずだったのですが、気がつくと少なくなってしまいました。

続編というより、シリーズ物になってしまいましたが、面白く読んでいただけたらいいなぁと思います。

ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。

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